過去作品バラエティパック

はじめに

別のサービスでアップロードしていたうちよそ作品のパック。古いのだと10年近く前なので黒歴史もいいところなんですが、10年たったので笑い話ついでにアップロードします。

大体エリュシオンとグロドラの短文

澤口さんと点喰君の母の日

クラウドゲートWTRPG エリュシオン よその子の話をするうちの子の話
2014年生産のSS 2014年かあ…(白目)

「今年もまた、一人で行くんかい?」
手が持つ白いカーネーションをちらりと見、それからその手の持ち主を見やる。
「…凪。」
その名を呼ぶと、ふんわりとした笑顔が返ってきた。学園に通うようになってから
見られるようになった、『ちゃんとした笑顔』である。
さすがにそろそろ心配しなくても良い歳にはなった…と表向きには言っているが
妹のようなもの、やはり心配は心配である。
「大丈夫だよ、あそこに行くときだけは迷ったりしないもの。」
「いや、そうでなくてなぁ。んまぁ、その点も心配はしてっけども……。」
どう、切り出したら良いものか。唸っていると向こうからこんな言葉が返ってきた。
「直哉さんにはね、来月一緒に行ってもらうかなって。」
「……そ、か。」
一寸、呆けてしまった。どうもこちらが言いたい事なぞお見通しだったようだ。
(ちっこいくせに、俺なんかよりよっぽど強いよなぁ。こいつ。)
苦笑いと一緒にため息を宙に投げ、何とはなしに悔しくなったので、にやりと笑って一言。
「つっかえてた意固地さがなくなったのは良ぅこったな。」
「それ、縁お兄ちゃんに一番言われたくないんだけど。」
……生意気な鳴き声を上げた兎をわっしゃわっしゃとなでまわした。


【蛇と星】私の庭のにせがみさま

点喰さんちの始まりの話。昴さんと果さん初対面。
果さんひとめぼれって話だけどお巡りさんこいつです(2019-07-06公開)

始め、睦月の頃

その日、年始の行事も落ち着き始め、たぶん手鞠は遊びおさめにでもしようと
思っていたころ合いと記憶している。

父上がお城へお勤めの日。母上はその間、兄上とお家のお仕事
姉上はお稽古事。そんな状態だったので、私は中庭で遊んでいた。

家臣もいれど、そこまで大きな家ではないし、皆各々の日々の勤めがあった。
はたと、文字通り『独り』でいる時分に私は彼と会ったのだ。

トン、トン、トンと軽快な音をただただ刻む。

「…あ。」

不意に気に入りの鞠がころころと手からこぼれ逃げた。
あわてて家の門の方へ転がる鞠を追いかける。
緩やかな坂に、あわや家出をされるとおもったが

とてん、と。見慣れぬ爪先に止められたようだ。

「おや」

すい、と笠が外され、爪先の持ち主が鞠を拾い上げる。
その顔を見たとたん私はひたりと固まってしまった。

少しきつめの顔立ちで色は白め、くらいしか特徴といえる特徴はないはずなのに
人がもつものではない『何か』があるような、根本的な違和感があった。

ただ『畏ろしい』、と

不躾にもまじまじと見て固まってしまった。
しばらくして、相手が此方に近寄ってきたので、はっとして駆け寄る。

「どうぞ、お嬢さん。」

父上よりは若く、兄上よりは上と思う見た目より、少し年かさを感じる声だった。
面立ちを見直せば、やわらかく薄笑みを浮かべている。
しかし、どうしてかいつぞや森で見た蛇というものを思い出して仕方なかった。

「…ありがとうございます。」
知らぬ人でも家のうちに入れたとなると、客なのだろう。
おずおずと差し出された毬を受け取る。

「風穴殿!」

その声に目の前の彼が振り返る、家臣が客人を呼んだらしい。

「では、失礼を」

会釈をしてその人は家に入っていった。


一言交わしただけなのに、嵐が過ぎるまで外で待っていたような気持ちでいた。
「…こんな時期に誰だろう…。」
口から転び出たひとことは寒空にほどけた。

たまにある、なんでもないはずだった、一人の日。


【蛇と鵲】悪魔と末裔(すえ)子のちょっと昔と今の話 お稽古編

果さんマジスパルタ(2019-07-06)

刀の打ち合いというと、抜刀をしての大立ち回り、それから納刀でちゃきん
なんて音とともに映像を想像するだろうか?

実のところ時代劇やらはわかりやすく音を入れている
いわば漫画の定型表現のようなものなのだ。
実物では『しっかり手を入れて』『正しく使えば』
刀というのは恐ろしく静かに振るわれるもので

で、あるからして

私の手元からカチャン!なんて音がしたのは
前者の不備は我ながらはどう考えてもあり得ないので
後者が主な原因である。

……つか
「鯉口切って、一咫(ひとあた)しか抜いてないのに切っ先向いてるとか無理なんだけど」

性格ろくでもないくせに、大じいさま…この場ではお師匠さまと呼ぼう

どえらい、強いのである。


「いやあ、お前様でも刃くらいは抜ける速さでこちらも抜いたんだけどねぇ?」
心外な、とでも言いたげな様子で刃を再び鞘に納める大じい様。
(不覚にも、何度見ても所作の美しさに目が持っていかれる。)

天魔が暗躍するとはいえ、表向きは太平の世。
こんな東京の片隅でお巡りさんのお世話になりそうな代物を振り回しているなど
不審なことこの上ない私たち。

どうしてかわからないが、大じい様と会って、『知って』少ししてから
こうして私は、夜中に家を抜け出して剣術の稽古を受けている。

そう、剣道ではなく、剣術である。

目の前の師匠曰く我流ではあるらしいが、今に名が残る流派がちらほらよぎる
動きもあるため、そこまで高等かつ荒唐でとっつきにくいということはない。

に、してもだ。
(末裔とはいえ、タダの人に天魔の動きを追うのは不可能だと思うのだけど)
それでも、稽古をつけ対峙し、こんなことを嘯くのだ、このくそじじいは。

「ふうむ…まだ足りねぇ、のか。」
「なにが?」
「…や、なんでも。そうさねぇ…明日から素振り100回追加な」
「…はい?」
いや、もう日課課題で200は振ってるんですけど。

