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【備忘録】マリオRPGのスタッフ26名のうち、ラブデリックでもアルファドリームでもない20名について書く。

はじめに


2023年11月17日(金)にNintendo Switchで『スーパーマリオRPG』が発売。
1996年3月9日にスーパーファミコンで発売された『スーパーマリオRPG』に新要素も追加されたリメイク作品です。

オリジナル版のスタッフについて、その後にラブデリックやアルファドリームに移ったと語られることが多いんですが、
サウンドを除く26名のオリジナルスタッフのなかで
後のラブデリックの人は4名
後のアルファドリームの人は2名
と、人数的には少数派だったりします。
なお、ここでいう26人は監修を担当した任天堂のスタッフも含んでません。

今回は、ラブデリックとアルファドリームに無関係な20名について、マリオRPG完成からのスクウェア/スクエニの歴史を追いつつ、敬称略で知っていることを書いていきたいと思います。特にオチとかはありません。

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マリオRPGでスクウェア大阪をイメージする人もいるようですが、
全スタッフ26名がどんな人たちが集まったのか、1つ前の仕事で仕分けると
・「ファイナルファンタジーUSA(大阪)」が1名
・「聖剣伝説2(東京)」が3名
・「ファイナルファンタジーVI(東京)」が4名 
・「ライブ・ア・ライブ(東京)」が10名
・「クロノ・トリガー(東京)」が2名
・初参加が6名
となります。場所的にも恵比寿で始まり、目黒でマスターアップしてます。
マリオRPGの開発は、1994年の年初~1995年10月と言われていて
FF6の開発終了は1994年2月、LALの開発終了は1994年4月、クロノの開発終了は1995年1月なので、人は段階的に増えていったものと思われます。

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無事にマリオRPGが発売され、程なくしてスクウェアの作品はプレイステーションに完全移行。
マリオRPG完成後、発売を待たずしてラブデリックを設立した4名はスクウェアでの最後の作品がマリオRPGになったわけですが、同様にプレイステーションに移行するスクウェアに残らなった人が2名。

1人はマリオRPGでバトルデザインを担当した長谷部裕之。プレイステーション時代に、ディスク4枚組とFFにも比肩するSCEの大作RPG「レジェンド オブ ドラグーン」のディレクターを務めた人ですが、残念ながらその後は名前を見かけません。

もう1人が同じくバトルデザイン担当の太田顕喜。なお太田も長谷部もFF6からのバトル担当です。別業種のプログラマからの転職という経歴もあってか、退社後はコナミの「幻想水滸伝II」でプログラムを担当。同シリーズの「外伝」「カードストーリーズ」ではディレクターを務めました。コナミ後も様々な作品にシナリオ担当として参加。最近だとスクエニの「ハーヴェステラ」。
漫画の原作も多数担当し、現在「俺の友達♂♀が可愛すぎて困る! 」が連載中です。


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プレイステーション時代
マリオRPGのWディレクターであり後にアルファドリームに至る2人はそれぞれデジキューブとスクウェアLAに活躍の場を移し、残りのスタッフ18名はだいたいFF7チームかFFTチームに編入されます。

その後、FF7、サガフロ、FFT、FM2nd、ゼノギアスとスクウェアのプレイステーション第一弾作品が一通り発売され、第二弾の開発に移っていきますが、
マリオRPGとFFTでマップグラフィックを担当していた我妻結希についてはこの2作のみでスクウェアを去ることとなりました。氏についてもその後の情報は見つけられず。

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大作主義のスクウェアでしたが、プレイステーション第二弾では実験的に小規模なプロジェクトが多く作られました。が、その後にはプレイステーション2が発表され、大規模開発に向けての体制が整備され、それらの後続企画は続きませんでした。早期退職優遇措置なども行われて、マリオRPGスタッフも何人かが退職していきます。

バトルプログラム担当の武藤竜
BGマップグラフィック担当の坂口知義
BGマップデザイン担当の茂木俊之
マップデータコーディネート補佐の栗原俊夫
武藤と坂口は「アナザー・マインド」、茂木は「レーシング ラグーン」、栗原はその両方に参加していました。

この4名のうち、その後がわかっているのは2名。
坂口知義。元々アニメーターでしたが知り合いのつてで転職し、半熟英雄2とLALを経てマリオRPGに参加。LALでは幕末編の敵キャラ「坂口知由市」として作内に登場。FM2ndとアナザーマインドの後にスクウェアを辞めて、モノリスソフトの「ゼノサーガ エピソードI」に3Dマップデザイナーで参加。同2作目以降には参加せず、その後は「ブルードラゴン」「ロストオデッセイ」「テラバトル」などのミストウォーカー作品の多くにグラフィック担当として参加しています。

栗原俊夫は様々な作品に関わったのち、マッププランを担当したFF7から10年ぶりにFFシリーズ(FF4ジアフターと携帯電話版FF4)にマトリックス社の開発スタッフとして携わることになります。

