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デス電所公演『すこやかに遺棄る』雑感・前編

雑感て。ほんで、前編、て。

自分でタイトル付けといて、またとんでもなくざっくばらんだな、と思いつつも、もう終わってしまった公演について何かを書くのが苦手だしあまり興味も持てないので、そう書くしか無い。

本来なら、芝居なんてものは千秋楽公演のカーテンコールが終わった瞬間に、終わり! であるものなので、別段語ることなんか何もないのだし、これまでも特に語ったりすることはなかったのだけれど、今はこれまで、と違い、せっっかくnoteという記録媒体があるのだから、何かしら書いてみようかな、と思ってキーボードに向かっているので、まあ、結果、雑感、ていうざっくばらんさで良いのではないかと思うます。

で、これから先に書くことは『すこやかに遺棄る』というデス電所の5年ぶりの公演を見た人向けに書くので、なんだじゃあ、いいや、と思った人には特段おもしろい文章が現れるとも思えないのでそのへんは許してほしかったりもします。そういう人は、また、次の機会によろしくお願いします。

今回、そもそも五年前にデス電所からメンバーがごっそり抜けて、あわわ、これは困った、次の公演どうしよう、なにより、第五回公演からずーっと全曲作曲してきた作曲家の和田さんがいなくなってしまって、これは大変困りました。というか、全曲作曲の中で二十年近く演ってきた我々であったので、オリジナル楽曲がない中で次の公演どうしたらいいのだ、という不安があったのです。

更にいえば、活動休止前のデス電所の作風は、よりミュージカルに特化しており、物語の展開を歌と踊りで進行する、というようなことを平気でバンバンやっていたからなのですね。

そういった楽しい表現が、和田さん無しでどうできるのか。デス電所の作家であり演出家である俺は、大変悩んだわけですよ。

で、考えた結果、「オバノンズ」という、別ユニットを立ち上げて、和田さんはいないけど、既存の曲でミュージカルっぽいことをしてみよう、それならば、デス電所とはまた違ったアプローチで、楽しい表現が出来るんじゃないのかな、例えば、昨今の名曲を物語になぞらえてカラオケで歌うとか。と、辿り着き、「オバノンズ」で公演が出来るんじゃないか、と思い至ったのが二年前(2015年)。

で、「オバノンズ」で公演やろうと思うんすけど、どうすか、と、デス電所メンバーと飲み会を開いたら、みんなが口を揃えて「オバノンズ」という名称を覚えないんですね!

俺としては、不遇の天才脚本家・監督、ダン・オバノンを最大限リスペクトしたおもしろ怖いホラーを演劇化するのに最適なユニット名だと思ってたんですが。

デス電のメンバーは俺と顔を合わせる度に「お……びば?」とか「おばあ……さん?」とかニヤニヤした顔でわざと間違えるわけです。

遺伝子レベルで「オバノンズ」という名称を嫌ってる。

そう気づきました。

彼らを責めることは出来ません。そもそも、ダン・オバノンに相当な思い入れがある人間はその場に俺しかいないのですし、ダン・オバノンをモチーフにラモーンズの要素を取り入れ、メンバーの名前も全て○○・オバノンにしよう! と、目を輝かせていたのは全人類の中で俺一人だったからです。

今思えば、関係者に余計な説明が必要であるそんな制約にしなくて本当に良かったとは思いますが、二年前、高円寺の中華料理屋さんで、デス電所のメンバーに、「今、デス電所の名称を避けてるのはお前だけだ」と二時間近く責められてようやく、「じゃあ、デス電所で」と(当時)渋々認めた俺でした。

で、じゃあ、デス電所で公演やる、と決めてから、制作の真吾と武内奈緒さんと打ち合わせを進めながら(大半は俺が最近観た映画について感想を述べるだけ)、ぼんやりと台本を固めていきました。

そもそも、以前ほどの予算は組めないことはもう明らかであったため、あれは出来ない、これはNG、の中で物語を作っていかねばなりませんでした。

ベースとなる物語は、六年くらい前に浅見と、ナイロン100℃の伊与勢我無が二人芝居をする、と言うのでそのために描き下ろした二人芝居を流用していました。

それは、妻を浮気相手に寝取られた夫が、浮気相手を誘拐してきて、拷問をしているうちに、消息不明になった妻の異常な趣味が明らかになる……というもので、今いない人物について、今いる人物から情報を引き出す、というモチーフが場面も変わらない会話劇ではホラーになりうる、と知っていたからです。

会話劇で進むため、予算は抑えられる。

そこで、新婚夫婦が引っ越した新居の床下に、死体が埋まっており、夫婦がその死体を秘密裏に処理しようとすると、死体には悲惨な過去があり……みたいな芝居で考えていました。

そこで、デス電所の復活公演として、出したタイトルがこれです。

で、それで、劇場もオフオフシアターに決まり、特に客演も呼ばずに公演ができるかなー、と思っていた矢先……デス電所の役者の一人が、参加できない、と報告してくるのでした。

おい待てよ!

とは思いつつも、参加できないという予兆はあったな、個人的事情もあるしなー、ってことで、真吾と、丸と、浅見、で、どうぞ。

という段階に至って、台本締め切り一ヶ月前ですが、脳みそフル回転して、物語を100%書き換えましたのです。

ただ、一個だけ残しました。

それは、デス電所としての、生命線だとも思ったからです。

それは、ホラー。

で、あり、舞台上で、死体を処理する、ということ。

秘密の詰まってる死体を、主人公たちが処理する。

それだけが決まってる状態で、なんとか話を一から作らなくてはいけませんでした。

うーん、うーん、死体の処理……事後処理……

ハッ!

その時、『すこやかに遺棄る』というタイトルが突如降ってきたのです。

このタイトルで、真吾、丸、浅見、で物語が作れるだろうか?

いや、女子が一人必要だ!

できれば、みんなの理想でない女子が!

と、言うわけで、ばるが選ばれたんですよ。(続く)

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