【あくまでフィクション】7月10日に生まれて。
これは1998年夏のお話です。
この物語はフィクションです。
この物語は時系列で語られる話ではありません。
エピソードNoは適当ですが、多分そのくらいじゃないかという予想でもあります。
これは2010年から12年ほどさかのぼったある日の出来事。
Epsode 12(前編)
1998年5月30日、初夏の風を感じるよく晴れた日だった。
何事もなく仕事をしていた午後に電話が鳴った。
開発総務部からの電話だった。
「総務ですが、H口さん。K間さんとK保さんがいたら、一緒に本社の方に来て貰えますか」
と言うことだった。
僕のいるオフィスは本社ビルから246号を渡って歩いて3分の場所にあった。
分館オフィスには第3・4・5開発部があった。
第3開発部次長のK保さんと第4開発部次長のK間さんと第5開発部次長の僕は3人で本社に向かった。
本社では第2開発部部長のK村さんが第6開発部次長のT見さんと待っていた。
K村さんは第4開発と第5開発の部長も兼任していた。
そして第1開発の部長のJ川さんはいなかった。
「これから、剛崎さんが入院している病院にいくよ。何か話があるらしい。まぁいい話があるとも思えないけど」
とK村さんが言った。
剛崎さんは開発局長であり、会社の副社長でもある。
僕らはタクシーで恵比寿の病院に向かう。
剛崎さんは先日、カートでひっくり返ってその時に脚の骨を折ってしまったのだ。
以前も剛崎さんはゴルフのスイングの練習をしていて、その勢いで肋骨を折ったこともある伝説の持ち主だ。
ロビーで待っていると松葉杖ではなく、クイズの解答者席にありがちな形にキャスターがついたものに掴まりながら現れた。
そして剛崎さんが話し始めた。
「あのさぁ、リストラしなくちゃいけないんだよね」
「え?」
一同が唐突の話で一瞬時が止まった。
K村さんが代表して切り出す。
「4月の社員総会では、社長は一人も辞めさせないって言っていたじゃないですか」
「だって銀行がさぁ、リストラしないと融資しないって言っているんだよ。オレも副社長降りるし」
剛崎さんも一応責任は感じているらしいのだが、だからと言って今まで副社長と言う肩書きに大きな意味はなかった。
更に剛崎さんは続ける。
「とりあえず、1ヶ月後かなぁ。どの部が何人切ってもらうかは後でまた決めて話すから、だいたい誰を辞めさせるか決めておいて」
第6開発次長のT見さんが
「それって、儲かりそうな部署だったら切らなくていいこともあるんですか?」
と、脳天気に聞いた。
「そうだなぁ、それでもいいなぁ」
剛崎さんは答えた。
時々このT見さんのお坊ちゃんぶりには呆れてしまう。
自分の部署は切らなくてもいいと思っているのだろう。もちろん、この部署も赤字であるが、今後自分たちが作っているモノが売れれば大丈夫だと思っているのだろう。
それにしても、楽天家だ。
第2開発部長のK村さんが
「剛崎さん、あんた、背中から刺されますよ」
と、呆れた様な口調ではあったが、本音で言った。
もちろん第2開発は第1開発と同様、大きな負債を抱えている。20人以上の開発陣を抱えているのでランニングコストがとても大きい。
だた、確かにK村さんの危惧していたレベルは正しかったのだと思う。
言い方がねぇ、過激派なんだよなぁ。
とにかく、これが1stインパクトの始まりだった…
to be continued.
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2010年7月10日は「A for SALE」社の14回目の創立記念日です。
懐かしいあの本社があったビルには、現在どのテナントも入っていませんでした。
神泉~青葉台って土地は事業には向かないのかも知れません。
ちなみに、この物語はフィクションです。
はたして1stインパクトの被害は・・・。
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