浅草ロック座 3月公演「ECSTASY」

1景は大見はるかさん。初見では楽屋の様子なのかと思った。鏡の中からユーレイのようにバックの5人が出てきて、みたいな話なのかと思ったら……3曲目の歌手と使用曲のPVを調べるとどういうことがしたかったのかちょっとわかったような気がします。SNSではバー開店、なんてことも言っていましたが、バーはバーでもそういうバーなのかな。
内容のほうでは大見さんが今回ノリにノレてます。群舞の雰囲気は2020年の「PEACE LOVE ROCK①景」に似てるような。奇抜な格好で、布と露出のバランスがなんかエロい
ベッドショーでのポーズ切る表情の良さが際立ってました。躍動感ある立ち回りは床体操みたい。カッコよかったな。

2景は浜野蘭さん。なんと浅草はこれがラストとか。演目は元ネタがしっかりあるのかわかりませんが、確かにそういうエクスタシーもあるよね……っていう猟奇的なキャラクタを演じてます。うまいのが、自然に笑いながら狂っているときと、シリアスに狂っているときの演じ分けのリアリティというか、「ああ本当にヤバい人ってこういうとこあるんじゃないか」って思わされる存在感があるんですよね。2020年の「DREAM ON②」でサナギから孵化する生物を演じたのを思い出したりします。浜野さんは一見するとグロテスクだったり不気味な存在を美しく見せてくれるのが浅草での印象でした。引退が惜しい。

3景、MVPならぬMV景、かもしれません。メインは空まことさん。浅草ってこういう生活臭のする(笑)演目あまり無いですよね? ロック座は非現実なレビュー空間だからか、話題のものやスキャンダルのパロディはあっても、普通の生活を普通に描くってあまりなかった気がします。でも、スタートがものすごい生活臭。そこからは空さん得意のヒップホップな世界観なのですが、キーワードが「リモート」。これもまた浅草では珍しく、コロナ禍を含意したようなテーマです(たぶん初めてだと思う)。
でもたぶん空さんにとって、生活のすべてが踊りやヒップホップと深いところでつながっていて不可分なんだろうな、と思う。お盆でゆっくり立ち上がってパンツを脱ぐ。その一連の動作すら、空さんの手にかかればダンスになる。見かけの何気ない動きのゆったり感以上に筋肉がよく動いているのを見て欲しい。
前回空さんを見たのはたぶん道劇。今回改めて見て、空さんにとって浅草ロック座は道具・空間・尺など種々の制約でポラ館サイズでは表現しきれないことを描く、いつもより大きなキャンバスのような感覚なのかな、と感じました。

4景は鈴木ミントさん。ムチを持ったお姐さまとして出てくるゴリッゴリのSM演目!、かと思いきや……。3人のM嬢たち――キュートM大見さん、コケティッシュM雨宮さん、清純派M神野さん――がM役とはいえ楽しそうに演じているのが何だか気になる。SMプレイ中も4人でイチャついているシーンがあり、(そういうの好きなので個人的には嬉しいけど)本当にSMなのか? と疑問符が。ひと展開ありそう、いやあるんです、SM系の演目ではおなじみの檻のセットをうまく使った展開が。
ベッドショーではミントさんの肉付きのいい身体にビスチェ風のベッド着がぴったりしていて、視覚に直接くるタイプのエロさがいい。

5景の群舞は全員集合! この景はエクスタシーというかノスタルジーでは? という気もしますが、神野さんの少女っぽさが存分に活かされた演目だなと思います。神野さん、浅草は初乗り。初々しさもあって少女感がさらに高まってました。ベッドショーでの裸の姿もいろんな意味で少女のようでドキドキしました。
浅草ロック座って洋楽やインストが多いですが、最後の立ち上がり曲だけ割と知名度ある邦楽を使うことがけっこうあるのが不思議というか。メッセージを込めたいのかな。

6景も3景に負けず劣らず今回の公演のMV景に推したいくらい好き。雨宮衣織さんのソロ演目です。セットやプロジェクションを使った演出がさりげなく凝ってます。そしてなんといっても衣織さんの魅力を100%、いや150%引き出すシチュエーションと衣装。仕事帰りのOL……でしょうか。OLの服の脱ぎかたは五輪公式競技にして欲しいくらい定番ながらも演者それぞれの工夫が見られるものですが、今回の衣織さんはかなり高得点です。小道具はイスだけ。だらしなく座ったり乗っかったり、抱えたり押し付けたりしながらスカート、ブラウスと脱いでいきます。下着もエッチな妄想を具現化した感じで最高です。衣織さんのむっちりボディに合ったベストな組み合わせ。
ラストシーンの感じがめっちゃ好き! なんかこう、エロに興じていて、雑〜に朝を迎える感じの終わりかた。音響と照明が生み出す”雑な朝”、そして雑な朝を迎えていっそうアンニュイな衣織さんに注目。

7景は徳永しおりさん。これまた大掛かりなセットを作りましたね。演目の中で”青と黄色がよく見えるように”作られたセットだと思ったのですが、ということは明らかに強いメッセージが込められていますよね?🇺🇦こういうことだと思うのですが(でも、振り付け練習始めたくらいにはまだ実際の戦闘は行われていなかったのでは。となると、まさかリハーサルの途中で付け足された演出なのだろうか)。
徳永さん、本当にこう、演目ごとに神々しさが増しているというか、整った美しさに見とれてしまいます。しかも、それが生きて動いているという驚き。神話や女神のようなモチーフの演目を重ねていると、踊り子としてのスケールも大きくなっていくのでしょうか。

今回はフィナーレも結構好みのものでした。MCミントさんの茶目っ気とか、毎回何かしら入るメンバー紹介のときのアクセントが良かったです。徳永さん呼び上げのときのみんなが集合してポーズとる賑やかな感じが楽しげで見ていても嬉しかったな。

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