当時は、こうした稽古の理由が皆目見当もつかず
しかして、家業のほかにこれ以上関心を持つこともほかになく
中学くらいまではこうした『夜の稽古』が続いた

――――

己の意志が腕を伝って鋼を躍らせる。
その切っ先が、昔は届かなかった喉へ向いた。

「…やりゃあ、できるじゃねぇか」
できなくても、できても。結局は同じような声音で、師はわらった。

取り返せないものや、新しい世界を知るまでに月日は流れ。
なぜか、大じい様と再びこうして刃を打ち合うようになった。
おまけに、今では社会的な身分を考えると『同じ学校の生徒』という
大変なことになっている。どうしてこうなった。

「まあ、あの子ほどじゃないけど、私もここで修羅場はくぐったわけだし」
「そうさねぇ…今のお前様なら『天魔の相手』なら俺よりゃ、得手だろうネ」

お互い刀をおさめ、ひと段落。
学園に無数にある訓練所の一個の水飲み場でのんびりお茶を飲む。
汗かいた後の麦茶って偉大だ。

「まあねー…最近はやっと大じいが言ってた
『俺は弱くはないが強くもない』っていうのがなんとなーくわかってきた。」
「そうかい。」
「でも、えげつない。」

渋い顔をして私がそう言い放つと薄笑みが、からからとさらに笑う。

このじい様は、昔から私にもできる剣術の手ほどきをしてくれた。
つまり「人の動きの範疇」に熟知しているのだ。
長らく人に交じり、時には神様、時には流浪人、職人に落ち着いたと思ったら、自警団員だったり。
人を斬ったり人から人を守ったり、ただ人ができる動作や戦い方を「人間外の身体能力」で
発揮することを得意とするのだ。

天魔としては生きてくのにもう一声が足りないけれど、人としては強すぎる。
タスキになるには長い蛇さんなのである。

「人の子に灸でも据えなきゃいけねぇときは、重宝されるかなぁと、自分じゃ思ってるんだがなぁ。」
「まー…ない方がいいけど、ある話だしねぇ」

ずるずると麦茶をすする。
ここでふと、大じい様が何かに気が付いたようだ。

「おんや、珍しい。」
「ふえ?」

誰かに手を振っている。
そちらを見やると、私も顔を見知った人が歩いてきていた。
――厳密には、あちら様も大じいさまと同じく、人ではないけれど。

「わざわざこっち回ってくるって、何かご用事っぽいねえ。先戻るよ?」
「おう、すまねぇな」

片付けをそこそこに、空気を読んでそそくさと退散する私だった。


【山嵐と片割と時々鳥さん】俺達らうんじゃーず!

副題-神取冬呼のグロドラエピソードZERO群-
グロリアスドライブ本編前日譚 神取ツインズ、うぃず化野鳥太郎さん(よそ様のPCさんです)うっかり盛り上がって、某大学現役所属時代に同窓という名の昔の戦友設定生えたので四コマ漫画的にSSSのかきため

0)そもそも、らうんじゃーずって?
グロドラ本編よりさかのぼること17、8年前。某大学で神取冬呼・氷知兄弟が
講義間や放課後とかでよく使っていたラウンジで、同時間帯利用者を口説いて(?)
ゆるーく結成した、野良相互扶助グループのようななにか
(似たようなグループは毎年発生しており、珍しくもなかった)
そのSNSチャットグループ名がこれ
学部学科学年はおろか、サークルもバラバラで、フルメンバーが25人と中規模ゼミレベル
ゆっるいので全員集合は忘年会くらい。若かりし頃の化野さんが、編入早々餌食になった

以下、小話

1)惨事なおやつ―スタッフはいないので皆で美味しくいただかないといけませんでした―

進学者向け春のオープンキャンパスが終わった時期
大学も昼休みとなるとキャンパスに学生があふれる
特に休み時間入りたての食堂、そして購買は相当なラッシュだ

「鳥太郎、目当ては」
「うん、ばっちり」

氷知は他大とのコラボ開発品のフィッシュバーガー
鳥太郎は月々の限定フルーツサンドを片手に
レジ行列への流れにしたがって歩いていた

「氷知くん見て。すごいの入ってる」
「え、うわ。あれ購買にも売ってるのか」

あと一ブロックでレジというところで
ちょうど飲み物やカップスイーツの冷蔵庫を通るのだが
その中央、目玉商品が置かれるエリアに巨塔がそびえったっていた

ぷっつんプリン ザ・ビッグ

その名の通り、三時のおやつの定番 ぷっつんプリン
の、とにかくでかいやつ。年に何回か(主に大型連休前後に)
売り出される黄金色のわがままボディである(カロリー的な意味で)

「あれって人を集めて食べるようだよね」
「ただただデカいからな」

季節の風物詩といった感想を交えながら会計に進む
そのあとラウンジの中央テーブル(いつものばしょ)へ腹ごしらえへと向かったが
はたしてその机上には、さっきぶりの黄色いあいつがそびえたっていた

「やあやあ、お二人さんおつかれ~」
「姉、ひとつ聞くがそれはなんだ」

のっぺりと平坦な声で氷知が、先に席を確保していた
冬呼に問いかけた。
「弟よ、これがザ・ビッグ様に見えぬとは相当な節アイズ「そういうこと聞いてるんじゃねぇよ」

最後までいわせたまえよ!という冬呼の抗議にため息で応答する氷知
その隣では鳥太郎がひきつった笑いを浮かべていた
「えーと、予想可能回避不可能ってやつかな…ほかの子呼んでないの…?」
最後の望みを託すように此方からも問いかけを投げるが

