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シリーズ:令和六年度イセヒカリ育苗日記と顛末

 沖縄に移転して、2012年から農業を再開して、2019年の夏に農地を返してからは農業系の企業に勤めたり、中南部、北部で農業を始めた農家さんの指導をしたり手伝ったりしています。また沖縄で一坪水田やバケツ水田を始めて10年近くになりますが、今年のバケツ水田用の育苗が沖縄では最後になると思います。

 令和六年のイセヒカリ種は西原市の農園にて水田を開いた際に苗を供給し、秋に種籾としてお返し下さった沖縄県西原産イセヒカリを利用しています。イセヒカリはその名の通り、伊勢神宮のご神田で栽培されていたコシヒカリ系の稲ですが、台風襲来でも倒れなかった新種を繋いで全国に広がっている品種です。農産品としての登録(特許)はないので誰でもどこででも栽培できます。栽培できる北限は東北の青森ですが、現在では一部、北海道でも栽培されています。

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 米が沖縄に伝来して1600年以上経っていますが、ジャポニカ種はもともと亜熱帯地域で栽培されていた水稲(水生植物)として水田で作られて来ました。他の大陸にあるような陸稲栽培は珍しいですが、含有する水分量に違いがあり、パラパラした感じで粘り気が少ないと言われています。一方、東南アジアで栽培されている「長粒種」も粘り気(デンプン質)の少ない品種で炒め物料理などに適していますが、おむすびやお寿司には向かない為、もち米を利用したりしている地域もあります。日本国内では1600年の長い間の品種改良で各地域で独自の進化を遂げた品種になっています。

 奄美諸島・沖縄南西諸島を除く多くの日本国内では年に一回しか栽培・収穫できない為、農家では一生を通じてせいぜい80回くらいしか栽培の経験ができませんので、毎年やってくるこの時期は水稲栽培の中でも一番大変で一番楽しい時期でもあります。現在では高齢化のために水田の集約が進み大規模生産化しつつありますが、農業人口は100万人も減少しつつあり、今世紀中には日本の水田栽培が終わってしまう可能性があります。これまでの手作業での育苗・田植え・水やり、水切り、施肥設計、稲刈り、天日干し、脱籾、脱穀、精米などの作業スキルが失われつつあります。日本中で開催される祭とも密接に関連する米作りですが、ロボットや環境操作による施設栽培にとって変わられると効率重視になっていき、水田に発生するいくつもの生命の息吹が聞こえなくなるかもしれません。

 日本の風物詩としての「田植え」「黄金色の田んぼ」「千枚田」「稲刈り」「天日干し」「野焼き(消防法の改正で届け出があっても通報されてしまうことが多くなり、ほぼ見なくなってしまいました)」、土起こし、一年を通した水田湛水と生命の生き死には、これまでごく普通のこととして存在して来ましたが、今後は今の世代が農業を手放してしまった場合、輸入品に頼るか、能力開発系の移民によって引き継がれるのかもしれません。農業は重労働で、現在の就労体系や効率や時間給与には見合わない作業が多いのです。そういう意味で田舎を離れて都市部に集中するため、人々が集まる場所としての田舎が廃れていき、最終的には日本人の精神の根幹が薄れて行くのでしょう。そういう風に感じます。今後、政策として農業における時間単価が2,000円程度まで上がらなければ、農業回帰は起きないのではないのでしょうか。

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 さて、各家庭のベランダでもできる「バケツ水田」用の苗を無償譲渡してから5年目(2023年は不作の為、配布断念)になりますが、今年は生育が順調です。ただ台湾・沖縄南西諸島での冬場の気温が高すぎ、降雨が少なかった為、今年は断水の危機と大旱魃が発生する可能性が高いです。農産物の栽培に農業用水は欠かせませんが、地下水道みたいに完備されている地域を除いては井戸を掘るか、貯水タンクで天水を貯めるしかありません。そういう危機感は4月の大型連休あたりで顕在化して来そうです。4/1時点での県内のダム貯水量は50%を下回り、45.9%でした。太平洋高気圧の西への張り出しでできた前線によって南から湿った温かい風が北上したり、大陸からの冷たい寒気がぶつかって出来る雷雨がこの時期の水源になりますから、農家としてはありがたい存在です。

 令和六年の種籾の発根、催芽作業は順調に進み、40℃の温湯で種子消毒したあとは、一週間近く水に浸漬させて根出しを行い、その後、自然栽培土を
作って育苗セルに播種し、水稲苗を作っている所です。2024年4月20日・21日の両日の午前中には譲渡会を行う予定ですが、気温が高めだと、急成長してしまい、ヒョロ苗(徒長苗)ができる場合もあります。バケツ水田に植えて5分まで水に漬ければ、倒れる心配はないですが、株元の分蘖がうまく行けば直立するようになります。水田には肥料はあまり必要ないですが、初期の生育をあげるには即効性のある養分が求められますので、

鹿沼土:2
赤玉土:4
腐葉土:3
養分:1

 このくらいの比率でバケツの土を作るといいでしょう。土の深さは20cmもあれば十分です。水深は5cmがベストですが、7リットル以上のやや大きなバケツをお勧めします。5リットルとかの小さいものは向きませんし、ペットボトルでは厳しいと思います。

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 苗をもらったら三日以内にバケツ水田に移植/定植するのがいいでしょう。もちろんベランダではなく、畑の一角に水田を掘って、防水シートを敷いて土作りしたり、代掻きまでやる本格栽培なら、苗を一本ずつ植える方法で分蘖させてもいいでしょう、一本の苗が最大20本くらいまで分蘖して一本の苗から千粒を得られれば、茶碗一杯(一膳)が採れます。僕のところで作っているイセヒカリの苗は20個の種籾(発芽率80%)を発芽させて苗を作っています。古い種籾を使うと一年冷蔵で10%ずつ発芽率が下がりますので、長期保存はお勧めしません。


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 初めての方は、「イセヒカリ育苗日記(写メアップ)」を付けるといいでしょう。我が子の成長を見ているようで、毎日が楽しくなります。水稲栽培は携わる人の性格が現れてしまいますので、失敗も多くなると思いますが、ぜひ人生に一回でもいいので経験して見ましょう。小学生の授業で経験した泥まみれの田植えを少しだけ経験できると思います。譲渡した方々には成長具合の写真を送ってもらう事がありますが、それを眺めるのも嬉しいですね。うまく行く時も、そうでない時も勉強になります。また経験も大事ですが、本を読んで見たい方には下記の単行本をお勧めします。僕の水稲作りのバイブルでもあります。

稲オタクが考えた面白すぎる農法!
松下明弘著・日本経済新聞社刊「ロジカルな田んぼ」¥850+税
https://amzn.asia/d/eUFPsrn

是非、note読者の方々もバケツ水田に挑戦してSNSやYou Tubeで発表して見てください。ご感想お待ちしております。

 イセヒカリの苗の譲渡に関しては、沖縄県内の方向けに「ジモティー沖縄」で今週末に告知します。こうご期待あれ!!

今回はここまで

アカシックレコード・リーディングNo. 20240404 なかつがわ🌟すばる


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