浅草ロック座2020 8月公演 「PEACE LOVE ROCK Vol.2」は、日々微かに進化する

3連続の公演というから、各公演ある程度演目を変えてくるのかと思ったら、演目じたいはVol.1と同じで少し意外だった。いちから振り付けを指導するにも難儀な状況だったりするのだろうか。しかしここまで今年の全公演をみてきた自分は、同じ演目でもちょっとした演出の違いに気づくことが面白くなってきている。ポイントポイントを挙げていこうと思う。

1景は宇野莉緒さん。デビューが昨年12月とのことなので実質半年強での浅草初乗り。今年3月の横浜初乗りのときにみたことがあるのだが(たぶんデビュー演目)、そのときから振り付けも当然ながら複雑で難しく、なによりグループダンスが入っている。それでもしっかり踊りこなしていた。
宇野さんのベッドショーで背を反らせるときの、腰から背中にかけて(腹筋の裏側?)のくぼみ具合がすごい綺麗というか、エロいというか。なぜなのだろう。身体は小さめですらっとしているけど、お尻が出ているということなのだろうか。良かったなあ。それと、緑色担当のバックダンサーのキレとロッカー憑依度がバツグンで、踊り子たちを食いかねない存在感(もちろん食ってない。そこは踊り子をちゃんと立ててる)なのが見どころ。

2景。この演目、このメンツなら絶対木葉ちひろさんが合うよなあ……そうだよなあ、うんうん、と思わずうなってしまう人選。なんだろう、木葉さんにはこういう感情が爆発するような演目が似合っているように思う。最初のダンスでは、Vol.1でもここまで出てきて踊ってたっけ? と考えてしまうくらいにお盆の前の前の方まで出てきて踊るし。
道具として出てくる布団が木葉さんカラーに変わってる! そうか、こういうオーダーメイドな演出もするんだ、と小さなおどろき。あとの景でも踊り子個人に合わせた小道具が出てきていた。あとは何と言ってもラストシーン。たしか新たに追加された演出だったはず。いい終わり方に納得。

3景は赤西涼さん。今回のために髪をショートにしたり染め直したりしたのだろうか。めちゃくちゃ似合う……。Vol.1の星崎さんは爆乳タイプだったけど、今回はスレンダーで胸も大きめ、峰不二子風味強め(たしか昨年の周年作で峰不二子っぽい演目を出されていたはず)。
あるお面を使った演出に若干変化があったと思う。お面投げをする場面があるのだが、2公演みたうちの初回の投げがめちゃくちゃ見事に決まって、赤西さんがスナップを効かせて投げたお面がしゅるしゅると回転しながら一番奥の袖幕高めに吸い込まれていったのにはマンガかと思った。ピアノ線で吊ってあるのかと思ったくらい(ちなみに2回目の投げの軌道は普通だった)。
そしてVol.1でもあった振り付けだが、ラストの礼。スレンダーな赤西さんだとよりカッコよく見えるように感じた。

4景は沙羅さん。3連投の真ん中。そういえばバックダンサーを伴わない沙羅さん演目は今年初らしい。今年の演目は2つあったけど、いずれも「ダンサー4名」という文字が香盤表に出ていた記憶がある。
沙羅さんはメイン景以外にも6景・8景・フィナーレに出演している。6景とフィナーレはけっこう自由に、というか客をアオるような動きを各自おこなうパートがあるのだが、このエチュードっぽい場面の沙羅さんのかわいさ。なんだろう、場数は踏みまくっているだろうからそんなはずはないのだが初々しくてしょーがない。その割に幕間の映像では始終謎のグラサンをかけていたり、世良公則の真似をはちゃめちゃ頑張っていたり、わからない……。普段演目で見せるミステリアスさを地で行く存在だ。

休憩中の幕間映像は次回公演の出演者紹介とパロディシリーズ第2弾。今回は日韓の某オーディションプロジェクトが餌食……じゃなくてパロディ元。今回は木葉さんが怪演。5景はVol.1同様に神咲詩織さんがちょっとだけ登場。

6景は今回もアツかった。同じコーデで踊るグループダンスはやっぱり最高で、今回は前回にも増して各踊り子のキャラが見える。沙羅さんは族のヒロイン。赤西さんは普段は一歩引いたとこから見守っているけどピンチには必ずそばにいてくれる頼れる存在。木葉さんはバリバリ姐御肌。宇野さんは一番下っ端の団員だけど他の構成員からは大事に扱われている。みおりさんは先陣切って乗り込む爆走族の核弾頭。神咲さんは兄を追って自分も暴走族に足を踏み入れていつの間にかトップに、そして出会った前田のの総長と意気投合……いや、知りませんけど。
前田ののさんのソロパートは小道具のタオルにひと工夫。あとベッド着の仕様をちょっと変えたかも。
ののさん、衣装や髪色、お化粧しだいであんなにも悪そーなジャパニーズヤンキーになれるとはおそろしい(しかもマイルド系ではなく、マジで結構な悪さをするタイプの郊外ヤンキーの雰囲気が出ている)……いや、知りませんけどね。

7景のみおり舞さん。音楽はVol.1のつぐみさんと一緒。ダンスはコンテンポラリーバレエそのものという感じ。衣装やピルエットの連続など、前回公演「EARTH BEAT 1st」のつぐみさんを思わせた。思えばEBも1stつぐ→2ndみおの流れだった。浅草をあげてつぐみおコンビを競わせて育ててるのだろうか?
片脚立ちでも崩れないバランスの良さ、瞬時に全方位に手足を出すことができる俊敏さはみおりさんにしかできないように思う。
余談だが、ストリップにバレエの振りを使っている演目が多いので、少しだけバレエの本や映像を見ていた時期がある。

そうして考えていたのは、バレエの「美」ってなんだろう、ということだった。自分の身体を思い通りに制御する。そういう統御された身体の美があり、それを表現が超えていく。それをバレエの「美」とするならば、今回のみおり舞さんの演目はまさにその美を体現した演目なのだと思う。

8景は神咲詩織さん。服装が肩出しに変わり、まあ「衣装にバリエーションをつけたんだろうな」というくらいに思っていたら、途中で神咲詩織ワンマンライブが始まった。なるほどこのために衣装を変えたのかな。思わず「これはストリップなのか……?」と疑問が生まれたが、浅草のスタッフさんはかつて取材で「(浅草ロック座はエロくないという言葉にも)私は褒め言葉だと受けとめています。新しい形のストリップをつくっているという自負があるからです」と言っていた(出典)ので、こういうパフォーマンスのミックスも浅草ストリップのひとつの形なんだろう。

Vol.1からVol.2へ。演目じたいに大きな変化はなくとも、微細な変化や改良を加えて日々新しくなっていく「PEACE LOVE ROCK」。Vol.3も大きく変わることはないのかもしれないが、どんな変化を見つけられるだろうか、今から楽しみだ。

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