「……( ^ω^)」

帰ってきたのは型にはめたような笑顔だけだった

2)事の始まり―又は化野青年、山嵐に化かされるのこと―

「なあ兄弟」「なあに兄弟」

ぱっと見、歳の離れた兄と妹にしか見えないが
実のところの双子たる神取兄弟がラウンジの定位置(いつものせき)をじっと見た。

「あの人だよな」「おそらく彼だね」

そこには、一昨日、紙面上で初めて見た青年が
眉間にしわを寄せ、いくつかの書面と格闘していた

「それじゃ、手はず通り」「そういうことで」

そういうと弟の氷知は先へ教室へ向かい
姉の冬呼はとたとたと件の学生へ近づいて行った

この日の、ちょっとしたお使いのため、恥ずかしいのを我慢して
それはそれはひらっふわの可愛らしいワンピースを用意したのだ
なお、お使いの依頼主(教授)からは「加減しろバカ」という
賞賛(突っ込み)をいただいた

それなりに近くまで駆け寄り
もう少しというところで少し足音を潜ませる
机の対面の下にもぐり、さあ今だ

ひょっこりと冬呼は青年の前に顔を出した

「お兄ちゃん、こんにちは!なにしてるの?」
「へ?」

初めて来る場所で突然、声をかけられたことと
聞こえた声がこの場所――大学内の学生向けの
ラウンジにそぐわないであろう子供の声で驚く青年

(よし、つかみはおっけー!)内心ガッツポーズしつつ続ける

「なにか困ってるみたいだけど、授業の時間大丈夫?」
ラウンジの柱をさす冬呼。その指先を青年が追い、作り付けの時計を見ると

「いやなにって…授業?…わ、やばっ」
3時限目が始まるまで5分を切っていた

バサバサと書類をかき集め、鞄に突っ込むとラウンジの外へ
駆けだそうとする青年。そこを冬呼が手を引いて止めた
「近道こっちだよ!」
「えええちょっと?!なに?!」
ぐいぐいと引っ張りこんで、外からだと非常にわかりにくい
渡り廊下側へダッシュする冬呼と青年
途中で青年も向かう先が正しいのに気が付いたのか
そのまま冬呼と一緒に目的である3号館にある講義室前へ駆け込んだ

「お兄ちゃん、来たかったの、ここでしょ?」
びたっと講義室前に止まり、息を上げつつもニコっと笑いかける冬呼
「うん、そうなんだけど。なんで…?」
息を整えつつも、混乱しているらしい青年の問いに
笑みを深めつつも何も答えず

いつもの声の調子に戻しながら扉を開けた

「氷知ー!お使いコンプリートしたけど教授(せんせい)きたー?」
「あ、姉さんおつかれーまだだぜー。」

自身を引っ張りこんだ少女が当たり前のように講義室の
席に向かっていったことに驚く青年

しかも自分と年かさが同じだろう青年に『姉』と呼ばれなかったか?

「……は?!」

今の一連の流れで何が起きているかさっぱりわからない
と、後ろから先日挨拶をした、社会学系の講義を受け持つ教授がやってきた

「ああ、化野くん来れた…神取さんに案内してもらったようだね」
にこやかに声をかけた後、青年、化野の様子を見てその顔が苦笑いになる

「なんだアイツって思ったかもしれないけど、悪い子ではないから勘弁してあげてね。
ひとまず、授業をはじめるから」
「は、はあ…。」

頭に疑問符を茂らせつつ、化野青年の編入先での初めての授業が始まった。

3)酷暑とサマージャンボバカ

鳥太郎が某大学へ編入してきた年の夏は、それはそれは暑かった

「うあー…窓が大きいから暑くなるよなぁここ…」

いかに天井も高く、空調のめぐりをよくし
遮熱フィルターによりくすんだ色になっている窓ガラスをもってしても
さんさんと降り注ぐ熱を抑えきることはかなわないらしい
そのおかげか、ラウンジは珍しく閑古鳥がコーラスをしていた
常連利用者も、おそらくサークル棟や図書館に避難したのだろう
自身もレポートの進みが悪く、これは場所を変えた方が賢いか

「ちょーーーーたろーーーーーーーーー!!!!」
立ち上がろうとした矢先、暑さと静けさを跳ね飛ばす勢いで
友人の声がラウンジの入り口から飛んできて、追って本人もこっちに飛んできた

「どうかしたのか?」
「おっぱいプリンを型からつくるから、秘蔵のスケベブックかーして?」
小首をかしげ、彼の姉が禄でもないことを言い出すときの顔をして
友人はそうのたまった。双子だからそっくり

「は?」
ふと、講義資料でみた、明治だか大正の、男が暑さで狂死という新聞記事が
鳥太郎の脳裏にひらひらと落ちてくる

「…氷知君、保健室に行くんだったら付き添うけど」
「えっまってまって、三割は真面目な用事なんだって」
「七割どうしたの?」

もはやこのケースで恒例となったやりとりをしつつ
一応話を聞いてやることにした鳥太郎

曰く、理工学部で新しく学生が利用できる3Dプリンターが導入され
好きなものを作れるテストショット期間とのことで

「せっかくだからおっぱいプリン作ろうと思ってさ。」
「せっかくでつながる前後文じゃねえよな?」
「で、鳥太郎の趣味のスケベブックだったらモデリングしやすそうないい乳がありそうで」
「誰もいないけど人の性癖さらっというのやめよ?」
「俺が型作って姉さんに使ってもらう予定。いま材料買いに行ってる」
「冬呼ちゃんまで、何してるの?!」

