浅草ロック座 2023年5-6月公演「ADVENTURES 3rd season」

このメンバーなら彼女はこの景、という何かそれぞれのピースがはまるべきところにカチッとハマった気がした3rd seasonでした。

1景は永澤ゆきのさんメインで、バックが安藤もあさんと赤西涼さん。安藤さんの群舞、踊れてるなあ。もちろんご本人の努力がそうさせているのだろうが、永澤さん赤西さんたちの引っ張りにもよるのかなと思う。その赤西さんは地図を広げたときの喜びようがガチなのがいい。何が書いてあるんだ。永澤さんのベッドショー前にワニとたわむれる演出が追加されている。3rdまでとっておいたものなのか、それとも思いつきかは不明だけど、面白い。
1st〜3rdのどの公演でも、1景のベッド前に本舞台から前盆に向かっていく間の振り付けは自分で考えている部分が多いんじゃないかと感じる。各人がそれぞれ(それこそ探検家のように)手探りで振りの答えを出しているように見える。
永澤さんのベッドショー、”何かを見つけた!”感が強く出ていて楽しい。前盆での”たどり着いた先”での表現も3rdまで三者三様で、創意工夫が楽しめる1景でした。永澤さんベッド着はメッシュ地のジャケット?にホットパンツ。アオリがうまくて、大サビ前に手拍子をアオるのが、最後本舞台に帰っていく移動盆でのポーズ切りで拍手をもらえることにつながっている気がする。

2景は沙羅さん。何度見ても発見はあるもので、登場時のグリーン地に金のアクセントが入った衣装のイメージが強かったのですが、白色光のもとでは水色地に銀の衣装だということに気づきました……照明の色による早着替えみたいなことができるもんなのだなと今更ながら驚きました。群舞はここでも安藤もあさんが、この景は鈴木千里さんとのコンビ。ここでもやっぱり前回より確実に踊れてます。
沙羅さんのソロシーンでは視線の使いかたの上手さに目がいきました。トオイメ…じゃないけど、なんというかこの距離感。沙羅さんの舞っている世界と現世、限りなく距離を感じるような気がします。だからこそ、たまにこちらにグッと距離を詰めてくるような「WONDERLAND」(2021年)④景の”ハートの女王”なんてたまらなくなるんだろうな。
ベッドショーはポーズ切りの数こそ少ないけれど、品よく見せつけるって沙羅さんにしかできないワザだよなあと思う。

3景は西園寺瞳さん。瞳さんとつぐみさんのじゃれ合いなんてずっと見ていたいに決まってるよな! それに加えて今回の瞳さんの衣装はパンティが見えやすい設計(?)になってません? あの真っ赤なパンツが目に焼きついてどうしようもないのですが……。
1st以降、どんどんふたりのコンビダンスにおふざけが強まってきているのがいいですね。たぶん今回のつぐみおじさんは立ちションとかしてた。瞳さんの着替えタイムも今回はつぐおじが傘を小道具に踊る演出に。時期的にも梅雨入りだし合っている。
瞳さんのベッド着……うーん、ともすればユニオンジャック🇬🇧やスロベニア🇸🇮モチーフにも見える気が、と思ったのですが(赤基調だし)、ポイントポイントでのアクセントはしっかりトリコロールとわかるので問題なし。上品なホルターネックドレスです。お人形さんと一緒に登場。一緒に脚を開いて上げてポーズを切るという姿が斬新で面白かった。外からのイメージだと瞳さんはビスクドールとか抱くと似合いそう

4景は赤西涼さん。この人に継がれるべき演目だったなあと特に強く思った景。群舞を見ていると、1stの橋下まこさんの手脚のしなやかさ、2ndの早乙女らぶさんの躍動感、両方をきちんと受け継いで3rdがあるのだな、という気がとてもするのです。
ベッド着は白いドレス。おだやかな笑みが印象的な3曲目のあと、立ち上がり曲ではイントロが印象的。すっと上げた腕、握られていく拳にみんなの視線がサーっと集まっていくのがわかる。一瞬、静かな客席がさらに静まり返るような感じ。そうなんですよ! 赤西さんはこの手のしなやかさだけで場をつくる、支配できる踊り子さんなんです! ってあの場にいるみんなに言いたくなる、そんな気持ちでした(言われなくても知ってる人はいっぱいいただろうけど)。

