Lobotomy Corporationの初日抽出におけるバグについての考察

どうも、SuamaXです。
先日Lobotomy Corporationを周回していたら興味深いバグを発見しました。
このnoteではバグの再現方法、原理の考察、RTAへの転用についてそれぞれ考えてみようと思います。

はじめに


このバグについてなんですが、既にTwitter上などで既知のバグとして実例報告が上がっているようです。少なくともLobotomy Corporationの攻略wikiやアニヲタwikiを見る限りではこのバグの再現方法について解説されている記述はありませんでしたが、掲示板やTwitterなどへの書き込みについては調べ切れていない(ゲームが発売されてから時間が経っているのもあり調べられない)という都合上、もしかしたら他の人が既に動作原理まで解説しているかもしれません。

ですので、あくまで私がこのバグの発見者として起源を主張するつもりはありません。敢えて言うなら「初めてこのバグをLobotomy CorporationのRTA、NG+カテゴリに組み込んだチャートを作成した」くらいの感じになります。


バグの概要


・特定条件下で、初日に抽出される「たった一つの罪と何百もの善」の抽出演出がスキップされ、代わりに別のアブノーマリティが収容される。

ホド抑制下なら実はこんな収容をしてしまっても装備で耐えられる(可能性が十分ある)



黒の兵隊への作業を完遂する職員エベレット


上画像では初日に黒の兵隊を引いているものの、何とか作業を完遂し初日を終わらせることができました。しかしながら、このバグは全てのアブノーマリティ(教育用ウサギロボを除く)が収容される可能性があるので、以下のようなアブノーマリティが収容された場合はたとえホド抑制が終わっており装備が整っている状況であっても即詰みとなります。

・「何でも変えて差し上げます」以外のツール
・「触れてはいけない」(PE-Box生成が不可能であるため)
・「何もない」(初日の段階で支給されるLOBポイントは2であり、勇気ランクを上昇させることができないため作業に入れた瞬間即パニックとなる)
・「規制済み」(初日の段階で支給されるLOBポイントは2であり、職員のランクを上げることができないため以下略)
・「蒼星」(初日の段階で支給されるLOBポイントは2であり以下略)

もっとも、確実に詰むのが上記のアブノーマリティというだけで他のALEPHやWAWが来た場合でも進行するのはかなり難易度が上がるでしょう。装備が整っていなかったり、ホド抑制が終わっていなければ猶更です。HEでも詰む可能性が十分あります。

私はこのバグを「罪善スキップ」(OS Skip)と呼んでいます。前者は自然に命名しましたが、OS Skipに関しては完全に不要なもののノリで付けました。なんかRTAのグリッチってこういう通称が付いてるとテンション上がりません?

閑話休題。

今回この記事では、先ほど述べた「特定条件下」というものが具体的に何を指すのかについて書いていきます。

バグの発生条件


  1. 「最初から」を押し、ゲームを10日目まで進める。(True Resetでなくてよい)

  2.  11日目以降は安全チームと教育チームのどちらを開けるかを選択することができるので、11日目から15日目まで安全チーム(教育でもよい)を開け続ける。

  3.  15日目はアブノーマリティの抽出が発生するものの、収容は発生しない。

  4. 15日目の配属フェイズでタイトルに戻り、「最初から」を押す。

  5. 初日の抽出イベントがスキップされ、代わりに15日目に収容したアブノーマリティが収容される。

この手順を踏めばバグを再現することが可能です。2つのチームを選べる状態を用いて「アブノーマリティの抽出が発生するものの、収容は発生しない」という状況を作れさえすればいいので、別に中層の懲戒チーム/福祉チームでも下層の抽出チーム/記録チームでも同じことはできますし、調整すれば16日目~18日目のアブノーマリティも初日に持ってくることができます。

先述した「ツール型のアブノーマリティを初日に持っていくと詰む」というのは、18日目の収容でこのバグを発生させることで再現が可能です。やる必要は一切ないですが。

バグの発生要因の考察


あくまで解析結果という訳ではなく、状況から私が考察した結果の結論という形になるので、正確にこうだとは言い切れないことをご了承ください。

このゲームでは、5日かけて1チームの開放度をMaxにしていくという操作を行います。1つのチームを開放すればよい状況であれば何の問題もなく、「非ツール→非ツール→非ツール→ツール→抽出なし」のサイクルでアブノーマリティを1チームに4つ収容することができます。

