“ふしだらなのにスマート”な6景…… 浅草ロック座 2023年8月公演「PEACE LOVE ROCK」3rd season

今回は初来演が2名、次回公演「まつろわぬもの」も初来演がひとり(虹歩さんも2年連続で来演)ということで、浅草ロック座もこれまでローテされ重用されてきたトリ3名のうち2名が引退することを受けて、踊り子のラインナップを続々拡充させているのかなと感じました。

ということで1景。メインは早乙女らぶさん。これまでの1景の感じから、らぶさんの元気が炸裂する枠かな、と思っていたら、スーツの着こなしがパキッとカッコいい。親指を下に向けてもどことなく愛嬌があるのはらぶさんらしいところ。でもなぜだろう、スーツが決まっているからか、すべての所作がスタイリッシュだ。親指下げ👎すらもオシャレ。
ベッド着は全面ラメの長袖アウターがきれい。2曲目後半に前盆に出てきたときに予想通りのらぶさんらしい元気さが炸裂。しかし3曲目は打って変わって曲調に合わせて少し抑えめに。色っぽくゆっくりと脱衣していくのがいい。一瞬下着をくわえるの、めちゃエロいぞ。立ち上がりの曲もダウナーな盛り上がりじゃなく、お客さんと一体になりながら躍動感あるポーズ切り。コレコレ、コレがらぶさんですよ。移動盆で戻っていく途中の立ち姿もこれでもか! というほど見せてくれて、最高でした。本公演個人的MV景かもしれない。

2景は豊田愛菜さんの和装ソロ演目。まったく人選がいいぜ浅草。前回は昨年5〜6月の「Daydream」①景、その前が21年冬の「Re」⑤(シャーロックホームズ景)。今回も和装で新たな顔が見られました。手のメリハリというか、しなやかに動いて、ピタッと止まるのがきれい。あとは扇使いのうまさ、きれいさが光ります。
ベッド着は1stから通して赤い襦袢と腰巻。2景の話では前回も言ったかもですが、演者の背中の美しさが際立つ。ストリッパーらしい上腕のたくましさから、背中、そしてくびれへ至るラインがなんとも綺麗でした。
立ち上がりはゆったりとした曲に合わせて、ゆったり見せるポーズ切りに上手さがうかがえます。綺麗に整った脚の角度とか、スワンのときの三角形とか、製図されているかのような整然としたたたずまいに見とれてしまう。ゆったりだけど、時間は本当にいくつあっても足りない。

ここにALLIYさんで来るのか、とちょっと意外な3景。バックは武藤つぐみさんと五十嵐清華さん。そうか、今回公演は1景で踊り子全員出てこないのか。五十嵐さんはここで初群舞。ひたすら派手なALLIYさんと、謎のグラサンをかけながら無表情で踊るダンサーふたり。3rdともなるとこのシュールさにもすっかり慣れた。五十嵐さんはデビュー週とは思えない出来だと思う。荒ぶる茶目っ気を発揮するつぐみさんとのナイスコンビワーク。お客さんの中には”なんだこの無表情メガネは!?”と思った人もいるのかな。この人、実は押しも押されもせぬ浅草のトップスターなんですよ……。
ベッド着はやはり袖と靴、あとたぶん髪飾りが発光。靴のつま先の厚底部のキラキラは光に奥行きがあってきれいだった。ALLIYさんのベッドショーはまさに宇宙で浮遊しているかのような身軽さのポーズ切り。踊っているときに感じているであろう爽快感が見ているこっちにも感じられる、そんな最高の景でした。

4景は31年目のスタートを切った沙羅さんがメイン。今回公演はフィナーレが沙羅さんのソロで始まるところとか、途中で沙羅さんの後ろに若手の踊り子さんが付いて踊るシーンとか、ところどころに沙羅さんへのリスペクトが感じられる構成になっているのが好きだ。31年目のスタートといいつつ、結局は浅草3連投=通常の6連投ぶんのラストスパートをかけている状態だから、本人としてはただゴールまで脇目もふらず走り続けているだけなのかも。
バックダンサー陣との群舞はやっぱり緩急が見どころだなあと思います。表情はいつもの微笑ながら、ときおり(というか指鉄砲で観客を撃つとき)にとても楽しそうなのがかわいい。
ベッドショーは最初、フードを深く被っているときの、沙羅さんの表情がうっすら見えそうで見えない感じが面白い。角度によって、ちらりと口もとが見えるけど、しっかりとはつかめない感じ。それを補って余りある、手指の仕草からわかる感情を受け取る時間が何とも言えない。

