浅草ロック座 2023年2月公演「FEMME FATALE 1st season」

2020年2月ぶりの「FEMME FATALE」。その前は2017年だったそう(私は行ってない)。3年ぶりの再演で前回公演と同じ構成・演出の景も出てくるのかなと思っていたのですが、今回は以前の別公演からのモチーフ・曲の流用がいろいろありました。



1景は熊野あゆさん。映画化された某アメコミヴィランがモチーフ。宇野莉緒さんと松本菜奈実さんがサブで印象的な小道具を持ちながら登場。熊野さんは革っぽいタイトなパンツと上着でコミックス的な奇抜な衣装をうまくコーディネートしている印象。松本さんの持ってる小道具、作り物じゃないぶん殺意が高ぇ……。
ベッド着は過去にも浅草で使われてた記憶のあるカラフルなファーを使用(「百物語」とかだっけ)。網っぽいパンティは、さらにファスナー前開きにもなっていてドエロい。ポーズ切りのときの細かな手の動きがカッコいい(もちろん中指も立ててる)。熊野さんのキュートさとちょこっとバイオレントな爽快感のある景でした。

2景は矢沢ようこさん。ティーカップ、薔薇、扇子……モチーフの提示はいっぱいあって、何だか普段の2景の抽象さじゃない……。共感できるかアレですが、”6景みたいな2景だな”という感想を持ったりしています。モチーフははっきりしていて、これもざっくり言えばアメコミ、か? なお化け一家の婦人役。長女なら最近新作ドラマが配信されていて話題ですが、今回はお母さんなのか。
スパンコールとレースを組み合わせた綺麗な黒ドレスが印象的な群舞から、2曲めで着替えに。ゆったりと客前で着替えてもサマになる、間がもつのがさすが矢沢さんだ。ベッドでは小道具に手。そう、”手”です。もちろん原作に出てくるものだけど、そんなこと知らなくてもこれはいい演出だなと思う。ストリップは私たち観客が”目で触る”ものだと常々思っているのですが、その触る視線を具現化するような手、よかったな。
ムードありありの選曲や演出で、ヘタに演じるとコメディ(原作はその通りコメディだけど)になりそうなところに迫真さが出るのも矢沢さんのチカラ。

3景……なぜコレ? どゆこと? 2景からのティム・バートンつながり? ってか今回の浅草ファムファタ、具象に寄ってないか? という何ともフシギな景。メインは西園寺瞳さん。瞳さんの浅草来演、前回の「祭音」③景(眼鏡+赤ジャージ)から”既存イメージをぶっ壊す”みたいな戦略でもあるのでしょうか。
群舞ではほぼ着ぐるみ状態で踊ってます。なので激しい動きはできないものの、ひとつひとつの振りのキレでわかってしまう技術の高さ。やっぱり被り物して踊るのは大変なようで、群舞終わりは肩で息してましたね。
ベッド着は黒ベースで無造作風にカラフルな端切れをつけた衣装。そこにタランチュラやらサソリやらがいっぱい。お盆の上ではあるものを食べるシーンがあったり、髪飾りのクモが光ったり、ストロボ演出があったり、それでいてちゃんとポーズも切るしでてんこ盛り。瞳さん堪能基本セットみたいな演目でした。
しかし、登場シーンもそんなにないディズニーヴィランズで、しかもおそらく男のキャラの景、いったいどの辺がFAMME FATALEだったのだろう……。
※ちなみに1曲目、タイトルをみるとわかるのですが、”アニメキャラ同士が架空のラップバトルをしてみたら”というコンセプトの面白い曲です(歌詞で登場シーンの秒数が少ないことを相手からイジられてたりする)。作っているのが22歳のYouTuber的な人で、他には「エドガーライトvsウェスアンダーソン」(映画監督同士のバトル)とかを作ってます。『政治的対話篇』の最新型みたいだ。