アルファドリームもこの時期に設立。
それぞれの事情もあるはずで、一概にFFシフトで辞めたと言うのは乱暴ですが、この時期にスクウェアから居なくなったのは6名と言うことになります。

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PS2発売以前に半数になったマリオRPGスタッフですが、PS2発売、映画失敗、任天堂取引再開、合併とかいろいろありつつも10年間は辞めた人は比較的少なく2名です。

グラフィックコーディネーターを担当した皆葉英夫がその1人。FF5からスクウェアで働き、FF6,FF9,FF12とアートディレクターを務めた人物ですが、FF12開発中の2004年に有限会社デザイネーションを設立。FF12にも継続して関わりつつ、ミストウォーカー作品などで活躍。更に2012年には株式会社サイデザイネーションを設立し「グランブルファンタジー」などを手がけています。今年2023年2月に初の個人画集を出しています。

もう1人はBGマップデザインの佐々木由起子。デザイン会社からの中途入社で、FF5とLALを経てマリオRPGに参加。その後は松野チームで活躍しますが、FF12の3Dマップ&バックグラウンドデザインがスクエニ最後の仕事となりました。ゲーム業界から引退しており、2015年に行われた“LIVE・A・LIVE・A・LIVE 吉祥寺篇”で本人が語ったところによると学校の事務関連の仕事をしているとのこと。

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そして2009年、10年ぶりとも言える人員削減がスクエニで行われました。

"こうした事業変革に向けてスクウェア・エニックスは人員を削減した。2009年3月末時点でのグループ全体で3805名いた人員を,2010年3月末には3338名と約467名削減した。この1年間で増えた中途や新卒の採用も考慮すると,実質的には800人近く削減した計算になるという。"

https://xtech.nikkei.com/dm/article/NEWS/20100519/182711/

この時期からスクエニ作品のクレジットで名前を見なくなったのは4名。

メニュープログラム担当の吉岡光生。UPL社からの中途入社で、マリオRPGが初作品。作中の人気ミニゲーム「ばくれつカブト虫」の開発担当でもあります。マリオ後はFF7、ベイグラントストーリーに参加。その後プレイオンラインなど非ゲーム事業に移ってかあまり名前をみかけなくなり、スクエニがWEBで公開していたゲーム開発ツール「ゲームブレイン」で名前が出たのが最後。現在はハ・ン・ドにて引き続きプログラマーとして活躍しています。最近名前を見たのは「ベヨネッタ3」

バトルプログラム担当の青山伸一。スペシャルサンクス枠でなく役職持ちでクレジットされたのはマリオRPGが初。その後はFFの7と8でエフェクトの、FF11でワールド&ロビーサーバのプログラムを担当。POL繋がりかフロントミッションチームに移り、「フロントミッション5」ではメインプログラマーを務めました。「ラストレムナント」後の「ジャイロマンサー」がスクエニ最後の作品。その後、田中弘道が手掛けた「セブンス・リバース」のクレジットに同名のプログラマーの記載があるのが判明してますが当人なのかは不明です。

BGマップデザイン担当の阿比留優子。美術系短大から新卒入社し、半熟英雄2とLALを経てマリオRPGに参加。FF,サガ,聖剣伝説,半熟英雄,KHとスクウェアの看板5シリーズに跨いで関わった数少ないアートデザイナーで、他にもワンダースワンの「はたらくチョコボ」「ブルーウィングブリッツ」「ワイルドカード」にも参加。「KHバースバイスリープ」を最後に退職し、グリーの子会社WFSの「アナザーエデン」に参加しています。

バトルBGデザイン担当の筒井美佐子。聖剣伝説2の後に、マリオRPGに参加。こちらもFF,サガ,聖剣伝説,KHの4シリーズ+スクエニになってから「ドラゴンクエストX」に参加という経歴の持ち主。DQX後はフリーの立場でフリューの「レジェンド オブ レガシー」「アライアンスアライブ」に参加。
フリーになってからはJam名義でメンタル本や漫画の執筆も行い、代表作「多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。」はベストセラーになり、TV番組出演などもしています。最新作は11月に発売。

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その後スクエニは社長が和田洋一から松田洋祐に変わり、開発体制もビジネスディビジョン制に移行するなど組織的な変更が行われていきます。マリオRPGスタッフも人数的には四分の一ほどになりましたが、そこからまた2名。

BGマップデザイン担当の宮本由香。ヒューマンから中途入社で、スクウェアではLALが初仕事。マリオRPG後はFFTに参加。その後もFF9,POL,FFTA,FF12,光の4戦士,TO運命の輪,ブレイブリーデフォルトと皆葉英夫や吉田明彦、松野泰己のいる作品に参加することが多かったのですが、聖剣伝説4やDQ10などそうでない作品にも参加してます。松野泰己が2011年にレベルファイブ入社した際にファミ通にのっていたタイトル未発表作品の画も宮本の仕事。フリーになった後もスクエニで仕事をしていましたが2013年から完全にフリーになったとのこと。
SNSにアップしていた「とーとつにエジプト神」が人気となり、豪華声優陣で2020年と2023年にアニメ化。少し前にはサンリオともコラボしていました。