もうやだこのばかきょうだい

鳥太郎は顔を覆って嘆くしかなかった

4)旅行に行ってのちょっとした一幕
大学生ならではの、長めの春休みだ▽
冬呼と氷知は、鳥太郎を拉致した▽( (2泊3日)
レンタカーで、ペンション目指しての、のんびり旅である▽

その1 残酷な差
「「「さいっしょはぐー!じゃんけん…」」」
「「やったー!」」
「あー負けた!」
「結局全員1回ずつかー。じゃあ、二人とも後ろいって
ぱたぱた、ばたん
「……鳥ちゃん全長ながああい!!」
「あ!ごめん、シート戻し忘れた」
「ねーさんが短いだけ「シャラップ!!!」いってぇ?!」
「まあ、しょうがない。…まって何も見えないしどこも届かないから調整させて」
「20センチ超えてるもんね、身長差」

その2 呪文?
※料理は自分たちでするか、食べに行くかというタイプである
「よーし適当に作ってついでに飲もう」
「いいね、道の駅で色々買ったし。酒冷やしとくな」
「頼むわ。ねーさんこれからやるかー?」
「うん」

「…昔々」
「台所にホウレンソウがありました」
「「おひたし、おひたし」」
「…なに、今の」
「「え?やらない(の)(のか)?」」
「やらないよ?」(真顔)


【鵲と蛇】宴の後の一幕

果さんと百目鬼揺籠さんでやったノベルの後日譚
めちゃ短いです

「あ、いたいた」

違法増築っぷり(計画性のとんでもっぷり的な意味で)に定評のある久遠が原学園の
大学部のどこかのラウンジ。私は目当ての人物を見つけてふらっと近寄った。
抜けるように白い長髪、石膏の胸像のように白い肌。ここ、久遠が原ではこうした
日本と縁遠いような色味を持つ人が少なくはない。もっとも、振り返えると合う目の
瞳孔の裂け具合や人間にはないはずの鱗まで気がつけば、そんなレベルの御仁でもないことに
気が付くけども。

「おんや、そっちから声をかけるとはめずらしいねぇ。」
御仁は相変わらず腹の立つ薄笑みを浮かべ、開いていた本を閉じると此方に向き直った。

「何か用かえ、因。」
「忘れ物届けにと、伝言だぁよ。」

私は風呂敷に包んだままのそれを、半ば投げ渡した。

「っと…こいつは…あー」
いぶかしげに受け取ったそれを開き、しまったという顔をする。
兄夫婦が、先祖の墓参りに行った際に墓前においてあった盃である。
漆の朱塗りで浅広、女性が好みそうな形のそれ。置いてあった墓は本家
つまり、うちの人間くらいしか墓参りに行かないはずなのに、なぜかあった
先客の痕跡である。

「別に夫婦の酌をするななんて野暮ったいこと言わないけど
片づけはちゃんとして下さいって兄さんが。」
義姉さん不審がってたよ、と告げつつ対面に座って、私は課題を広げる。
「しっかし、行ったんだねぇ、なんだか意外~。」
「ん、まあ。ちっとばっかし色々あってな。ちょいと昔馴染みと」
「サシでなかったのがさらに意外…て、昔馴染み?!」

つい声をあげてしまい、そう多くもないが視線が集まる、咳払い一つで振り払う。

「…んまあ、大じぃさまがこの場にいるくらいだし、いてもおかしくはない、か。」
「まあな。」
いつの間にか読書を再開しつつ、そう答える大じぃ。
何とはなしに腹がたったのでぼそっとこういってやった。

「友達少なそうなのに。」
(拳が振り下ろされる風切り音)
「いったい?!」

にゃろう、よりによて鱗のところでたたきよった。


【山嵐と鬼天竺鼠と桜子と鳥】神取研の修羅場模様、または世間は狭いよ

カピバラの別名ごつすぎるけどやっぱりこのまま。日付一応振ってるけど矛盾が出ない程度な時季、のはず…

これはとあるライセンサーたちの日常の切れ端である。

■2059/7/19 AM11:00 御曹司マンション4002号室■

「Iは、頑張るのです…!」
任務による自身の致命傷的な破損から色々とあり
貯金を一つ作ることを目指し始めた桜壱。
日々の節約もさることながら、隙間でできる仕事はないか、と
こっそり繁華な場所で配られている無料の求人ビラに目を通す様になった。

「これは…。」
今日も情報収集にいそしんでいると、気になるフレーズを見つけた。

『飲食サービス勤務(臨時):ライセンサー1名
夜間帯のため、警備上の問題からライセンサーの方を募集いたします。
―みなみのうお座亭―』

SALFへの依頼コードも振ってあるまっとうな求人らしい。
(たまに隠語で書かれた、まっとうでない『求人』もあるらしい)
場所を見ると、某大学前駅の洋食屋で、駅名になっている大学と
付属施設の関係者をあてにして、深夜まで営業しているようだ。

交通費も支給、業務内容は夜間の調理補助とフロア作業とある。
メニューも一般的で、個人経営店舗のため臨時募集でも先方の用は達成するのだろう。
たった1日ながら急ぎらしい。

桜壱は依頼コードを端末に入力し、SALFの窓口部署に問い合わせをした。


■2059/7/21 PM15:28 某大学 異郷文化学研究室 ゼミ室■

「……げぇ。」
「なんすか教授。その見た目でガマガエルみたいな声出さないでくださいよ。」
「感想ひどくね?」

ここは異郷文化研究室――文化人類学に分類されるが
昨今の異世界間干渉があって発生した、新しい分野の研究を
行う研究室だ。

容赦ないコメントに突っ込みを入れて、冬呼は
目の前に表示された新着メールを二度、三度見て、盛大にため息をついた。

「だからなんすか、不穏だな…。」
指導教授のガチ目の消沈顔に、さすがにうろたえる旭。
残りの学部生3名および修士課程院生の2名も
何事かとツインテールに視線を向ける。

