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Living with Music Vol.14〜Andy Jones / アンディ・ジョーンズ(Wales / ウェールズ)日本語

Andy Jones / アンディ・ジョーンズ(ウェールズ)

“FOCUS Wales”共同設立者&ブッキング担当者

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Wales, May,2020

 ウェールズは、イギリスを構成する4つの地域の一つで、イングランドの西側にある。Andyは、ショーケース・フェスティバル“FOCUS Wales”の共同設立者でブッキング担当者。“FOCUS Wales”では、地元のバンドを世界のマーケットに売り出すほか、世界中の新しいバンドを紹介している。その数毎年250組以上。約15,000人の観客が集まるという。
 Andyはアジアのショーケース・フェスティバルにも頻繁に顔を出していて、アジアの音楽シーンにも明るい。彼の存在があることで、“FOCUS Wales”が、アジアのインディー・ミュージックのヨーロッパでの入り口になっているという面は確実にある。
 イギリスはコロナ・ウイルスで多くの犠牲者を出しており、難しい局面にある。Andyによると、そうした中でも音楽や文化に対してのサポートは、日本に比べても非常に手厚い印象だ。そうした中で新たなアイデアも温められているという。
 大いなる文化の違い、政府の対応の違いは、ポスト・コロナにおいて、音楽業界におけるそれぞれの立ち位置に新たな変化をもたらすことになるのかもしれない。



手厚い行政からのサポートが、
ミュージシャンや音楽業界のコミュニティへの貢献を生む。
それぞれが役割を果たす中で生まれる強靭さと明日のための知恵。

Q: 現在の周りの状況を教えてもらえますか。

 「イギリスは、3月中旬からロックダウンされているので、自宅で仕事をしています。幸いな事に私は北ウェールズの田園地帯に住んでいるので、このような状況の中でも安全に運動して健康を維持するためのフィールドやスペースがたくさんあります」

Q: どの国も音楽産業は大きな打撃を受けています。現在の仕事の状況はいかがですか?

 「私たちも他の皆さんと同様に、ウェールズのロックダウンの緩和、そしてイギリスでのより広い範囲でのロックダウンの緩和について、政府からのより多くの情報を待ち望んでいます。
 数週間後には、すべてのことがより明確になり、これからの活動に役立つことを期待しています。しかし、会場の再オープンや渡航制限など、まだ不確実なことがたくさんある中で、多くの計画を立てるのは難しい状況です」

Q: 音楽や文化に対して、どのような支援がなされているのでしょうか?

 「このような状況の中で、アーツカウンシル・オブ・ウェールズの助成金というのは、芸術関係の団体や個人に対して様々な助成金を提供されていて、今回は非常に助かっています。
 多くの人を驚かせている現在の状況において、アーツ・カウンシル・オブ・ウェールズ、ウェールズ・アーツ・インターナショナル、ブリティッシュ・カウンシル・ウェールズなどの芸術団体が、この危機的な時期に支援と指導に乗り出していることはとても良いことだと思います」

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"Trans Asia Music Meeting 2020" Feb.2020,Okinawa,Japan

Q: 現状において、ミュージシャンや音楽関係者が社会に対してできる最良のアプローチはなんだと思いますか?

 「私はこの危機的状況の中で、音楽業界の真の共同体意識を見て、心が温かくなりました。人々は純粋にお互いのことを気にかけていて、できることなら助けてあげようとしています。ミュージシャンがネットオークションやパフォーマンスで資金を調達して地域社会に貢献している姿を見て、とてもうれしくなりました。
 例えば、PPE(感染防止用の個人防護具)の不足を補うための資金を調達したり、ケアのための慈善団体を支援したり、”Music Venue Trust”と協力して、地元の会場がCOVID-19後も生き残れるようにクラウドファンディングキャンペーンを行ったりしています。
 このようなことを見るのは素晴らしいことだと思いますし、今後もアーティストがコミュニティに参加することで、大きな影響力を持つことを期待しています」

Q:日本ではライブハウスやクラブは長い期間ロックダウンを強いられて危機に瀕しています。しかし日本では政府からライブハウスへの支援や補償はとても限定的です。ウェールズでは、こうした場所への具体的な支援はありますか?