4景はバリデカリップとともに登場の赤西涼さん。マリリン・モンローですよね。ブロンド赤西さん、やっぱり似合うな〜。宮野ゆかなさん、矢沢ようこさんを加えた3人のショーガールと、彼女らに振り回される男性陣(=バックダンサー)。それぞれ魅力的でかわいい。
赤西さんは赤いドレスでの群舞から、さらに鮮やかな赤が印象的なホルターネックのドレスでベッドショーへ。群舞からベッドまで、ひたすら衣装がオシャレ。おなじみのにこやかな表情が魅力的だし、ポーズ切りに緩急がある。楽しい!
立ち上がりの4曲めに聞きおぼえがあったのですが、コレは2020年の「DREAM ON」④でほぼ同じ曲を使っていたとメモあり。景のテーマも似た感じだったと記憶しています。全体の雰囲気は浅草でも似た演目多めな気がしますが、そこはリップやパネルといった演出や、なにより赤西さんの演技力で新鮮味のある景に仕上がってます。

5景も21年「祭音 ZAION」④の再演で、メインは宮野ゆかなさん。浅草猫目怪盗集団の新作回。3曲めまで同じで、立ち上がりがシティハンのEDからOPに変わっているという構成。なるほど、4景と5景は過去の別公演の作品からファムファタ感のあるテーマをアダプトしてきているという解釈でいいのかな。
スレンダーなサブ陣(桃…西園寺 緑…熊野 黒…矢沢 橙…赤西)とグラマーな宮野さん(青)というメンバーでまたあの群舞が見られた。やっぱり盛り上がるなあ。
宮野さんはひとつひとつのポーズ切りが丁寧で、思いがこもっているように感じるんですよね。立ち上がりでは本舞台後方からのライトが虹色に染まってすごくキレイでした。

6景は宇野莉緒さんメインで西園寺瞳さんとともに登場。わかってんじゃねえか、最高のカップリングですね……。花かんむりに天使のような衣装、どこかの西洋庭園風の舞台美術。これがファムファタール? と一見すると思ったりする訳ですが、どうやら元ネタありつつ、抽象性も持たせつつの演目のようです。
当初無邪気に踊っていたふたりだけど、瞳さんと宇野さんとの間にすれ違いが生じていて、瞳さんから宇野さんへの一方通行の思いのようなものにも見えていて、という群舞。小鳥の死が凶兆だったのか、ベッドショーでは虚無なふたりが燭台を持ってお別れの儀式でもするかのように登場。最初「おっ百合か?」とワクワクしてしまったのだが、途中で瞳さんが去る。虚無の表情で宇野さんが服を脱ぎ、お盆へ。幼さゆえの無邪気さは罪だということだろうか? だとすればとてもキツい話なのだが、ファムファタでは珍しくラストに救いがありそうな余韻のある展開だった。
宇野さんはよどみなくポーズとポーズをつないでいくのが印象的。ムダな動きのない美しさとでもいうべきか。振りの構成のシンプルさが景全体の無邪気さともマッチしている。


7景は松本菜奈実さん。昨年の「祭音」⑦以来、4カ月ぶりの来演。演目は群舞部分が20年「STEPS ON BROADWAY」⑦の改変になっていて、ベッドショーからは別の曲、演出もオリジナルだったのではないかと思います。……うん、やっぱりこうして見ると部分的にも別公演からファムファタへの改変や流用がほかの公演より多いなと思う。
松本さんは久々でもやっぱり踊れるなあ。前回公演のときも「場数以上にうまくなっている」と書いてましたが、今回もそう思う。踊れるし、何より自分が踊れていることにちゃんと自信を持てているようにも見える。それが好循環になっているのかな。新人の踊り子さんのぎこちなさって緊張や不安が表情や振りから伝わってくるものだけど、松本さんからは全くそれを感じない。ストリップを続けていると出てくる筋肉のついた感じはまだないのだけれど、踊りの感性がいいのか振りは本当にキマってるんですよね。

フィナーレ始まりの曲は前回のファムファタと同じものだったけど、演出は少しずつ変わっていたような気がする。何とか新鮮味を出していこうとする努力なのだなあ、と感心したのですが、どうだったかな。
そして次回のファムファタ2ndは2/21〜3/14の21日間、変則公演とのこと。浅草ってここ数年は3月とか4月に設備点検だの何だので数日休館があったような。今回もその関連の変則なのでしょうか。

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