ところが、2チームの開放度を10日かけてMaxにするのはこのサイクルだと困ります。というのも、例えばDAY11~DAY15まで「非ツール→非ツール→非ツール→ツール→抽出なし」というサイクルで回していった場合、「DAY11~DAY14まで教育を開けてDAY15は安全を開ける」というようなプレイをするとDAY15時点でアブノーマリティが存在しない部門が発生してしまいます。これを避けるために、DAY11~DAY20までは「非ツール→非ツール→非ツール→ツール→非ツール→非ツール→非ツール→ツール→抽出なし抽出なし」というサイクル(1回なのにサイクル?)となります。

ここで、DAY11~DAY15まで全部教育を開けた場合教育チームにアブノーマリティが5個存在することになります。これも困ります。1チームには4個までしかアブノーマリティを置けないので。

ではどうするかというと、チームに既にアブノーマリティが4つある状態でなおアブノーマリティを収容しようとした場合、「今日はこのアブノーマリティの収容を保留した上で、次回の抽出をスキップして代わりにこのアブノーマリティを収容するよ」というフラグが内部で立ちます。こうすればアブノーマリティの数はDAY15は教育チームに4つ、安全チーム未開放の状態となり、DAY16は教育チームに4つ、安全チームが解放されて1つとなります。

ところでこのフラグ、リセットしても折られません。つまり、DAY15の「今日はこのアブノーマリティの収容を保留した上で、次回の抽出をスキップして代わりにこのアブノーマリティを収容するよ」というフラグを保持したままリセットしてDAY1を始めてしまうと、「たった一つの罪と何百もの善」の抽出をスキップして代わりにDAY15に収容しようとしていたアブノーマリティを収容することになります。これがこのバグの正体です。おそらく。


RTAへの転用


さて、ここからはRTAへの転用についての考察です。バグの説明だけ聞きに来たって人は「その他」の項まで飛ばしてください。

現在speedrun.comでLobotomy Corporationのカテゴリとして認められているのはTrue ResetとNG+の2つになります。簡単に言えば、前者が引き継ぎ無しで後者が引き継ぎありとなります。一応観測率100%RTAなど、speedrun.comにカテゴリこそないものの走者がいるルールも確認してはいるのですが、とりあえず本記事ではTrue ResetとNG+の2つについて考えます。

まずTrue Resetについてですが、これは恐らく使えないのではないかと思います。私も走っているわけではなくあくまで解説動画を見ている程度なのですが、流石に15日まではしってリセットしなければならないのはセットアップとして時間がかかりすぎている上、そもそもこれを使う旨味がなさそうです。

このバグが真に輝くのはNG+カテゴリです。このカテゴリでは引き継ぎがOKなので、初手でこのバグを利用することができます。(2023/01/15現在。レギュレーションの変更で使えなくなる可能性はごくわずかですがあるかもしれません。)これにより、初手にたった一つの罪と何百もの善よりも優れたアブノーマリティを持ってくることが可能になります。

やはりここには育成が優秀なアブノーマリティを入れたいところですが、46日目以降(特に47日目)のことを考えると雑に作業に入れられるアブノーマリティが欲しいですね。また、地味に初日に自制IIIの職員が一発でPE-BOXを15生産できる必要もあります。

とりあえずいくつか私なりに候補を考えてみました。もしかしたらこれ以外に有力な候補があるかもしれませんが、恐らくこれらのうちどれかになるのではないでしょうか。


夢見る流れ

最有力。本能・愛着・抑圧の育成ができるほか、作業結果でクリフォトカウンタが減少しない稀有なアブノーマリティ。また、勇気IIIの職員の本能作業なら補正抜きの成功率0.6と、他のWAWの中でも飛びぬけて1日目の安定度が高い。もっとも、E-Boxesは20なので6回失敗判定が出たらリセットだけど。

また、コントロールの1,2日目収容室前の廊下は黒の便利屋のリスクが一番低い場所。このアブノーマリティの大きな欠点である「脱走したらヤバい」をケアできているのもこの位置に入れられるのはかなり魅力。


裸の巣

夢見る流れと同じく、本能・愛着・抑圧の育成ができるアブノーマリティ。ただ、こちらは作業成功率が全体的に低め。その一方でPE-Boxの量は22と夢見る流れより多いほか、万が一黒の便利屋が廊下前に出現したり暴走対処に失敗したとしても特に何もないというメリットも。好みの範疇だとは思います。


次元屈折変異体

このアブノーマリティはなんと本能・洞察・愛着・抑圧全部の育成が出来てしまうかなり優秀なアブノーマリティ。特殊条件の40秒以上作業に関しても初日はどうせ一発で溜まらなければリセ、2日目以降はLOBポイントを使って自制をIVに出来るので特に気になりません。脱走されたら鎮圧が面倒ではあるけどそもそも装備さえそろってれば放置しても基本大丈夫なアブノーマリティなので気にならないと言えなくもないかも。

