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アップデートできませんでした

iPhone12を買って4年と少し。充電の持ちの悪さや大きいiPhoneにあこがれもありつつ、高いしな〜とずるずる使い続けて来た。電池交換してあと数年使おうかと思っていた矢先、画面に謎の緑色の点が入った。中の基盤までキズが入ってしまったのだ。電源を落とすと消えるが、画面をオンにすると着く。これは確実にキズ。凹んだ。あと2年使おうと思ってたのに。

私は通知を溜めるのがとてつもなく嫌いなので、アップデートもすぐにする。先日もアップデートしなよ〜とiPhoneに教えてもらった矢先、『ストレージがいっぱいでアップデートできませんでした』。写真やアプリでiPhone自体がぱんぱんらしく、アップデートする余裕がないとのこと。アップデートにそんなにストレージが必要なのかいと言いたくなりつつ、不要な動画やアプリを削除する。

体力がなくて新しいことを取り入れられなくなる。


4月からの人事異動で、部署異動が決定した。夏からずっとずっと、考えていたことだった。3年間、少しずつ形を変えつつも同じような業務をしていたが、これからは全く違う。でもそれも自分で選んだ。

これが正解だったのか、異動希望を出してからも発表されてかるもずっと考えている。まだ残る道はあったんじゃないか。私がもう少し無理すれば続けられたんじゃないか。育休から帰ってくる先輩が戻ってくるまで待ってから決めればよかったんじゃないか。慣れたらもう少し要領良くできたんじゃないか。そんなことを考えては、この数か月の自分を回顧し、絶対に無理だったなと思う。思い込んでいるのかもしれない。

この2か月くらい、私はほぼ使い物にならなかった。レスポンスは相変わらず早かったけれど来たボールを打ち返すだけだったし、頭は全く働いていなかった。難しいメールが来ては考えることができずだれかの助言をそのまま鵜呑みにしてしまう。少なからず誰かに仕事をお願いしている立場なのに、何もできなかった。1月の後半から慢性的なめまいが続き、常に頭を後ろにガっと引っ張られるような感覚がしていた。気を抜くと涙が出て、後輩の前では泣かないように必死だった。見かねた後輩が、私のやるはずだった仕事をいくつも奪ってくれる。「しんどい時に鈴木さんに助けてもらったので!」と話す後輩は、偶然にも春からの部署も一緒だ。これまでのおせっかいでよかったなと思う。ヘロヘロとデスクに座り込む。この数週間、私の社内チャットはたくさんの謝罪と感謝であふれていた。

完全にキャパオーバー。ストレージがいっぱいなんてものではない。アップデートもできなかった。

部署異動が決まってから、何人かに声をかけてもらった。賞賛や同情、今後のことなどだ。残念だね、もう少し一緒にいたかったと話す人のうち何人が、本音で話しているのだろう。疑いたくもないようなことを考えてしまうくらい、私はもしかしたら限界だったのかもしれない。

異動することにしたのは私の意志だが、今後のことも気になる。働いている人ややっていることがいやになって去るわけでもなく、単純に自分を守るためだった。いつものようにあの人のことが心配になって〜と管理職に聞いてみると、「あそこは大変だから、鈴木さんは残された時間を楽しく過ごしてください」と返される。そうか。私はすでに、当事者ではなくなってきているのか。去ると決めたのは自分なのに、急に除け者にされる感覚がする。そして、どこまでもわがままで自分のことしか考えてない自分自身にも嫌になる。

どうしたらよかったのか、どうすればできたのか考えては、これしか正解はなかったのだと言い聞かせる。これをあと6週続けたら、新しい春が来る。それまでは、からだが悲鳴をあげてもやりきるだけだ。せめて、残してしまう人の負担を軽くしなければ。

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