「いま」観られる、美術館よりリアルな美術館 浅草ロック座2020 3-4月公演「Muse 〜1st season〜」

「上野の美術館がダメなら浅草の美術館に来たらいいじゃない!」ということで、いま美術が、それもweb上などでは飽き足らずリアルな美術が観たいという人には浅草六区にある美術館をおすすめします。浅草ロック座といいます。常設展示はありません。常に特別展。いま、ここにある作品がすべて。そう、ここの作品には決まったかたちが無いのです。ここの作品は動きます。それも優雅に舞います。きっとあなたは、美術館に来たのと同じかそれ以上に魅了されることでしょう。

1景:原美織(以下敬称略)
・全踊り子が姿を見せてのスタート。詳しくは言えませんが各担当景とは異なるモチーフで出てきます。7人のアンサンブルはぜひその「格好」に注目してください。途中でひとりが絵を描き、みんながその周りに集まるという光景が出てくるのですが、そのときの微笑ましさといったら……もう1景からすでに胸いっぱいになります。保証します。
・ソロパートでは原美織さんの客をのせるうまさに感心しました。やはりAV界でも人気だと露出も多くなって度胸も鍛えられるのでしょうか。1景から元気よく劇場全体を引っ張っていく役回りに最適です。

2景:空まこと
・本公演中最も激しい演目。コレは踊り子さんの力量が試される演目だなーと思います。空まことさん、さすがでした。凄まじい振りの中にもちゃんと美しさがあります。ダンサーズの方とのまさしく熱演。よく見ていると、大音量の音楽の合間にダンサーと空さんが叫んでいるのがわかります。この気合いを感じてください。
・一見ハチャメチャに見えて実は空さんによってしっかり制御されている動きが美しい。とはいえ、ここまで胸を打つ踊りの前には制御された動きだろうが自由な動きだろうが、その境目を考えることすら、もうどうでもよくなってくるように思えます。

3景:木葉ちひろ
・この景はとある夫婦がモチーフになっています。男装といえばこの人(だと勝手に思っている)沙羅さんは……今回は出演景の関係で出てきませんが、今回の男装枠も美しい……。そして本当の夫婦かよと思わせるような関係性が見えます。このまま台東区役所行って婚姻届に判押しちゃえよ! って思います。
・ソロ系ではカップルの中の女性というより、ひとりの自立した女性のパワフルさが見えてきます。演目中の最後の曲に込められたメッセージはこうも読みかえられるんだな、と。このあたりはモチーフを的確に表現しているように感じます。はっきりとしたお顔立ちの木葉さんが見せる生き生きした表情は最高です!
余談ですが、幕間の演目説明も木葉さんは気合い入ってます。聞き逃さないように!

4景:沙羅
・すっかり私のなかで「4景の女王」(と同時にミラーボールの女王)というイメージがついている沙羅さん。しっかり中締めしてくれる頼れる踊り子さんです。しっとり、というかミステリアスな雰囲気の沙羅さんもいいですね。ダンサー4人との精密なアンサンブルが見せ場です。
・ソロ景では胴のひねり具合や指先までしなやかに使った繊細な動きに要注目です。長いまつげの沙羅さんが誘うように衣装を持ち上げてこちらを誘惑してくるシーンがあります。おとなしく悩殺されるのが良いかと思います。

幕間
沙羅さんと徳永さんの才能が垣間見える……沙羅さんがあんな画風なの、めちゃんこかわいいじゃないですか。あれはズルい。ズルいという意味では衣織さんのあの表情。あれもなんか、もう、衣織さんっぽさが出ててなんとも言えません。お手洗いは秒で済ませて、幕間の映像を観てください。絶対。

5景:前田のの
・そうか! これを「アート」に入れてきたか! というのが正直な感想。意味がわかるとじわじわきます。そして前回ファムファタの6景といい、「こういう景」を入れるって決まりがあるんでしょうか? 雰囲気が似てませんか?
意表を突かれた面白さと、モチーフの奇妙さからくる面白さ、ふたつの面白さがある景です。大いに不思議を楽しんでください。ただひとつだけ気になるのは、ののさんは年代的にこの景のモチーフにピンと来るのかな……? ということ。
・たぶんこの景がいちばん発想が自由なんじゃないかと思います。踊り子さんたちもみんな一段と楽しそうに見えます。客席から一緒に振り付けを真似できるのはこの景だと思います。たぶん小道具マネてくるお客さん出てくるのでは(某公演時の農協牛乳みたいな感じで)。ソロパートではののさんの「技」に注目。

6景:雨宮衣織
・ロック座制作部の力の入れどころといった感じのカッコいい演出に、衣織さんが応えるバックダンサー無しの単独景。舞台装置、音楽、衣装、すべてがハマってます。衣織さんの艶かしさがハンパなく発揮される恐ろしい景となっております。
・アンニュイな衣織さんのイメージにぴったりの景(もちろん笑顔の衣織さんも他景(……とくに5景かな?)で見られます)で、お盆の上でしっとりとたたずむ衣織さんが本当にキマってました。この景はどこに注目とかそういうことではないのです。全身全霊で衣織さんを感じてくださいマジで(キモくて申し訳ないですがこれはマジです)。きっと「やりきった……」という顔も見せず最後のポーズを切って演目をやり遂げてしまうでしょう。それが雨宮衣織さんという存在なのです。

7景:徳永しおり
・ハツラツさ、激しさ、強さ、神秘さ、シュールさ、艶かしさ……いろんな方向から美にアプローチしてきて、最終景はやっぱりストレートな「美」に帰ってくる、という感じでしょうか。ただただ美しい。1曲めがあるクラシックの名曲なのですが、それに合わせて舞う踊り子さんたちの優雅なこと。この景は音楽の緩急とダンスのシンクロ具合に身をまかせているととても心地いい。
・ソロパートの徳永さん、ここもまたいい曲にのって綺麗な身体が舞います。神聖さすら感じます。いつまでも見ていたい……と思っていたらもう一度舞台の幕が開き、ミラーボールがキラキラ。もう終わりなんですね、と寂しくなる。それくらいあっという間に感じます。

ところで、前回のエントリで予想した結果については……ネタバレはできないのですが、いわば「カスった」くらいでしょうか(一番ダサい結果じゃん)。もうちょっとアタマをやわらかくしないとロック座制作部の想像力には追いつけそうにないようでした。
これからも浅草に足を運んで、この集団の想像力に驚いたり感動したりし続けることになりそうです。Museの1stについては、少なくとも1景の全員集合時のステージ写真を買いにもう一度来ることになりそうです。

※話を面白くしようとするあまり盛ってしまった表現があります。ストリップは法律を遵守する風俗です

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