⾳⾊で紡ぐウクレレ物語 1

作：ハリー

【1】

昔々、二つのウクレレがありました。一つは、大地のウクレレ。赤く光る力強い音色のウクレレ。大地を操る不思議な力がありました。もう一つは、海のウクレレ。青く輝く優しい音色のウクレレ。海を操る不思議な力がありました。二つのウクレレは、この星に住む全ての生き物が平和に暮らせるように願いを込めて作られたといわれています。けれど、大きなパワーを持つものは使い方を間違えると災いをもたらします。この二つのウクレレも争いのきっかけになってしまい、この星の大地はほとんど海に沈んでしまいました。二つのウクレレは、争いの時に壊れてしまったとも、行方不明になってしまったともいわれています。

この争いで、星のほぼ全てが海になりました。住む場所がなくなってしまった生き物。
いなくなってしまった生き物。それでも、懸命に生きようと努力する生き物。それを嘲笑う生き物。この星には、様々な生き物が住んでいます。その中の一人の2少年。一匹のイルカの物語を少しだけ覗いてみましょ
う・・・
少年の名前はドルといいます。ドルはこの星に住む「人
間」と呼ばれる生き物です。
人間は、昔、大地の上で暮らしていましたが、ウクレ
レをめぐる争いの後、暮らしていた大地がなくなって
しまったので、今は海の上、船上で暮らしています。
船は大小様々、家族だけの少数で暮らしている人もい
れば、島のように大きな船で大勢と暮らしている人も
います。
ドルは、大きな船の上に暮らしていました。同じ年頃
の子は周りにいましたが、ドルはみんなと一緒に遊ぶ
のが苦出でした。船の中で遊ぶときは、本を読んだり、
絵を描いたり、一人でいることが多いです。でもそれ
は、船の中だけの話。ドルには船の外に友達がいます。
ドルがいつもの時間にいつもの場所へ着くと、海面か
ら顔を覗かせている子がいます。彼の名前はフィンと
いいます。フィンは、この星に住む「イルカ」と呼ば
れる生き物です。ドルとフィンは友達で、二人で船の
外へ毎日遊びに出掛けていました。今日もドルはフィ
ンに乗せてもらい、最近見つけた秘密基地へ向かいま
す。使われなくなった船が集まり、一つの小さな島み
3
たいになっているのが秘密基地です。潮の流れが交差
しているのか、いろいろなものが流れ着くため、二人
にとっては宝島でもあります。二人は最近の日課にし
ている宝探しを行うため、別々に秘密基地を冒険し始
めました。ドルが辺りを見渡すと見慣れない黒い物体
を見つけました。「なんだろう、コレ」よく観察して
みると、黒い布で何かを包んでいるようです。ドルは
中身が気になったので黒い布を剥がしてみました。中
から出てきたモノを触ってみると４つある糸のような
紐が青く輝き出しました・・・

【2】