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初音ミク15周年と迷品MIKU STOMP

ただでさえ天使のミクが15周年、胸が熱くなるな……。
ということで「VOCALOID 2 初音ミク」が発売されて15年になりました。
音楽活動を始めたきっかけが初音ミクさんをボーカルにしての楽曲投稿で、それをきっかけに色々な物事が動き始めたので、初音ミクさんがいなければ今の自分はいないでしょう。

で、そんな中、最近こんなものを買いました。

数多ある初音ミクさんのグッズの中でも、おそらく迷品の類と思われる「KORG MIKU STOMP」です。

MIKU STOMP発売、しかし……

MIKU STOMPは、入力したギター・サウンドのとおりに初音ミクが歌うギター用コンパクト・エフェクターです。ご使用のギターを接続するだけで、簡単に初音ミクに歌わせることができます。サウンドの核となる音声合成技術は、ヤマハ製新世代音源NSX-1による“eVocaloid™”を搭載。打ち込みや鍵盤とは違ったギターならではの奏法により、簡単に表情豊かな初音ミクの演奏を楽しめます。

Features | MIKU STOMP - STOMP EFFECT | KORG (Japan) より

と当時も変わらない人気を誇っていた初音ミクさんに、ギターを使うことでリアルタイムで歌ってもらうことができる!というエフェクターだったのですが、当時はまだバンドサウンドが主流の一つで、エレキギターとも近かったにも関わらず、これがもう見事に誰にも見向きされませんでした。
それは、ギターを弾いてから実際に発話されるまでの時間(レイテンシ)がとにかく遅くて使い物にならなかったこと、歌声が無調整の状態に近く不気味の谷のような怖さを感じることが原因でした。
そんな製品だったため、最後は小売各店からは1万円を切る値段で投げ売りされて製造終了、そのまま数あるグッズに埋もれる、はずでした。

謎の高騰とその理由

当時は総スカンされたにも関わらず、製造終了となると何故か欲しくなってしまうのが人の性なのか、中古市場では徐々に値上がりを続けていました。
それからしばらく経つと、著名なギタリスト達が所有している、ということが判明します。本来の「歌ってもらう」という点では落第だったものの、エレキギターから変な音を出す「飛び道具」としての使い道を彼らが見出したのです。
ギタリストというのは単純で、好きなギタリストが持っている楽器が欲しくなってしまう生き物です。値段は更に上がっていきます。
そして、その中に世界的なギタリスト、ジャック・ホワイトが加わりました。2022年のフジロック・フェスティバルでヘッドライナーを務めています。

今年リリースしたアルバムの楽曲にも、ライブパフォーマンスの中でもMIKU STOMPが利用されており、これが購入を決意したきっかけでした。僕もギタリストなので単純なのです……。

MIKU STOMPの致命的な弱点

実際にMIKU STOMPをエレキギターに繋いで音を出してみると、前々から分かっていたレイテンシの問題が大きく、まるで衛星中継かいっこく堂のネタのように、弾いてから初音ミクさんの歌声が聞こえるまでに相当のラグがあります。
ただ、MIKU STOMPにはそれ以上の弱点があります。

このエフェクターはいわゆる「Nyan Cat」を歌えないことです。

エフェクターのモードには、「あー」とか「ぱー」とか単純な声を発するものがあるのですが、このままでは歌というより大声を出しているというのが近いです。
そんな中で歌というよりは単純な発声に近いことをしている曲で、かつ「にゃん」というモードを利用すれば歌ってもらえそうな曲が「Nyan Cat」という動画で利用された曲の「Nyanyanyanyanyanyanya!」なのですが、どちらもこのエフェクターでは歌ってもらうことができません。
何故かというと、MIKU STOMPはレイテンシが悪いだけではなく、発話の間隔も滅茶苦茶長く、ある程度テンポが早くなると正確な発話ができなくなるためです。
「Nyanyanyanyanyanyanya!」はとにかく初音ミクさんのかわいらしい歌声が存分なく発揮された曲なのですが、曲のテンポが早いため、MIKU STOMPでは追いつけない部分が存在するのです……。

それでも何故か使いたくなる理由

そんな最大の弱点があるMIKU STOMPなのですが、それでも使いたくなってしまうのは「音がとにかく唯一無二」「初めて初音ミクさんに歌ってもらったときの気持ちを思い出す」ということがあるからだと思います。

まず、1つ目の理由、MIKU STOMPは実用的な部分はかなり厳しい製品ではあるのですが、それでも「VOCALOID、しかも初音ミクさんの声が出てくるエフェクター」というのはこれ以外に存在しません。間違いなく唯一無二です。
著名なギタリスト達が所有しているのも、その特異性に注目しているからではないかと思います。

そして、2つ目の理由。
MIKU STOMPから発せられる初音ミクさんの歌声はかなり素っ頓狂なものが出てくる時もあるのですが、「これが初音ミクさんを操作した時の歌声」を思い出させてくれるものなのです。
当時のエディターは「元に戻すが上限がある」のに始まり、とにかく使いにくいことが知られており、しかも素の設定のままでは初音ミクさんは声がフラットして音痴に聞こえたり、音の大小が極端になったりと細かい設定が必要でした。
このあーでもないこーでもないと設定して歌声を聞いて、を繰り返した結果、初音ミクさんの歌声が完全に刷り込まれてしまっています。
その結果、MIKU STOMPから発せられる間延びした声を聴くと、どこかノスタルジックな気持ちになってしまうのです。

最後に

ということで、最近買ったMIKU STOMPの紹介でした。誕生日の日にMIKU STOMPの話をしているのは自分だけではなかろうか。

今は弊バンドでもスタジオに再び入るようになったので、まずはその時に使って面白いことが出来ないかなぁ、と考えています。

効果効能として、欲しい機材を買ってはしゃぐ私か好きな服を着てはしゃぐ私が見られます。買ったものは記事にします。よろしくお願いします。