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Pfizerのプレスリリースから見えてきた表と裏

皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
今回の記事では、2020年11月19日に発表されたPfizerのワクチンに関するプレスリリースの文面から読み取れること、そして今後の予想とさらにぼくの妄想についても少し発信したいと思います。
最後まで読んでいただけるとうれしいです。

Pfizerのプレスリリースのおさらい

Pfizerからのプレスリリースでは、前回と比べてより詳細に情報が開示されており、ネガティブなものが1つもない、ピカピカの素晴らしい発表でした。本当にここまできれいなデータがでることは誰も想像していなかったと思います。
以下、まとめです。
1. COVID-19の予防効果は95%:BNT162b2では8例、プラセボで162例が発症した。(最初の投与開始28日以降から発症をカウント)
2. 有効性は年齢、性別、人種、民族間で一貫していた:65歳以上の高齢者でも94%の有効性
3. 安全性はFDAが定めたEUAの基準を達成
4. 43,000人の参加者のうち、Data Monitoring Committeeの調査により、ワクチンの忍容性は良好で重篤な安全性の懸念はない。グレード3の有害事象としては、疲労3.8%、頭痛2.0%のみ。高齢者では、より有害事象は少ない傾向。
5. 数日以内にEUAの申請をFDAに提出し、世界中の規制当局とデータを共有する
6. 2020年内には5,000万dose、2021年には13億doseの共有を見込んでいる
7. ファイザーは、世界中にワクチンを流通させるための豊富な経験、専門知識、既存のコールドチェーン・インフラに自信がある
8. (COVD-19陽性のカウントは投与28日目からはじめているものの)最初の投与直後からCOVID-19の予防効果が示唆された
9. アメリカ、ドイツ、トルコ、南アフリカ、ブラジル、アルゼンチンの150の施設で実施された
10. ワクチンの有効性、安全性を検証するために、この試験は2年間継続される

いかがでしょうか。
ツッコミどころのないデータですね。さらに投与初期からワクチンの有効性が認められたという点がどこまで信頼性のあるデータかわかりませんが、実用性を考えるととても喜ばしいところかと思います。

Pfizer/BioNTechワクチンのEUA承認は確実か

FDAの承認には、ざっくり言うと、有効性、安全性、そして製造について評価がされます。上記の中で、確実ではないのは製造です。製造はGMP(Good Manufacturing Practice)という基準を満たしているかということですが、ワクチンを製造しているPfizerがそこはしっかりやっているということは間違いないと考えています。
これらのデータを考えると、ぼくは、ほぼ確実にPfizer/BioNTechのワクチンはEUAを取得し、年内に供給を開始するだろうと考えています。

Pfizer/BionTEchとModernaでのワクチンの比較論争

このPfizerのプレスリリース後、ニュースやSNSでModernaと比べてどちらが良い?というものが出てきました。まとめが下図になります。

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このデータを見て、安全性はPfizerの方が高そうだ!Moderna有害事象多いぞ、危険だ、と考えるかもしれません。
しかし、製薬業界では、このような異なった試験について比較することは強く禁止されており、MR(営業)の資材作成のルールにもきちんと記載されています。

では、なぜ異なった試験を比較してはいけないのでしょうか。
その理由としては、様々なバイアスがあるからです。
今回の例ですと、Pfizer/BioNTechはグローバル試験ですが、Modernaの試験はNIH主導のため、アメリカ国内のみの試験です。
従って、選択バイアス(母集団が異なる、文化・習慣がPfizer/BioNTechの試験で多様)やレポーティングバイアス(同じ副作用があっても、過少申告のケースがある)などが考えられます。
従って、これらの2つの試験について比較することは、医学的には無意味です。
従って、厳密に2つの試験を比較するためには、両者を比較する試験を実施する必要があります。(絶対やらないと思いますが…)
有害事象のレポートという観点では、同じような試験を日本と中国で実施すると、中国の有害事象の発現件数が圧倒的に少ないということは良く起こります。まさに治験の慣れや習慣の違いから出てくるレポーティングバイアスと言えるでしょう。
もちろん、今後、両ワクチンが上市された際には、やっぱりPfizer/BioNTechのワクチンの方が有害事象が少ない!となる可能性はありますが、ぼくが言いたいことは現時点では比較できないということです。

前回のnoteにも書きましたが、いずれにせよ、どちらのワクチンも承認された際にはしばらくは製造された分だけ使用されるます。有害事象については、重篤な有害事象があるかないか、という観点がワクチンの安全性としては重要だと考えています。

Pfizerのプレスリリースから見えてきた裏と妄想

ぼくがこのプレスリリースを知ったときにまず感じたのは、タイミングがおかしいでしょ!ということです。
この試験の開始を見てみると、4月29日です。そこから6カ月強が過ぎ、11月8日に94例の中間解析が発表されました。
次に170例の事前に設定した感染者数まで到達したプレスリリースが11月18日(10日後)です。
もし、170例までの感染が同じペースで起こっていと過程すると(COVID-19の流行は後半増えているので、ややざっくりしすぎた仮定ですが…)、92例までは約3.5カ月で到達することになり、8月中旬にデータが揃っていたことになります。
つまり、大統領選挙の投票日よりもずっと前から、中間解析が実施されている可能性が高いということです。
では、なぜ中間解析が公表されなかったのでしょうか。

ここからは完全な妄想です。
ぼくは、製薬業界が政治的な問題に関わりたくなかったという可能性と、もしかすると、製薬業界自体が民主党側についたのではないか、という可能性についてもあり得なくはないと考えました。
トランプさんの政策は薬価を下げる、そしてバイデンさんはMedicareに薬価交渉をやりやすくするといういずれにおいても製薬会社にとってはネガティブな政策でした。
ただし、通常は共和党側に多くの献金をしている製薬会社が民主党にお同じぐらい献金をしていた事実を考えると、業界として民主党の方が良いのでは、と考え始めたのかもしれません。
この辺りの細かなことはわからないのですが、PfizerのCEOであるAlbert Bourlaには、選挙の行方を選ぶ権利さえあったのではないか、と邪推してしまいました。Pfizer恐るべし。
これが、ぼくがプレスリリースを読んで、Pfizerすげー!と思ったことでした。
それでは、今回の記事はここまでにしたいと思います。

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それでは、また次回の記事に乞うご期待!


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