文体ストーカーのススメ


はじめに


 文体シャッフル優勝しました。文体シャッフルが何か分からない方はTwitterの「#700字文体シャッフル企画」で検索してみてください。

 700字文体シャッフル企画の第二回はTwitterとDiscordをあまり見れない忙しい時期だったので、企画が終わった後に企画の存在を知り予想未提出となりましたが、第一回、三回、四回、五回、ついでに蛮族700字文体シャッフル第二回(第一回はレギュレーション上参加不可であった)を優勝し参加した700字文体シャッフル企画は今のところ全冠になります。いぇーい!

 さて、先日行われた第五回700字文体シャッフルでは計16人もの文体予想者がいたということで今文体当てがにわかに盛り上がっております。meshiochislash氏の感想配信、主催Ruka_Naruse氏の各地のDiscordサーバーでの宣伝活動、Hasuma_S氏により作成されたハブ、EianSakashiba氏の文体予想スペースなど色々な方がこの企画を盛り上げるために活動をしているのを見て、私も700字文体シャッフル企画を盛り上げるために何かできないかと思い、このNoteを書いています。これを読んだ少しでも多くの人が文体予想というエンドコンテンツに挑戦してくれることを信じて。


文体を当てる前に


 初めに一つ言っておきたいのは、この企画では無理に全部の作品に著者を1:1対応で埋める必要はないということです。分からない作品は空欄で提出しても良いでしょうし、交流のある(≒ある程度文体がわかるであろう)人だけ埋めるのでも良いと思います。私は「この作品もこの作品もこの人っぽいな……」と思ったら両方その人で埋めても良いと思っています。

 このNoteでは高得点を狙うというよりも、特定の作品/著者の文体を当てるには何を考えればいいかという方向で書いていこうと思うので、全作品埋める体力はないけど文体当てはやってみたい!という方は参考にしていただければと思います。

 加えて、この記事では私が普段やっているデータによる推定は解説しません。なぜなら「データを比較してみましょう」で終わってしまうので。また、一部文体当て勢がやっている"魂の色"による推定も解説しません。できません。あくまで基本的な戦略について解説していきます。データにせよ魂の色にせよ、埋められるところを埋めきった後はこの戦略で戦うことになります。


文体当ての基本戦略

⓪ 参加者の過去作を読もう


 一番基本的な点です。文章を読んだことない人の文体が当たるわけがありません。

 ただ、じゃあ「今回の参加者は47人です、参加者の著者ページへのリンクは全部掲載してあります、全部読め」と言われて読めますかと言われるとまぁ無理です。無理。普段から記事を読んでいる人でも参加者全員の著作を全部読んでる人は相当希だと思います。

 なので、全員の記事を読むことは考えないで、まずは当てたい著者の記事を読んでみましょう。できればSCPよりもTaleが望ましいですし、過去に文体シャッフル企画に参加したことがある方であればそちらを読んでみるのも良いと思います。

 できれば、読みながらただ「面白かったなぁ」で終わらせるのではなく、「言葉選びが上手い」「話の展開が自然」「リズム感がある」「文調が堅くなく自然」など、文章の特徴に気を付けながら読んでみるといいと思います。どんな点でも良いので、その人が他の人と比べてどういうことが得意なのかを注意してみましょう。

 同時に、その人の作品と自分の感覚が合わない点も把握しておくべきです。例えば、「一文が長くて読みづらいかも」「話が飛躍的かも」「表現がちょっとありきたりかも」など、その人の文章と自分の評価基準で噛み合わない点についても意識しておくと文体当ての精度が上がると思います。

 この2つに関しては、世間一般の評価ではなくあくまで自分の評価として見るべきです。予想するのは自分なので、「ディスカッションでこう評価されてた」よりも「少なくとも自分はこう思った」の方が確実に信頼できる指標になります。

 もしも慣れてきたら、一文一文だけでなく話全体の展開なども視野に入れると格段に解像度が上がります。これは過去の700字作品を見るときに特に有効で、一部の著者は自分の中のコマ割りを忠実に守りながら書いていたりするので、「最初と最後にはキャッチーなフレーズを入れている、その部分を除くと大体3段落構成で、状況説明→状況の変化→それに伴う主人公の感情変化」というようなメモ程度のものであっても格段に当てやすくなります。

