【おしらせ】月刊『北方ジャーナル』2023年6月号発売中。

〇2009年に始まったスガの連載「よいどれブンガク夜話」第161回は

〈島木健作「昭和二十年日記」3――彼はもっとも近代的な英雄であった〉であります。
http://hoppojournal.sapolog.com/e498078.html

 札幌出身であり、昭和十年代の人気作家であった島木健作が病いを養いながら、最晩年となる昭和二十(1945)年、頻頻と空襲警報の鳴る戦時下の日々に戦局を気にかけつつ、読書と執筆に明け暮れる日々を綴っていた日記について書いております。

「彼はもっとも近代的な英雄であった」の「彼」とはヒットラーのこと。

 五月二日の日記には
《新聞は午後来た。独の降伏申入れは事実と信じていいようだ。 (略)夜、妻が小林君宅へ用事があって行き、帰って来て、ラジオのニュースを知らせた。ヒットラー薨去と。(略)ヒットラーは自殺したのであろう。彼はさすがに名を惜しむの士であった。彼は英雄であったし、彼の精神も前はほんものであった。彼は身を持することが厳で、清廉であった。生涯を主義のために戦い、主義のために死んだ点でも、彼はもっとも近代的な英雄であった。ナチスにはしかし欧州各国の民心をつかむことができなかった。》

とあるのですが、かつて、二十代前半の青春時代に農民運動に全力を尽くした元共産党員島木健作がどうしてこんな感想を記すようになってしまったのでしょうか。ちなみに「小林君」とはあの小林秀雄のことです。

 〇同じく『北方ジャーナル』2023年6月号には同誌に長期連載しております蘇我すが子さんのエッセイ「古本屋女房の❝古本的日常❞」の第113回目「消えたのホントに」が掲載されております。

毎月通っている病院帰りに都心のスーパーに寄ってお買いモノ、レジに並ぶ列に加わったすが子さん、自宅からずっと引きずってきたショッピングキャリーバッグから手を離して、横の棚に並ぶジャム売り場をちょいと覗いてすぐに戻ると、なんとキャリーバッグが消えていたのです。蒼くなってキャリーバッグ探して店内ぐるぐる、店員さんに訊いても「知りません。ほんとですか?」とこちらを疑うばかりの冷たい対応。中にはすが子さんには至極大事なモノ、先ほど病院近くの調剤薬局から受け取ってきた多量の抗ガン剤が入っていたのですが……。

〇『北方ジャーナル』6月号は道内の大手書店、セイコーマートに置かれています。Amazonでも購入できます。

表紙絵は鈴木翁二氏です。

http://hoppojournal.sapolog.com/e498078.html


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