俺が個室ビデオ屋のポイントカードを作ろうか迷っている間に世界はどんどん進んでいる

ポイントカードを作れば済むとか、そんな単純な話ではない。それを所持することによって得られる僅かな恩恵よりも、所持していることを誰かに知られてしまったときの男としての名誉が保てなくなるリスクの方が遥かに恐ろしいのだ。いつどこで「財布の中身を見せてください」とテレビの街頭インタビューがやってくるかわからないし、以前嫁から財布をプレゼントされて「今入れ替えようよ!」と言われたときはさすがに躊躇したこともあった(別にやましいポイントカードが入っていたとかじゃないんだけど)。

ポイントカードを作ろうか辞めようか、極めてどうでもいいこの問題に頭を抱えているその間にも、世界は加速度を上げどんどん進んでいる。友達は33歳を目前にして新たな恋をしてみたり、生後4ヶ月になる娘は初めて寝返りをうてるようになった。あれだけリモート収録にこだわっていた旅サラダもいよいよスタジオ収録に戻ってきた。毎日大して変わらない東京都内の感染者数を報道するニュース番組みたいに、コロナ禍で色々なものが止まっていると思いきや、人知れず前を向き始めている人達はそれなりにいて、個室ビデオ屋のポイントカードを作ろうか迷っている自分は世界がどんどん進むのを指を咥えて見ていることしかできないのだ。

さて、みなさんは最近いかがお過ごしでしょうか。コロナ禍に甘んじて、しょうがないと何かを諦めてはいないだろうか。映画「アルプススタンドのはしの方」で、しょうがないと折り合いをつけようとしていたあの子達のようになっていないだろうか。自分も含めて、そろそろ声を出すときなんじゃないか。

決断の刻は近い。ワクチンができるのが先か、「ポイントカード作ります」と声をあげるのが先か、今自分にできる精一杯のことをしなければ。財布に忍ばせた一枚のポイントカードが、男が廃る恥ずかしいものではなく、「これはロックンロール・ライセンスだ」と胸を張って言える、そんな男になりたい。

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