5景は浅草初来演の春日えなさんメイン景。春日さん自身は1年弱ポラ館に出ての待望の浅草来演のようだ。初めてが「浅草爆走族」とは……期待されてますね! 1stからそうですが、3rdの春日さんまで、みんなメインの踊り子さんがヤンキー感出てるのが演出の妙なのかキャスティングの妙なのか(役への没入度が高い、もあるか)。踊り子全員出演の群舞は豊田さんの”ゆるりとしたギャル感”という同居しなさそうな性質の組み合わさった雰囲気が新鮮。らぶさんは切り込み隊長で、ALLIYさんはチャキチャキタイプ。沙羅さんはいつも通りに”おしとやかにノる”という、これも考えてみると不思議な感じ。でも間違いなくジャンパーは似合っている。五十嵐さんからは溢れ出る、こぼれ落ちる品の良さ。そしてつぐみさん――ヤンキーをも”つぐみ色”にして去っていく。んなことがどうやったらできるのか。わからないが、とにかく劇場には存在している。この世の不思議。
春日さんのベッド着は紫色の特攻服。脱げばさらしに似せたチューブトップ。確かに、春日さんサラシ似合うな。1st〜3rdまで、ヤンキー集団のトップというモチーフは同じでも、さきざきのキャスティングを見越して三人ともにそれぞれが一番似合いそうな衣装をチョイスしているのが単純にすごいぞ。
ベッドショーの春日さんは身体が白くてとても綺麗だ。腰からお尻、太ももにかけての引き締まり具合が美しい。基本のポーズ切りもうまくて、何より楽に、力を抜いてお客さんと一体になって踊れている感じで、今後の浅草来演にも注目したくなる。

問題はアレ(6景)よ。そう(1st,2ndと猛烈なインパクトを見せた6景に武藤つぐみさんがメインで起用と)なれば、そう(否が応でも注目せざるを得なく)なるやろ。……何で岡田監督が出てきたのか自分でもわからないが(橋下まこさんが嬉しいシーズンになればいいな、という気持ちは日々持っている)、6景はアレです。紛れもなくアレ
3rdまできて、さらにメインがつぐみさんなのに、今まででいちばんメイン演者が受けに回っている感じが新鮮だった。むしろビジュアルではつぐみさんが最も中性的or男性的であるというのに。沙羅さんがノリノリで迫る展開に対して、ひたすら我慢の受け手を繰り出すつぐみさん、という色が強い。なんか、マニアック……。
そのつぐみさんですが、なんか、ふしだらなのにスマート! コレって両立するんだ。いや、つぐみさんのチカラワザで成り立っているのかもしれない。
本舞台の幕が閉じてからは、もう”彼の時間”が始まった感がある。ある程度好き勝手やっちゃってもいいよ、というスタッフの指示が出ていてもおかしくない?
白衣の長袖をちょっとだけ引く(まくらないのが大事)のがカッコいい。あとパンツを脱ぐまでが長〜いのは演出のいじわるだなと思う。観客への熱い焦らしプレイ。3rdのおパンツはタイトめボクサーブリーフ。ポーズ切りは予備動作モリモリで笑ってしまった。序盤から連続ポーズを体操選手のように出していく。こんなやり方ができるのも、やはりつぐみさんだからだと思う。

7景はデビューの五十嵐清華さんメイン。もうかれこれ2カ月前から同じ群舞を見ているわけですが、ここへきてやっと実際の季節が少し追いついてきたんじゃないかと思う。ロック座を出ると夜風が少しだけ涼しい。五十嵐さん、5景でピアノを習っていたのがわかる描写が出てくるのもあるのですが、群舞ではリズム感に長けている印象が伝わってきました。
ベッドショーでは、裾というか縁というかに羽のついた、白いレース地のドレスで登場。五十嵐さんは透き通るような身体で、くびれに目を奪われる。ポーズ切りはできているし、何よりひとつひとつの振りに感情をしっかり込めているように見えたのがとてもよかった。
フィナーレでも、初来演の春日さん、デビューの五十嵐さんともに、ちょっとテンポの速い群舞でも綺麗に踊っているし、そう遠くないうちに次回来演があるのではないか、いや、あって欲しい。

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