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浅草ロック座 2月公演「愛あればこそ」

「愛あればこそ」。私は偶然にも、浅草に今ほど通うようになる前の2017年に同タイトルの公演(1st seasonのほう)を見ています。再演とされる演目の元ネタ回を見ていたという経験は、これが初めてです。あの頃から細かく書きとめておけば、もっと記憶が鮮やかだっただろうにと後悔。とはいえ、あの時見た演目を思い出したり、新たな演者に継がれていくのを見たり。長く見続けていると、こういう気持ちになれるのかと嬉しくなりました。

5年前「愛あれ」に衝撃を受け正伝分を全巻買った人


前半4景はおおまかに前回と似た構成・演出だったと記憶しています。まあ5年前のスト見始めの頃の記憶など「うわっ」「すごっ」「綺麗っ」「エロっ」で大してアテになりませんが……

1景は桜庭うれあさん。明るい髪色で登場。うれあさんはクリーム系とかブロンドの髪が本当に似合いますね(といいつつ8景の束ねた黒髪の姿も凛々しくてすき)。5年前、何がキッカケだったかも忘れてしまいましたがロック座に入って、1景のこの曲から度胆を抜かれたことを鮮烈に思い出します。この景は演出もほとんどそのままだった気が。3曲目、お盆の上でキョーレツにかわいく誘惑するうれあさん、あまりイメージになく珍しい姿ですが、ファンとしてはただただ嬉しいシーンです。

2景は5年前、いちばん印象に残った演目です。演じていたのは雨宮衣織さん(次回公演で浅草来演)。今でもテンション上げたいときには当時の香盤表から調べたプレイリスト聴いてます。今回は前田ののさん。この景は衣織さんとののさんの雰囲気に違いに合わせたのでしょうか、若干曲や演出を変えたみたい。アントワネット妃のバスタイムのひと幕なのでしょうが……メインを王妃ではなくののさん演じるメイドにしているところが心憎いです。前回は「メイド衣織さんのアンニュイな秘め事タイム」、そして今回は「お世話の合間に自分が楽しくなっちゃういけないメイドさん」どちらもうまくできてますね。曲も明るめな感じに変わっていた印象です。むっちりしたボディから繰り出されるテンポのいいポーズ切りがよかったです。

3景は矢沢ようこさん。前回は空まことさんがキレッキレに演じていた記憶があるのですが、どうやら2ndでは矢沢さんが演じていたようです。5年を経て同演目同景に戻ってきたんですね! 私が見た空さんバージョンとは後半の曲が違っていました。
さてその演目ですが、広瀬さんとのコンビの群舞が最高でした。なんだろうこの関係。男装などなしの女性同士ですが、甘々な仲でもなければ、SMで結ばれた関係でもないふたり。考えてみると、1曲目が意味深です。歌詞や歌い手のことを考えると……なるほど関係性が見えてくるような気がします。片方はオスカルってことか? ベッドショーはずばり”反り”と”見返り”がエロい。背中とお腹の曲線美に魅了されます。

4景は今回の再演含めてつごう3回目くらいでしょうか、浅草ではおなじみとなりつつある振り付け。これまで川越ゆいさんや南まゆさんなどが踊ってきたものを、今回はデビューから半年強で浅草初来演の笠木いちかさんが踊り継いでいます。みおりさん、川上さん(オスカルにフェルゼン、でしょうか)のエスコートがいいですね。みおりさんのスマートでジェントルな感じすごい。
笠木さんのベッドショーはポーズの切り方が初々しい。笑顔の奥にちょっとだけ緊張の面持ちが見えたような気がしました。いや、そりゃそうだ。浅草初乗りは誰だってドッキドキでしょう。しかも引退公演を兼ねたものだとなおさら。でもラストの移動盆に乗って戻っていくときの表情やノリがすごく良くて、次回また浅草に乗ってくれる日が楽しみになりました。

4景の男装みおりさん、カッコ良すぎるだろ


幕間映像は今回チカラが入ってましたね。浅草ロック座得意(!?)のパロディではなく本当に川上さんの引退に迫るドキュメンタリーが製作中とあって、そのいいアオリになってるメイキング。そしてその流れからの5景こと川上奈々美オン・ステージその1

6景はみおり舞さん。これはおそらく今回オリジナルかな。みおりさんメイン景ですから、きっとみおりさんと演出担当さんとで練りに練った演目なんだろうなと想像します。「愛あれ」とどの辺を絡めたのかでいうと、おそらく”革命”からの連想でしょうか。みおりさんがメインで、踊り子4人のバックはみな同じ髪型の人形のような雰囲気。なので私は”人形たちの蜂起”みたいなことを表現しているのかな、とか思いました。
ベッドショーは朝日のようなまぶしい照明が刺すなかで、みおりさんがやおら動き出すところから始まっていきます。ゆっくり、静かに動く振りは激しい振り付けよりも難しいんじゃないかと思います。重心移動のプロ、みおりさんだからこそのワザじゃないでしょうか。ブレたり、ヨレたりしない、見る側もじっくり息をのんで見つめてしまうような景でした。

7景は5年前と同じ演出じゃないでしょうか。広瀬あいみさんが演じるソロ景です。前回は沙羅さんが演じていたのを見たのですが、あいみさんの振り付けを見ていると沙羅さんが重なって見えてきました。ロック座特有の振り付けというのでしょうか、同じ学校の同じ教えを受けているんだろうなあとニンマリするシーンでした。
2曲目から3曲目にかけて少しずつ脱いでいくのですが、最初消え入りそうな雰囲気で出てきたあいみさんが脱いで身体をあらわにすると程よくたくましく、しっかりとした質感を持ち始める、そのギャップが印象的でした。

8景、もちろんトリは川上奈々美さん。前回の灘ジュンさんも引退公演をこの「愛あれ」のトリで演じられました。セットリストはほぼ別の構成でしたが、革命の道半ばにしてバスチーユでオスカルが弾を受け……的なストーリーは同じ。そして3曲目はこの景、この瞬間にうってつけの曲による川上奈々美オン・ステージその2。ストリッパー引退に際しての絶唱。しかと聞き届けましょう。
そしてベッドショーへ。お盆に乗って最初の顔、ポーズ切る時の顔、もうすごくいいんですよ。”やり切りました”の笑顔。”ありがとね”の笑顔。
ラスト、投げられたリボンのひとすじが川上さんの手の中、衣装に縫われた一輪の赤いバラとともに握られる光景には――言葉はなくとも、コロナ禍でマスクごしであろうとも、そこには確かに客と踊り子との対話があったように思います。

仏語版「ベルばら」、辞書や作家全集よりデカいってどういうことだ。彼の地ではこいつを鈍器として革命に持っていくのだろうか。(ちなみに全3巻中の1巻がこれ)

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