【姿煮の自選短歌まとめ】

【うたの日】

ドブ川にウォッカを飲ます 魚には悪いがおれも悲しいもんで
2022年04月02日『ウォッカ』

激情に傍聴席をあとにして栃の並木の濃い陰を行く
2022年06月08日『聴』

扇風機、線香花火、先輩は補欠のままでよかったんすか
2022年06月17日『「せん」を三回詠み込んで』

遺される側の悲しみしか知らず夏至をまたいで続く長雨
2022年06月21日『夏至』

ばあちゃんが痛い痛いとうるさくておれもいっしょに痛くなりたい
2022年06月29日『痛』

走馬灯のように景色を消費してGoogle Earthの北限を行く
2022年09月07日『景色』

もう二度と咲かない庭があるとして記憶はぼくを救うでしょうか
2022年10月10日『自由詠』

文化住宅なるもの知らず聞きしときカルチェ・ラタンのやわらかき風
2022年11月03日『題『 文 』を文語で』

手折られた花は枯れると知ってから好きの仕草がわからずにいる
2022年11月04日『好』

オール・ユー・ニード・イズ・キルだとしても俺はいっしょに月を見るけど
2022年11月09日『映画のタイトルを詠み込んで』

国境に雪降りしきる 何者にもなれないとしてそれがどうした
2022年12月10日『自由詠』

あいまいに笑って済ますオフィスには偽物だから枯れないパキラ
2023年01月24日『笑』

元カノといつから呼ぶことにするのだろうそれが死別だとして
2023年02月10日『自由律』

食べられる花を集めて枯れさせて泣いて過ごして馬鹿にされたい
2023年05月05日『食』

プロジェクト・ヘイル・メアリーどうせなら海の匂いを嗅いで歩こう
2023年05月11日『自由詠』

街灯に手を伸べぼくにも影ができる 好きになるってそういうことだろ
2023年06月11日『自由詠』

【西瓜】

未熟児の重さと思う2リットルペットボトルを脇に抱えて
(西瓜七号「ともに」欄)

ハイフンのつけられている生まれ年いつか死ぬって決めつけんなよ
(同上)

例文のままの訃報の激しさに既読しかないグループライン
(西瓜八号「ともに」欄)

遺影は蒼く喪服は黒くわたしたちそれぞれの遺され方の濃淡
(同上)

【筋肉短歌会】

アンミカをアンとミカとにわけたとき関西弁のほうがミカだよ
(アンミカ)

君を産む前日、君の母さんは君を産みたくないと言ったよ
(前日)

地球上ぜんぶ晴れてる日がなくて星もひとつのかなしい命
(宇宙)

今回の競駝は2番カスワーゥに二万バレルも賭けているんだ
(石油王)

手の早いサンタクロースにナンパされそのままメリークリスマスする
(サンタにお願い)

お前なんか父親じゃねー! おれの親父はシバカリジジイひとりなんだよ!!
(改変桃太郎)

薄荷味以外のことを考える 薔薇の味はなかったと思う
(花)

墓参りの花を調べて、君のこと考えて、まあ、ひまわりにするか
(花)

あっ!こら!今日のノルマの100首詠むまで机から離れるんじゃない!
(職業)

【NHK短歌】

ものぐさの部屋にゴキブリ棲み着いて吾は鯨骨生物群集(ホエールフォール)になれり
2022年9月 佐々木定綱選「虫」佳作

新宿のラッシュアワーで誰ひとり誕生日って顔をしてない
2022年10月 江戸雪選「記念日」入選

はじめての焼香までの3人でおれは作法を必死に学ぶ
2022年10月 佐佐木定綱選「焼」佳作

あんただけエスカレーター左やし東京の人になったんやねえ
2023年2月 江戸雪選「遠距離恋愛」佳作

歓迎会ないまま2年経過して酒豪と思われている見た目で
2023年3月 NHK全国短歌大会入選作品集 俵万智選「自由題」佳作

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?