それを感じながら、冬呼が重々しく口を開く。

「……次の校内発表、遠野のご隠居来るぞ。一般聴講」
次の校内発表というのはこの年度の中間報告会を指し
学位評価に相当なウェイトを占めるものだ
そこの遠野のご隠居――前線は引退したが、いまだ影響力のある
この研究室の前指導教授が聴講にくるという報が来たのだ

その一言がでてから研究室の面々から小さく
しかし確実に悲鳴が上がった

ある学生は目を見開いて驚き、院生は黙って天を仰いだ

「おじいちゃん暇なの?」
疲労気味の目をさらに虚ろにして旭もこぼした

「皆の衆、作戦会議をしよう!」
空気を切り替えるように冬呼は両手を打ち、研究生全員に号令する
その声に研究生たちはゼミ室の中央長テーブルへ椅子ごと来るなり
椅子を座り変えるなりした

「ではいつも通り、反論突っ込み疑問があれば、どんどん上げてくれ」
前置きをし、冬呼が所感を述べる

「全員、先週のミーティングチェックで校内分としては十二分の構成、
内容については学会の秋季総会までに卒論、修論の最低限まで
磨きこめる位置にいると思う。
…しかし、我らが大師匠は手厳しいからな
最低1週分は進捗を詰めにゃ、立ち向かうには間に合わんと思う」

ここまでで特に反論はない

「そこで本日までの考察と資料の確認をしたうえで
個々に具体的な指示指導を出して巻いていきたい」

「っつても教授、今日の予定みると夕方から教職の学部会入ってません?」
旭がすかさず手を挙げた。

「そこなんだ…申し訳ないが、途中で離席させてもらわないといけない。
再開時間からみるに、終わりがかなり遅くなる見込みだ。
…計画徹夜組以外にも遅くまで残ってもらう必要があるんだが…」

冬呼は特に旭以外(元々申請組)の学部生3名を見た

「バイトシフト大丈夫です。帰りに駅までだけお願いできれば。」
「右におなじっす。」
「授業課題あるので、むしろ徹夜待機して明日の朝ここでかかってもいいなら!」

三人の返答を聞きほっとした顔を浮かべて冬呼は言う。
「ありがとう。じゃあさっそく準備を!
夜間在室とシャワールーム利用の追加申請は出すから…」
冬呼は各種申請と会議室スケジュールを机上に映して確認した。

「インタビューの予定はなし、では皆で第2会議室のセットよろしく!
天辰と篠原、とりまとめを」
「わっかりましたー」「了解です」
院生の二人に特に指示を出す。

各々の返事があり研究生たちがバタバタとゼミ室を出ようとしたところ
冬呼ははっとして

「雲井!ライセンスカード」
「っとと。はいはい」
「すまん」
冬呼がリーダーを差し出すと、駆け足ぎみで戻ってきた旭がライセンスカードを
押し付け、そのままほかの研究生と合流し準備に向かった

某大学では何かしらの形で籍を置くライセンサーは
いつまで敷地内にいるか別途申請が必要になるのだ

(万一があった場合、大学の警備から本部に緊急通報出してもらえるから
便利ではあるけど…所属者使うって魂胆がなぁ)
追加申請を送付し、冬呼も会議室に向かった


「それじゃ、さっそくだけど一人ずつ現状状態で発表をやってもらう。
資料は途中でも構わない。それで内容と方向性を確認して調整をしよう」


■2059/7/21 PM 16:00 某大学前駅 ―みなみのうお座亭―■

(いわゆる大正モダンや、昭和レトロというやつでしょうか…)
桜壱はきょろきょろと店内を眺め、今日の雇用主である
店主の電話対応終わりをまっていた。

店内はノスタルジックな内装にどことなく天文台を
イメージするようなアンティークがならび
天井に星空がペイントがされたおしゃれな洋食屋だった。

それだけでいえば洒落っ気が強く女性客以外が利用しにくそうなものだが
店の中に飾られた数多くの写真が、打って変わって親しみやすさを醸し出していた
某大学の利用者が多いのか学生や関係者の写真が数多くあり
眺めるだけでも店の歩みを感じ取れる風景だ

しげしげと桜壱が眺めていると、ある一枚の写真に目が留まった
大学構内だろうか?店ではないどこかにあるピアノの様で、奏者が――

「お待たせてすみませんね、桜壱さん。退屈だったでしょう」
「素敵なお店ですので見てるだけでも楽しかったです!」
「ありがとう、それは良かった」
写真をよく眺める前に、この店の店主が電話から戻ってきた。


「いつもお願いしている方が長期任務に入ってしまってね。
今回は本当に助かりました」
「Iがお役に立てるなら嬉しいです!」
ふんす、と気合を入れる桜壱。店主はほほえましく見ていた

「万が一の時の対応もありますから、武器はこちらにおいてもらって…
募集にも書きましたが、調理補助と接客をお願いします」
「はい!」
「今日の曜日だったら…ぽつぽつ夕方までお客さんがいらっしゃいますね。
それと、今日はかなり遅くに団体さんの予約が入っていて、それでおしまいです。」
「遅くに、ですか?」
首をかしげる桜壱。渡された予定表を見ると一般的な飲食店では
お目にかからない時間帯に「異文研」の文字がある

「あそこの大学の研究室でね、今日は追い込みやるからって予約がきまして」
窓の外、駅名の由来の大学の敷地を指さして店主は言った。
「そうなんですか。」片方の瞳に「!」を浮かべ桜壱は驚いた。
なかなかに熱心な研究室なのだろう。