 もっとも、このレベルで過去作を全部読むのはたとえ一人の著者であっても大変でしょうし、何よりちゃんと解析してても当たらない時は当たらないので、本当にガチでエンドコンテンツに挑むわけではないのであればそこまで考えず、その著者の作品の好きな点と合わない点を考えてみるだけでも良いと思います。


① 作品を読んで、感想を言語化しよう


 感想の言語化は非常に重要です。Twitter等の外部SNSに上げるにせよ上げないにせよ、まずはどこが面白かったのかを考えて文章にしてみましょう。

 ここで気を付けるべきなのは、「雰囲気が良かった」や「面白かった」で終わらせないことです。なぜ雰囲気が良かったと感じたのかをちゃんと言語化する必要があります。ワードセンスなのか、展開なのか、それとも台詞のリアリティなのか。無責任にどこが面白かったのか書いても誰にも怒られないので、特に気を負わずに率直に感想を書いていいと思います。⓪ができたならこれもできるはず。

 同時に、合わなかった点も書いていきます。残念ながら、文体において最強の推定方法は苦手表現の狙い撃ちです。どう頑張って偽装したとしても、自分のスキル以上のことはできません ── これは自戒でもあります ── なので、自分の感性と合わなかった点はちゃんと言語化しておくべきです。幸いにもこれはTale批評ではないため、(Twitterなどの外部サイトに投稿するなら節度は必要ですが)無責任につらつらと書いてしまいましょう。もしそんな点が無いのであればパスしても良いと思います。

 前回は47作品でしたが、今後作品はどんどん増えていくと思います。50作以上の作品の感想を言語化するのは大変なので、一目見て明らかにその人の作品でないのであれば飛ばしてしまうのが賢明だと思います。人読みとの兼ね合いもありますが。逆に言えば、高得点を狙うのであればいくら大変でもこれをやる必要があります。

 私は今回、ふせったーで文体予想を公開しました。アレは大体6000字程度でしたが、実際はネガティヴ側の推定を抜いているほか、データから当てた部分の説明を省略していたり、著者と作品の候補から論理パズルを解いていたり、これを説明すると次回以降本当に勝てなくなるな……というような推定方法を意図的に省いたりしていたので実際に全部書き起こすともっと莫大な文字数になります。お勧めは全くしません。


② 作品を当てよう


 最大の鬼門です。

 まず初めに言っておくと、当たりません。

 私の第五回のスコアは18/47ですが、そのうちのほとんどはデータ推定によるものです。まともに当てたのは多分数作しかないです。第四回こそ32/39というスコアを出せたものの、あのレベルで当てやすい回は多分もう来ないんじゃないかと思っています。

 ただ、「特定の著者を当てる」、そして「1:1対応に拘らない」のであればそう難しいことではありません。⓪と①の結果を照らし合わせれば、余程のジョーカーが存在しない限り1~3作に絞ることができます。勿論⓪と①である程度しっかりと文章化する必要はありますが。あとはその3作全部にその著者の名前を書けば大体当たります。

 勿論一筋縄ではいかない著者もいますが、大抵の場合はこれで著者当てはできます。特にネタ寄りの作品を書いてくる著者に関してはネタ作品を全部埋めれば1人当たるなんてこともしばしば。

 高得点を狙うとなると話は変わります。その1~3作を確実な1作にしなければならなくなってくるので、根本的にやらないといけないことが変化します。が、それはまた別の話。

 ⓪~②を繰り返せば、参加者にもよりますが書くジャンルがバラバラでそれなりに文体に特徴がある3,4人程度であれば数時間で当たるのではないかと思います。(いかんせん①の全作品の感想を書くのにどうしても時間はかかってしまいますが)

 もっと手軽に当てたいのであれば、meshiochislash氏の感想配信を視聴するのが良いでしょう。当てるだけであれば十分な資料になると思います。……尤も、一参加者としては予想とか感想が公開されればされるほど嬉しいのでできれば感想をツイートしてくださると助かるんですけどね!


終わりに


 文体企画は一種のお祭りのようなものだと、少なくとも私は思います。

 私は毎回文体を必死に当てることを生業としていますが、文体当てができるのもこの企画が盛り上がっているからに他なりません。主催の方や毎回700文字の掌編を投げてくれる方がいてこそのコンテンツだと思います。頭が上がりません。

 あくまで700字文体シャッフル企画の一参加者として、この記事を読んで文体当てに挑戦してみようかなと思ってくださる方が一人でもいてくだされば幸いです。




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