 「はい。幸いにもウェールズ政府はウェールズの音楽会場にいくつかの助成金を提供しています。会場が申請できる事業助成金もあり、一般的な事業運営費などを支援しています。これは、申請プロセスで成功した人にとっては命綱であり、政府はこの支援を今後も継続していくことが本当に重要です」

Q: 今の状況において、音楽やエンターテインメントの役割は何だと思いますか?

 「アーティスト、エージェント、プロモーター、そして業界全体が協力してこの状況を解決しようとしているのを見て、とても心強く思いました。
 最初はイベントやツアーが中止に追い込まれた時に、反応はどうなるのだろうかと心配していた人も多かったと思います。でも、みんな本当に理解があって、筋の通った、人間的な対応をしてくれました。今はお互いが必要な時なので、みんながそうなってくれたらいいなと思うんですけど、それが実現するのを見て、心が温かくなりました。
 この状況での私たちの役割としては、人々がほとんど屋内に閉じこもっているからといって、アーティストにプラットフォームを提供し、人々を楽しませることであることに変わりはありません。
 人々は多くのオンライン・コンテンツを消費しているので、オンラインで観客と関わるためのクリエイティブな方法を見つけるのは私たちの役目であり、それらはすべてCOVID19後の私たちの仕事に活かすことができます」

Q: 先を見通すことは難しいですが、ポスト・コロナに向けて、何か考えていることはありますか?

 「最終的には、音楽分野は状況に適応し、革新的であり、前に進む責任を負う必要があります。私たちは結局のところ、以前とほとんど同じ方法でライブを行うことに戻ると強く思います。それは単純に大多数の人が望んでいることだからです。しかし、ワクチンや治療法はまだ開発の初期段階にあるため、そこに戻るには時間がかかるでしょう。
 私たちはその間に、ライブの分野に関わるすべての人が、可能な限り安全なライブの環境を作るためにできることをしているということを、ファンの皆さんが確信できるような方法で、イベントを企画し、宣伝する必要があります。
 私たちは、皆この状況から学ぶことも多く、動きも速いです。長い目で見れば、困難はいくつもあると思います。しかし、最終的にはより強い分野になると期待しています」

Q: 音楽を通して海外の友人とシェアできるアイデアはありますか?

 「今、私たちはウェールズの音楽コミュニティが世界中の音楽コミュニティと関わり続けることができるようにするための新しいアイデアをいくつか開発しています。残念ながら、これらの計画を詳細に発表できる状況には至っていません。
 たとえそれが今のところはデジタル領域であったとしても、私たちの音楽コミュニティの間の道が開かれているように、みんなでできることをしていくべきだと思います」

Q8: 今、お気に入りの音楽を教えてください。

 「最近は、北ウェールズのWrexhamという町からデビューアルバムをリリースしようとしているKidsmokeというバンドを聴いています。これは彼らのニュー・シングル”The Bluest You”です」

Q:メッセージをお願いします。

 「もちろん、COVID-19の状況は広範囲に及ぶ悲劇を引き起こし、人々の生活に多くの混乱をもたらしましたが、当然のことながら、私たちの”FOCUS Wales”の毎年のフェスティバルや、海外への輸出業務にも影響が出ています。
 今の私たちのミッションは、アーティストにプラットフォームを提供し続けること、そして全員の安全と健康を確保することです。
 現在、新しいコラボレーションを含むいくつかの創造的な計画に取り組んでいて、エキサイティングなプロジェクトや、ほんの数ヶ月前には予想もしなかったようなプロジェクトに取り組んでいます。このようなことが可能なのは、このような時期に組織が互いに手を差し伸べ、強いコミュニティ意識を示しているからです。このことは、私に希望を与えてくれます」

BIO.
Andy Jones, FOCUS Wales
Co-Founder & Festival Programmer

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 アンディ・ジョーンズは、国際的なショーケース・フェスティバル&カンファレンス”FOCUS Wales”の共同設立者でフェスティバルのプログラム担当者です。
 "FOCUS Wales"は、毎年5月に、ウェールズのレクハムで開催されています。15,000人以上の観客を迎え、20のステージでは世界中から250以上のバンドが出演します。
 2020年は10周年ですが、新型コロナ・ウイルスの影響で、開催が10月7日〜10日に変更になっています。


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