イベントデザイン担当の松原啓介。FF6とクロノトリガーを経てマリオRPGに参加。その後は、途中で「ゼノギアス」へのヘルプ参加を挟みつつ、FF7→FF8→FF10→FF10-2→DCFF7→CCFF7とFFチームで長く活躍。FF6~ゼノギアスまではイベントパートを担当し、FF8以降ではバトルパートを担当しています。CCFF7から少しあいて「ライトニングリターンズFF13」、そして「FFXIV蒼天のイシュガルド」に参加したのを最後にスクエニから退職しています。

2023年現在

2023年になり、社長も3代目となりました。
以後、現在もスクエニに在籍してると思われる人たちの紹介なのですが
ちょっと不明なのが三舟二郎。LAL強藩士でいうとことの”三船二郎左”
デザイン系の専門学校を卒業しスクウェアに入社。初参加は半熟英雄2のモンスターデザイン。その後、LALのモンスターデザインを経て、マリオRPGにシナリオ原案とエフェクトデザインで参加。以降は、「バウンサー」を挟みつつ、VFXデザイナーとして松野系列の作品に継続参加。FFTとFFTA2ではサイドストーリーの企画原案も担当してます。TO運命の輪のあとは、初期のDQ10と新生FF14に参加。「FFレジェンズ時空ノ水晶」では過去自身の手がけたLALの"ピュアオディオ"を20年ぶりにリデザインしました。
2017年のFF12ザゾディアックエイジ以降は、リメイク版LALやTOリボーンにもクレジットに名前が無く、スクエニに居るのか居ないのか。

(11/14追記)
リメイク記念期間限定でX(元Twitter)にご本人が再臨。既に退職済みとのこと。
https://x.com/jiromifune/status/1722389457830301716?s=46&t=Nl0-VUyc9uc_UCpU6tPwzw

そして最後になりましたが、直近でもスクエニでの活躍が確認できているのが4名。
イベントデザイン担当の松村靖。大学を中退しスクウェアに入社。初作品はNESの「RAD RACER 2(日本未発売)」で、マリオRPGスタッフで最も社歴が長い人物です。FF4と聖剣伝説2(とLAL原始編の"ウホ"のボイス)を経てマリオRPGに参加。その後はFF7のバトルプランディレクターを担当した後、ファイナルファンタジーの映画に参加のためホノルルに。帰国後はFFCCチーム→FF14チームで、新生以降もFF14チームでUIデザインを担当中です。DQビルダーズ1にも参加してます。ルービックキューブの名人としてTVに出たこと有り。

メインプログラマーの深谷文明。ウルフチームから中途入社し、半熟英雄2が初スクウェア作品。LALとマリオRPGの二作ともメインプログラムを担当。その後はスーパーバイザーとしてPS版FF4に参加。聖剣LOMではBGマップと「リングりんぐランド」のプログラム。FF11チーム→フロントミッションチーム→FFCCクリスタルベアラーと移り、FF14チームに。さらに「DQ10 眠れる勇者と導きの盟友」あたりでDQ10チームに移り、今もプログラムを担当しています。

メインキャラクターデザイン担当の加藤清文。デザイン事務所から日本テレネットを経てスクウェアに入社。PS以降3Dのゲームが主流になる中で2010年中盤まで2Dドット絵仕事を続けていた稀有なドッター。関わったのはLAL→マリオRPG→FFT→アナザーマインド→クロノクロス(のフェイスグラフィック)→ワイルドカード→ブルーウィングブリッツ→半熟英雄対3Dの2D部分→エグモンHERO→半熟英雄4の2D部分→FF12RW→ブラッドオブバハムート→TO運命の輪→ホーリーダンジョン。2015年以降はポプスト・スクストに3Dデザインでクレジットされてます。

同じくメインキャラクターデザイン担当の波多江由布子。就活中に兄の薦めでスクウェアを受けたところ採用され、マリオRPGが初作品に。マリオRPGのあとFFTでエフェクトのデザインを担当し、それ以降はVFXデザイナーとしてFF8,クロノクロス,バウンサー,FF11,FF12に参加。クロノクロスでは"ツマル"のデザインも担当。一時離脱も含みつつ長く在籍していたFF11チームを「ヴァナディールの星唄」後は離れ、FF15,KH3,FF14漆黒などに参加していましたが、「蝕世のエンブリオ」ではFF16と兼任する形で復帰しました。

おわりに

連々と書かせてもらいました。
26名だけでなく当時のサウンドスタッフや任天堂スタッフ、当時の関係者すべての人に感謝を。

ご指摘・追加情報・その他なにかありましたらXまで連絡ください。https://twitter.com/Subeaki

参考にしたサイト
Mobygames
[SQRT]担当解析編
[SQRT3]選定資料編

参考にしてないサイト
Wikipedia

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