ただ一つ問題があるとするなら、全ステータスランクIIIの職員で作業すると成功率は補正抜きで0.45になる点。E-boxesが22だということを考慮してもかなり低いです。初日にリセが嵩むというだけでなく、2日目以降もPE-Boxの生産量が見かけほど高くならないであろうという点は吟味する必要があるでしょう。


魔弾の射手

HEクラスのアブノーマリティ、一応本能・洞察・抑制作業が可能。E-boxesは18で、正義IIIの職員の抑圧作業が補正抜きで0.6とまぁ初日が絶望的に突破できないというレベルではない。

ただ、やはり愛着作業ができないのは致命的。1日目のアブノーマリティを管理する職員はとにかく何回もこのアブノーマリティに作業したいので、愛着を上げてサイクルを高速化したい。一応48日目に必要になる(あったほうが良い)アブノーマリティなので確定で収容しておけるというメリットこそあるものの、やはり他のアブノーマリティの方が良いような気もする……

魔弾の射手が多くの場合必須枠になるから候補に挙がるというだけで、他のHEクラスのアブノーマリティに関しては考慮する余地もなさそう。スーツでもWAWの作業は審判鳥以外はなんだかんだ耐えられたりするし。


ラ・ルナ

本能と愛着育成が可能。正義もまぁ上げようと思えば上げられるだろうけどいかんせん補正無しで0.3だし厳しそう。E-boxesは18で、自制IIIの職員の愛着作業が補正抜きで0.5。かなり厳しいものの狙えなくはない。

育成という面で見ると正直他に劣るものの、演奏作業によって他職員の作業速度や作業成功率、移動速度を向上させることができる。もしかしたら、収容状況やチャートによってはタイム短縮が狙えそう。ホンマか???


地中の天国

洞察・愛着・抑圧作業が可能。E-boxesは24で、自制IIIの職員の愛着作業が補正抜きで0.5。初日突破率はそこまで悪くない上、なんと言っても作業結果でクリフォトカウンタが減らないのが嬉しい。

ただ一つだけ大問題があって、コントロールに地中の天国を収容するとカメラワークが大変なことになるという点。基本的に46日目以降雑に収容室に職員を送り込むときは上層・中層の収容室に向かわせることになるけど、にしたってコントロールの一番上にコイツを置くのはかなりリスキー。

逆に言えば、地中の天国を脱走させるのが容易という見方もあるけど…… 書いておいてアレだけど候補にはギリギリ入るかどうかってところ……?


……と、私が考える限りではこの6体が候補になります。小さな王子とかも悪くはないんですけどやはり夢見る流れの下位互換になってしまいますし、陰なんかも4日目を考えると収容できないですし…… ALEPH連中は作業ダメージが痛すぎる上、作業時間が長すぎる(TETH2回入れられる)、さらに言うとあんまり育成に向かないといったところでやはりWAWから選択になりそうですね。考察のしがいがありそうです。


その他、このバグでわかっていること・わかっていないこと


・1日目にスキップした「たった一つの罪と何百もの善」は2日目以降の抽出で現れる。
→抽出テーブルによって2日目はTETHしか出ないテーブルになっていたとしても「たった一つの罪と何百もの善」が現れる?

・同じ15日目でリセットしたデータでも、初日に収容しているアブノーマリティが「たった一つの罪と何百もの善」の時と「夢見る流れ」の時で2日目以降のアブノーマリティの抽出テーブルが変化している気がする。(未検証)
→試行回数が少なすぎるため有意に変化しているのかどうかは疑問
→バグで「たった一つの罪と何百もの善」をスキップしたことで内部の日付がズレているのか、もしくは施設内の収容状況でテーブルが変化する?

・特定条件を満たすとコントロールチームの左上に収容室が生えて初日に2つアブノーマリティが収容されるというバグがあるらしい。(発生報告のみ認知、詳細不明)
→収容室2倍MODのスクショを載せてバグを偽っているのか、そういうバグがあるのか。あるとしてそのバグは再現可能なのかなど、何ひとつ判明していない。
→疑わしいのは21~24日目と47~50日目の2個アブノーマリティがピックアップされる日付。ただ、このバグと同じ原理であればそもそも抽出のスキップ自体が発生しない筈なので、別原理で発生しているバグの可能性が存在する。


まとめ


・「たった一つの罪と何百もの善」ではないアブノーマリティが初日に収容されるバグが存在し、それは(少なくとも2023/01/15時点のバージョンであれば)再現可能である。

・Lobotomy CorporationのRTA、特にNG+カテゴリにおいてはかなり革新的なバグであり、大幅なタイム短縮が発生する可能性もある。

・このバグを発生させた後のアブノーマリティ抽出テーブルの動作については今後も検証する必要がある。



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