5景は2ndに引き続き武藤つぐみさん。脇を固めるのが沙羅さん、西園寺瞳さん、鈴木千里さん、永澤ゆきのさんで超豪華。3rdを見る前に原作の「▲KIR▲」をもう一度見てきたのですが、バイクの疾走感やエクスタシー、作品全体にはびこる虚無といった原作のいいところを抽出、濃縮大還元していると改めて感じます。
つぐみさんのエアリアルショーは1st・2ndのリングからロープへ。エアリアルロープってあんまり聞かないんですが、SMっぽさも感じさせる構成で新鮮でした(TS系だとSM大会があるけど、ロック座系も似た位置づけのものがあるのだろうか)。
使用曲も変えながら、でも前回の雰囲気は踏襲している。ラストの二礼二拍一礼では久々につぐみさんのシュールを浅草の舞台上で見た気がして、それも嬉しい。

6景はヅカ的な女性後援会がきっと組織されているのだろうと私が勝手に思っている鈴木千里さん。群舞は沙羅さんとのコンビダンス。じつに感覚的な表現で恐縮ですが、千里さんは”とめ”の美学、沙羅さんは”はらい”の美学を持っているような気がします。振り付けのひとつひとつの手の置きかた、ジャンプの着地のハネる感じなど、まるで流派の異なるふたりの書家のドローイングを見てるようだと(何言ってんだこいつと思うかもですが)感じたんですよね。
千里さんソロパートでは、千里さんがケモ耳つけたら世界の秩序が崩壊するのでは……? という危惧があったのですが、やはりケモ耳は着けませんでした。キャラじゃないですよね。むしろベッド着はいたってシンプル。フード付きの薄いコートに白ホルターネックドレスで、実に千里さんらしいと思う。えりあしにエクステでしょうか、動物のしっぽやたてがみを思わせる長い毛が。
前盆を照らす照明の範囲外から内側に向かって手だけ伸ばしたあと、ゆっくり前盆に入っていくのが印象的。赤西さんの演目のときにも感じた、みんなの注目が手だけに集まっていく瞬間がたまらなかった。
立ち上がりの曲はアメリカの伝統的なフォークソングらしいのですが、若干ロックバラードっぽいアレンジが効いていて、千里さんのたたずまいととてもよく合ってます。

7景は安藤もあさん。1景や2景に続いて群舞がいきいきしてます。ダンサー陣ではスライムが西園寺瞳さん。登場時の”ぴょんぴょん”がなんだかおかしくてかわいい。あと1stから思ってたんですけど、スライム役が剣士の技見てキャッキャするのおかしいじゃないですか。あなた斬られる立場じゃないですか……。あそこで毎度笑いを抑えきれなくなってしまう。あと永澤さんは思った以上に”お姉さん”感が出ていて、懐の広そうな感じが新鮮だった。
安藤さんは群舞では元気さが、そしてソロパートでは間のもたせかた――とくに移動盆に乗って本舞台に帰っていくまでの間のもたせかたがすごくよかったのが印象的だった。

徳永しおりさんに続いて、真白希実さんも今月初めに年内の引退を発表して、トリが2人ほぼ一気にいなくなってしまう浅草ロック座はいま大変なのかな、と考える。南まゆさんにのしかかるものが増えてもいけないし、とはいえ新人のひとにドシドシ振っていくのも大変だろう。真白さんが12月までコースに入りながら、トリ候補の人に引き継いでいく感じになるのかな。これまでのトリシステムが変わる可能性もあるのだろうか。
時の流れの早さには驚かずにおれないこの頃です。この怪文書じみた感想文も3年半続き、どうなっていくのやら。

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