「では半日ですがよろしくお願いしますね。」
「はい!」

桜壱の記念すべき貯蓄計画の第一歩が始まった。


■2059/7/21 PM21:40 某大学 9号棟3階第2会議室■

「皆の衆おつかれさん!これでどうにかできるところまでは
詰められたと思う。あとは各々のペースで仕上げてくれ!」
「「「「「「ういーす……」」」」」」

声を張るものの、疲れが見える様子の冬呼に
更に疲労困憊の研究生たちが言葉を返す。

無理もないなと苦笑いし、時計をみてさらに冬呼は続ける。
「帰宅組送るついでにみなみのうお座亭行こう!奢る!」
「「「「「「やったー!」」」」」」
その言葉に研究生たちが息を吹き返した。
人の金で食う飯はうまい。

「あ、その前にいいっすか」
旭が指をそろえてジェスチャーする
一服したいらしい

「構わんよ。そのまま出た方がいいから『忘れ物』はないように」
「へーい」
その言葉に雲居は鞄からブックバンドがかかった
物々しい本――これでもEXISだ――とタバコ一式を抱え喫煙組と
先に外に出た。

冬呼も、やに補給をしない組と共に荷支度をし
十字槍を担いで外に出る。万一があるため
夜間移動にはライセンスと『もしもの時の手段』は欠かせない


「異文研、うお座で飯してきます。2名そのまま帰宅で5名夜間です」
「了解、根詰めるねぇ冬呼ちゃん」
「次の発表、師匠くるんで…」
出る前に警備員詰め所に声をかけ、いつものように駅に向かった。


■2059/7/21 PM 22:00 某大学前駅周辺⇒―みなみのうお座亭―■

夜遅くながら、そこそこにぎわう駅前
たわいのない話をしながら店に向かう異郷文化研究室の面々
店の前に差し掛かったとき冬呼は少々驚き、旭のとなりに
駆け寄ると肩を叩いてそれを指差した

「雲井くんや、あの杖すごく見覚えあるんだか。私は幻覚でもみてるのか?」
「杖?ここ入ってる人って確か剣使って……まじっすね」

良く利用しているため、この時間帯にライセンサーの
フロアスタッフが居るのを知る二人。彼の愛用する長剣でなく
違うところで見かけた杖が、武器ストックに置いてあるのを見て
首をひねる

しかし、そんな二人の疑問を知る由もない他の研究生達が
ウキウキで店内に入っていった

「いらっしゃいませ!ご予約の方ですか!」
「桜壱(ちゃん)(さん)?!」
「はわ!」

出迎えた声に異口同音に師弟は驚いた
ここではない、もうひとつの所属先で出会うはずのヴァルキュリアがそこにいたからだ

「…エプロンにあうね?」
「ありがとうございます!」
「いやいや、そこいくのおかしいでしょ?」

師匠の方が驚きすぎて、欲望に忠実な感想を口走り
照れる桜壱をまえに旭が冬呼に突っ込みをいれた

ひとまずは、と異文研の面々が席に着き
ライセンサー二人は桜壱から経緯を聞いた
「ははぁ、臨時バイトか!…てっきりおやっさんがやばい仕事に手出、いったあい!」
「あっはっは、冬呼ちゃん、言っていいことと悪いことがあるだろう?」
「ずみ゛ま゛ぜん゛……」
店主から笑顔のままげんこつが降ってきた
ここは某大学関係者なら高確率でお世話になる洋食屋のため
夜半まで熱心に在学していた卒業生ならば、店主とは顔見知りだ。冬呼も例外ではなかった

旭は教授がショートコントをしている間に
クエスチョンマークを飛ばしまくるほか研究生へ
桜壱のことと簡単に紹介した

「この子、化野さんとこのヴァルキュリアさん。
ほら、去年からたまにサポートしてくれてるOB」
ああ、顔厳ついけどめっちゃいい人な先輩、などと天辰あたりがつぶやく
ほかの研究室メンバーも、合点がいったようだ

「それにしても、ここで桜壱さんにあうとは」
ショートコントから復帰し、冬呼が水を向ける
「Iもびっくりしました!先生たちの通ってた学校ってここだったのですね」
「そうそう…積る話はあれど。まずは、その勤務に貢献しとこう」研究生に向き直る
「というわけで好きなもん頼みなさい」
わいわいと研究生たちが注文を選んでいく

「かしこまりました!」
注文をとりきると桜壱は元気に厨房へかけ、店主に伝えた

「桜壱さん、ここの研究室の方々で、今日はおしまいですし、配膳までで上がって構いませんよ。
神取教授に聞きたいことがあるんでしょう?」
「はい、ありがとうございます…!」
最後の一仕事に、気合いをいれた

料理を待っている間、異文研メンバーにかわいらしいスタッフとの
なれそめを話すことになった旭と冬呼

「紹介は私が先にしてもらったけど、任務が一緒になったのは雲井が先だよな、なんだっけね?」
「……えーと、幼女?になってました。一緒に」
「「「「「はい?」」」」」
研究室メンバーには訳が分からないだろう
大丈夫、ライセンサーでも任務人員の募集要項見ないと訳が分からない

「とんちき系任務か、よりによって」
顔を手で押さえながらも残念ながらまれにあると冬呼が解説する
そんなSALFあるあるな話をしているところに注文が届いた

「お料理ができました!」
配膳カートを押して桜壱が厨房から出てきた

「ありがとう。ごめんなさいね、こんな時間に人数多くて」
「いえ!Iの仕事ですから」
桜壱が注文を確認しながら各々に配膳する
定番ながらこの店の評判を支える料理たちが並んだ

