浅草ロック座 9・10月公演「夢幻 第二期」の話をいまさらする

「スター●イト」を聴きながら書いているのですが……今回は5景の話からいいですか?

第二期の振り写し、武藤つぐみさんはエアリアルの4景にまわるのか、5景のイケメン路線を継ぐのか、個人的な注目ポイントです。

これが前回の感想。果たしてつぐみさん、5景にまわりました。つぐみさんの5景、想像はしていました。それでも、それでもあそこまでカッコいいのは反則だ。こちらに向かって指鉄砲を撃ってきたとき、思わず「あっ……(ズキュン」ってなりました。ノリがいい訳でも、関西人でもないし、大したことのないイケメンの指鉄砲は食らってもなんとも思わない(私は男なのでむしろ「わっ気持ち悪」と思うのかもしれない。わからない)。でもつぐみさんの姿はそういうのを軽々と超える。素直に撃たれてしまった。



話をもどして開演は徳永しおりさんの0景から。黒い羽をつけて舞う徳永さんのあとを受けるのが白鳥さんって地味にシャレをぶっ込んでるのかと思った。
そんな白鳥すわんさんの1景。デビューからのべ2週目にして初浅草なんですね、早っ! お名前からも察せるようにバレエをされていたとのことで、群舞から軟体さを見せる振り付け含めしっかりこなしてます
ベッドショーでは白鳥さんの後ろで踊るのが光源氏役(=武藤さん)に変わってました。朧月夜の後ろで光源氏が踊る、それも触れ合ったり重なり合ったりでなく、むしろ呼応するような、対になるような振り付けだったのが絶妙な距離感でいいと思いました。

2景は椿りんねさん。練習風景〜本番の風景を演目にして、それら全てを私たちが見るというある種メタ的な構造の景。練習風景での椿さん、若々しさや雰囲気が妙にリアル。あの感じでSNSにダンス動画あげてる人いるよね。
ベッドショーでの変貌ぶりが今回の2景はよかったと感じました。着替えて出てきてすぐ、踊るよろこびや好奇心、ワクワクが表情や身体から出てます。前半で練習していたのはベッド曲とは異なるヒップホップ調の振り付けだったが、結果にはコミットしているのね(何を学び取ったのかが大事! ということか)。
立ち上がりの曲は椿さんによく合っていて、甘い表情で魅力に満ちているのもよかった。

3景は須王愛さん。光と影、キアロスクーロな雰囲気の群舞は徳永しおりさんとのコンビダンスでした。表情がなかなか見えにくい中でも、ふさぎ込むときの肩の落としかたとか頭の下げかた、その仕草が形づくる輪郭線が饒舌にモノを言う感じがさすがだと思う。
2曲めの途中からお盆側からも光が当たった記憶があり、その辺からは表情も確認できるように。特徴的な大きなひとみは1stの広瀬あいみさんの雰囲気とも共通して、なにかミステリアスな雰囲気も持っていてよかったです。

4景は怨念に染まりきった橋下まこさんが見られて最高。浅草に来るまこさんを見るたび、どんどん演目によって変幻自在な踊り子さんになっているなと驚く。でも芯のところには橋下さん”っぽさ”が残っているような気がして、憑依するタイプとはまた違うようにも思うんですよね。
群舞は中世絵巻のような演出が光っていました。嫉妬に囚われるまこ御息所、御息所の怨念に苦しむすわんの上はもちろんのこと、バックダンサーたちがスキニーな衣装のうえから暗い色のヴェールをまとっている姿は絵巻に出てくる妖怪とかの雰囲気に近いものを感じてすごく凝っているなと思いました。
まこさんのソロシーンは、「何をしてしまったんだ自分」vs「抑えきれない怨念」という葛藤を身体いっぱいで表現していて、両手を広げるときなんてまさしく”引き裂かれそう”な感じ。3曲め〜4曲めと進んでいくにつれて、怨念や葛藤を超えてさらに激しい何かに進化? 変化? したように見えました。

ふたたび5景の話を。2公演前の「Daydream」⑥景(音の採集に勤しむナード男子)なんかもそうだったように、ロック座にはときおり男の子よりわんぱくだったりカッコよかったり美形だったりな姿を見せてくれる踊り子さんがいて、これは当然ヅカみたいに全キャスト女性が演じていることから来る”必要”に応じている訳ですが、ヅカのお約束である豪華なメイクや衣装という制約がないぶん、浅草の男役のほうがある種自由にイケメンを演じられると言えます。
そんな男役チームの総大将といえるのが今回5景の武藤つぐみさん。キメるところ、お茶目なところ、ふんどし姿さえ決まっている。性別に属するカッコよさを超えて、今や武藤つぐみのカッコよさというものを確実に持っている、そう言い切れます。
ベッドショーもすんごいの。おそらく和歌を詠むしぐさとエクスタシーとを重ねているのかな。そしてポーズの切りかたが独特で、予備動作に見たことのないアレンジが加わっていて感動しました。

ゆきなさんの6景。劇場に入って左側の席からみていたのですが、右側の月に左手からライトを当てているのが月に当たったりそれたりすると、まるで月蝕を見ているような気分。1st同様、ときおり後景の人々に見られながら、明石の君本人は知ってかしらずか月の下でただ踊るという群舞ですが……ゆきなさんの衣装のボディラインがすごい。胸の感じとか、こんなにえっちでしたっけ……?
イノセントと言うにもちょっと違う、ロリータと言うにもちょっと違う、これまでのどのゆきなさんとも異なった神秘的な彼女がみられる景です。しじゅう、笑顔とも真顔ともつかないニュートラルな表情がとても印象的でした。

7景は徳永しおりさん。キャリアのあるトリに変わって、使用曲や演出も大きく変更してきました。1stは時代背景に忠実に全員和装っぽい衣装での群舞でしたが、今回は紫の上やその周辺の人物をとても抽象的に描いた景に見えました。
ベッドは1景のように光源氏が本当に出てくる訳ではないのですが、彼の存在が見えてくるような徳永さんの身振りが印象的でした。光源氏は心移りを繰り返して離れていようが、最終的に最も深い寵愛を受けたのが紫の上だったと考えると、とても心を打ちます。ポーズ切りはしっとり。一糸まとわぬ姿の美しさに見とれます。

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