舞台の使い方に新味を見た 浅草ロック座2020 9・10月公演 「STEPS ON BROADWAY 1st season」

1景オープニングはいつものように踊り子全員参加……ですが、今回は少し映像が流れてからの幕開きでした。しかも板付きはたしか2人。浅草では全員が板付きで始まることが多いので新鮮な始まり方だと思いましたが、なるほどミュージカルの幕開きだったらこれがふさわしい演出だなーと思います。
メインの小宮山せりなさんはロリータ系の顔立ち。可愛らしいなと思って見ていたらベッドショーでのギャップに驚きます。隠れた上半身が露わになったと思ったら、筋肉質な腕・肩・脚まわりに圧倒。演出からも身体つきからも予感がした(そして当たった)のですが、この景はエアリアルです。小道具を使ったエアリアルはたまに見かけますが、今回の演目も感動モノでした。やっぱりエアリアラーの腕まわり肩まわりは美しい。中でも小宮山さんはすごい。大理石のギリシア彫刻みたいな力強さとツヤさえ感じます。でも決してそれがかわいさや美しさを邪魔しないのです。

2景はゆきなさん。浅草では笑顔の演目のイメージが強いのですが、今回の景はモチーフのミュージカルがそこそこシリアスなこともあり、すました感じ・キメてる感じのゆきなさんが見られました。すごく大人びて見えたので驚きました。この景のグループダンスで印象深かったのは服装。4人の服装で80年代アメリカに一気に引き込まれる感じがしました。
それでいて、ゆきなさんのソロパートではめちゃんこかわいい妖精みたいなベッド着を着ているのでここでもギャップに驚きます。本家のようにノリノリで踊るベッドショーになってます。リズムに合わせた連続ポーズ切りが見られるのもこの景。

3景は空まことさん。コレはやばい。一見した感想は「空さんはこういうのもできるんだ……」。前回のMuseといい、今回といい、フリンジストリームな、というか、いかにもストリップ“らしくなさげ”な演目に起用されているし、それを踊り切れるのがただただすごい。そしてTwitter経由で空さんのブログを拝見してヒップホップに対する並々ならぬ思いを知ったいまなら、今年の2演目だけでも空さんの自己実現能力とでも言うんでしょうか、まさに「メインストリームじゃないけど通用するストリップ」が他ならぬ空さん自信の力で達成できていることに、なんというか、尊敬します。(今回の浅草初日と9周年のエントリを読みました)
あとはブラックライブズマターの運動が広がる中でこのモチーフを浅草が取り上げたことにも意味があるような、さすがにそこまでは深読みしすぎのような……。でも、センスあるなとは感じました。
浅草ロック座と空まことさんと、そして社会の動きと。なんかステージ上以上に広がりを見せる景だなーと考えてしまいましたが……難しい話はともかく、とにかく空さんが一度脱いだパーカーをもう一度羽織るときがめちゃくちゃにエロいのでそいつを見ましょう。

4景は矢沢ようこさん。矢沢さんほど男装の似合う踊り子さんもそういないと思います。現に1景・2景では男装してましたし。この景もミュージカル版の主役と一緒と考えると男装のはず。立ち居振る舞いに威厳がにじみ出るのがすごい。それでいてベッドショーでは女性らしさも見える。迎えに来るお盆に戻っていくとき、矢沢さん向かって降り注ぐ光をいっぱいに浴びながら胸を開いて体を反らすシーンが神々しいです。

5景はmicoさん。3人でのグループダンスがあるのですが、衣装がかわいすぎます。またロリ系な踊り子3人で構成されているのもみどころです。メインのmicoさんは今年デビューなんですね。デビューで浅草乗るかたを別にしたら凄まじい早さで浅草に乗ってますね。出自をあまり存じ上げないのですが(出自なんてどうでもいい、とも言えますが)、もともと踊っていたのかと思うほどポーズ切りに柔軟性があったり、客の目を意識した踊りができていたのに驚きました。フィナーレのMCもこなしてるし。

6景の桜庭うれあさんは好きな踊り子さんの一人で、Museのとき同様うきうきで見てました。最初から最後まで完全ソロ演目。モチーフのミュージカルはディズニー映画にもなっていて、今年日本公演がある予定だったのですが中止が相次いで予定をほぼ消化できなかったという悲運の作品でもあります……。この景では桜庭さんの手指の柔らかな動きが綺麗でした。反らせたときの腰やかがむときの脚など、じっくり見せるタイプの景だからしなやかさがよくわかります。あと、スレンダーな体型ながらも腕の広げ方なのでしょうか、身体を大きく見せる感じがして綺麗でした。ベッド着は映画の衣装とほぼお揃いなのがポイント。

7景は真白希実さん。ファムファタ2ndにも似た黒基調でクールな雰囲気の演目。グループダンスでは本舞台に取り付けられた階段を使った演出がとにかく綺麗です。この景までこの演出使わずにとっておいたのはズルい。また真白さんと空まことさんとのコンビネーションが絶妙。真白さんがストリップオフしてダンサー陣がハケる前の一瞬、空さんと真白さんが視線を合わせ身体で表現し合う光景にシビれました。
真白さんのお人形さんみたいな顔立ちがクールな演目に似合うのかも。ベッドショー開始時はややクール&ドライな真白さんの目に、終盤には力が宿ってくるような感じがするんです。

2ndシーズンではあの景やこの景を誰が引き継ぐんだろう……という想像が今から止まりません。それ以前に、1stで書ききれなかった感想がもくもく頭の中を駆けめぐるし、おかわりに行きたい気持ちもあるし、改めて原作の映像化を観てみたいものもあるし……悩ましい。

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