いただきます、と手を合せ各々食事をはじめた

「あー…うめぇ」「かろりーがおいしい」
異文研の一行が語彙力を下げているころ
桜壱はカートを戻すと店主に挨拶をし
帰りの支度まですますと、冬呼の隣まできた

「冬呼教授、お食事中ごめんなさい。Iに教えてほしいことがあるのです…」
「おや、ながらでいいなら構わないけど…まあ座って」

手は止まらないものの研究生たちもなんだなんだと見る
ボックス席にゆとりがあったため、みんなで少しずつ詰めて桜壱を座らせた

「このお店、お店もそうですが、大学の写真もたくさんあると聞きました。
それで、あれなのですが…あそこに写っているのは、もしかして先生でしょうか?」
壁のとある写真を指差す。
そこには妙に緊張した面持ちでグランドピアノを奏でている青年の姿があった
言われればなるほど、先生――鳥太郎の面影がある
「おお?どれどれ……うわ、懐かしい写真。
よく化野さんってわかったねえ。まだしわとかないのに」

失礼な物言いまでしつつ冬呼は肯定する
同じ写真を眺めていた旭がハンバーグの最後のひとかけを
飲み込んだ後、ふと疑問を口にする
「あれ、化野さんってピアノ引いてるとき、こんな顔します?」
音色だけではなく、奏者でさえやたら賑やかだったよなと
大学で聞いたソレを思い出す旭

「これ、撮り方が問題でね……在学中に私の弟が開発してた
小型の遠隔装置で撮影したのよ。操作してたのがこのお店からでね」
「ええ?ピアノ置いてあるの2号館ラウンジっすよね、逆側とかスゲー距離っすね」

この店からちょうど逆の対角上にあり
現在こそ文系の共用棟となっている2号館だが
大学設立当初は音楽科の棟だったため引っ越し損ねたピアノが
ラウンジに置いてあるのだ

「そうそう、だからいつ信号が切れて装置が落ちるか
わからなかったから、すっごく緊張しちゃって。
表情固くなってるのさ。アイツにしたらある意味貴重な写真だね」
「「へぇー」」

くすんだ黄金と桜色の頭が仲良く写真を眺めなおす

「色々と、このお店でも学校でもやったりやらかしたり思い出話はあるんだけど…
夜も更けてるし別の機会があればお話しようかね」
「いいんですか!」
片目をぱっと咲かせて桜壱は喜んだ
「あんま変なこと言うと化野さんに怒られません?」
「大丈夫、変なことしかしてない」
「さいで……。」
するところではない教師のどや顔に、がっくりとする教え子

会計もすまし、ご馳走様でしたと異文研の面々が
店から出ていく。

「じゃ、桜壱さんも気を付けて。貯蓄、がんばってね。」
「またなー。」
「はい!さようならです!」


こんな夜もあるかもしれない、とあるライセンサーたちの
今と昔のちょっとした話

―了―



【山嵐と鬼天竺鼠と片割と鳥】公立 某大学案内

グロリアスドライブ、うちの子よその子にかかわる大学設定メモ

公立 某大学

理系も文系も総合的に学部があってかつ
3拠点(本学棟と理系学科研究施設・附属病院)くらいの構成。

本学棟設備と緑量(?)イメージは
首都大学東京 南大沢キャンパス+慶応義塾大学 湘南藤沢キャンパス÷2なので
モデル校の学校案内みてください(

大学の名前の駅があって、駅前繁華街の一番学校よりのブロックに
『みなみのうお座亭』という洋食屋がある

本学棟

9号棟
異郷文化研究室が入ってる社会学科系棟

9号棟3階第2会議室
異郷文化研究室の名義で絶賛長期レンタル中の会議室
大体どっかの研究室が半年~1年期間で借りて使ってるようなところ

2号棟
問題の()ラウンジがある文系共通講義棟
また、専攻科問わずの教職・学芸員系の講義もここ

3号棟
2号棟と連絡通路でつながってる教育系学科の棟


異郷文化研究室について

分野としては50年ギリギリ経過してない新ジャンル

以下大学の案内パンフレットより抜粋(

『異郷文化学研究室
 この研究室では昨今の異世界から来訪した放浪者をはじめ
他世界における人類、または霊長相当生物が構成する社会と
私たちの世界の現行社会を比較し、その様相を系統立てる
研究を行っています』


【山嵐】神取教授の気晴らしごはん

ロールプレーでやった飯テロの記録
柳川さんが和・中華担当なので洋食というだいぶメタな事情

【テロ済み品】
・クラシカルパウンド 甘味
中世のパウンドケーキの再現レシピ…だったもの
ベースレシピは実践考古学で料理・食文化を研究している友人から伝授された
マジでパウンド(450g)の材料と、本来ならレーズン等保存のきく加工がされた
果物を敷いて200度で焼き、ひっくり返して完成という代物
(参考レシピ出典:中世ヨーロッパのレシピ/コストマリー事務局)
そこを美味くしたいと欲をかいた冬呼が、レーズンをベリーのコンポートに差し替えた
誰のとは言わないがたまに演奏代に使われいる

・ロメインレタスとえびのマヨ炒め パスタ添え
ホントは炒め物だけでも十分ながらついでに炭水化物とりたい、でパスタを突っ込んだ
冬呼さん大きく口を開けるのが苦手なので細い長パスタかペンネで作られる

・桃風味のフローズンヨーグルト
安売りしてた桃ジャム突っ込んで練り練りして冷やしてを繰り返したブツ
混ぜるとき謎の歌を歌う冬呼さんがいる、聞かれたら恥ずか死をする

・癖少な目お手製ガラムマサラ(カレーシナリオ持ち込み品)
カレーみんなで作りに行った時の持ち込み食材
コクもでるけど辛みもなかなか。
あやめちゃんには別取りで調整したのはマスターさんのアドリブでしたが
ナイスでした。

【その他テロネタ】
・洋ナシのワインシロップタルト(また弾かせる気である)
・揚げやさい盛り合わせ(誰かと呑みたい)
・オリオスープ(寒くなってきたらか、寒い場所で)
・お野菜もたっぷりミートローフ(お祝い事に一本焼くよ)


【蛇】果おじいちゃんのお楽しみごはん

果さんの飯テロ歴とか予定品

【テロ済み】
・大盛天ぷら
通りかかりのイケメンが犠牲になりました(
晩酌用の春の山の恵み盛り合わせ
こごみやら桜まで揚げた代物
お塩振ってどうぞ

【テロ中】
・茹でトウモロコシ
大家さん一族の現当主(実は神取さんちで、冬呼さんの年の離れた方の弟)が
友達から貰いものしたらしくそのまま横に受け流ししてきた
段ボールにパンパンに入っているブランドもの、のB級品
ある意味ほとんど市場に出回らない貴重品

【テロ予定】
・水菓子(夏の果物)よせゼリー
・白玉ぜんざい
・ところてん
・旬物炊き込みご飯
・寄せ鍋


【山嵐】【設定レギュレーション】某大学シラバス:異郷文化学基礎/異郷文化学概論

グロリアスドライブにおいて某大学学生または講義受講生として設定とか使っていただける方向けの簡易レギュレーション。コミュニティ設定として使いました。

グロリアスドライブにおいて某大学学生または講義受講生という形で
神取教授の教え子になっていただける方向けのレギュレーションです
利用の場合、神取のコミュニティ(異郷文化学研究室)のスレッド書き込み又は
キャラクターメールでご連絡ください

あなたのPCさんの行動起点のひとつにしていただければ幸いです

1:学部向け講義
(文系理系問わず 自由選択の一般教養枠)
異郷文化学基礎(前期Ⅰ/後期Ⅱ)
半期1コマ授業
大学1~4年生および
外部からの講義受講生対象の授業です。
文化人類学と異世界研究の基礎について学びます
こちらの受講生としていただくと公立大学の施設利用と
神取教授と週一顔合わせ程度の設定を使うことができるかと。
また問題なければ神取から『受講生』としてフォローさせていただきます

以下(なんちゃって)シラバス

授業課題:異郷文化学基礎
指導教授:神取冬呼
授業の目的:文化人類学の基本手法と異世界との比較を行う際の注意点を認識する。
また、比較研究およびフィールドワーク手法の基本知識を身に着ける。
到達目標:自世界文化および異世界文化について多角的に比較を行うとともに
基礎調査を実施できるようにする。

2:大学院むけ講義
(文理問わず 必修選択授業:特定の種類から決まった数を選ぶ授業)
異郷文化学概論(前期Ⅰ/後期Ⅱ)
半期2コマ授業
某大学か他大所属の大学院生(修士)対象の授業です。
異郷文化学基礎よりは深く学びます。
大学院生向け基礎なので異郷文化学研究室所属の院生には必須授業となります
こちらはあまり設定としては使われないかなと思いつつ。
神取から『受講生』フォローがとんでくるのは基礎とかわりありません


寝る子を起こすべからず

冬呼がアウィン君みて悶絶してるだけの話。べたべたシチュですけど俺は煎じてねぇの精神。貴重なイチャイチャ方向のうちよそ話…!

今日も居間にタイピングの音が走る。

家ではなるべく仕事はしないように変えたけれど
連絡事だけは決まった時間に確認している。
特に今回は、待ちわびた案件が1つ進展があったもので
こうしてメールを打ち込む。

(『疎開資料』でかの地域の司法資料が再発見されました。
損傷状態が、以前より進んでいるためT大または文書館の修復チームへの
応援依頼をすることが望ましいです…と)

送信をクリックして一息。ふと正面に声を掛けようと顔を上げると
それはそれは綺麗な、アウィンさんの寝顔があった。

「おわー。」

畳スペースに円卓を出し、軽度作業のちに茶でもしようと
声をかけた週末ゆえ、彼が我が家にいるわけで。
(そうでもしないとお互い休まないんだなぁこれが。)

こうして二人で我が家にいるのは珍しいことでもないけど
このパターンは珍しく、小声で驚いた。

「遅くまで、勉強頑張ってるもんねぇ…今日は暖かいし。」

音をたてぬようにPCを閉じ、こそこそと隣へ移動して
じっくり顔なんぞを見てみる。

「改めて眺めると顔がいい。」

と、あほな感想を抱いたが、街中を歩けばすれ違うお嬢さん方の
視線をかっさらうほどの美男子なので語彙力がなくなるのは
勘弁願いたい。

「綺麗なものが注視を受けるのは仕方ないけど。
なんだか腹も立つのだよなぁ…私のなのに。」

やたらとつるすべな頬をつん、とつつき、溜息。
こんなセリフ起きてる間絶対に言えない。
どうにも沢山、沢山の言葉や気持ちを彼からもらっているし
やきもちも素直に焼いてだいぶ可愛らしい面も見せてくれて
嬉しくないわけは、ないのだ。無いのだけど。

「とことん気恥ずかしい。」

ちょっとの酒気があれば割とその『恥ずかしい』も踏み越えて
…いや、踏み越えすぎて毎回酔いが抜けた後一回死んでる。

「なんか、もうちょっと、余裕が欲しいなぁ…。」

そんな状態なので、素面で、自分から、だとこういうタイミングで隠れ忍んで
キスするくらいが、まだまだ精一杯…と彼の頬に顔を寄せたのだけど
次の瞬間に頭に手を添えられていて、柔らかな感触が唇に触れ
驚く間に、くるりと視界が回った。

「ずいぶんと熱心に見ていたな?」
「…オハヨウゴザイマス、えっと…どこから?」
「顔がいい、あたりか。」
「だいぶ早く起きてたね…?」

ふくれっ面でそういうと、それはそれは楽しそうな彼の顔と天井が見えた。

「あそこからどういう言葉が出てくるか、聞いてみたくてな。」
「おにょれ。」

すっかり開かれた群青色を軽く睨んでみたものの
結局二人して笑ってしまった。

そっと、胸元に降りてくる指先をみて
少し夕飯は手抜きにしようと思った。