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救急車で運ばれた病院で救急車を呼ばれた

救急車で運ばれた病院で救急車を呼ばれたって、何を言ってるのかわからないと思うけど、取引先の仲のいい人にこの話をしたところ、予想以上に面白がってくれたので書きとめておこうと思った。ちなみに嘘じゃない。


人間、苦しいときはテレビや何かで見たことがあるような、うめき声が出るって知ってる? オレは知ってる。自覚がないのに勝手に出てしまうことがあるのも知ってる。

それは土曜日のこと。
忙しいせいにして胃の具合が悪いのに医者にいかず、調子悪くなると飲んでた薬もきらして、ほぼ1か月。

昨日まで、腹に何かを押し込めばしばらく苦痛から逃れられてたのに、寝ても覚めても食っても何してても、ずう~っと胃が痛い。
こんな時は牛乳だよなって飲んだけど効かない。そこで必殺のビール。うん、炭酸なら効くんだよって飲んだら、もっと痛くなった。(良い子はマネしちゃダメ、絶対ダメ)
この時はまだよゆ~があった。

2時過ぎだと思うんだけど、立っても座ってもいられなくなってベッドにいったら、そこから本番だった。
しゅごぉい、こんなのはじめてぇ、らめぇって、激痛をこらえてたんだけど、しばらくまともに寝てないせいか、うつらうつらしたみたい。

誰かが耳元で"う~んう~ん"って言ってんの、それも大きめの声で。
うっせ~な~、こっちは"ぽんぽんいたいいたい"なんだよ、誰だよ、あ~うっせ~。この野郎って文句言ってやろうと薄目を開けたら、犯人はオレ野郎だった。びっくりした。

そのうちどうにかなるだろうって甘い期待がかなうはずもなく、ただただ、うんうんうなってたら、パートから帰ってきた家内が第一発見者になってくれて、「大丈夫?」とか聞いてくれた。
とっくに切れてると思ってた絆はたぶん糸一本ぐらいでつながってた。
よかった、あぶねぇ、ギリだ。

どちらかと言えば大丈夫じゃない気がするので、救急病院に電話で予約してくれいと頼んだら、すぐに予約してくれたんだけど、「自転車で行く?」と聞かれた。糸一本だもん、やっぱ細いよね。

自転車はスルー、タクシーをお願いし到着を待ったのだけれど、ここで激痛が波状襲来。ひーひーふーって何回も何回も言ったけどダメ、もう限界。
意識が朦朧(耄碌じゃないからね、ここ大事だかんね)とした(気がした)。
すまん、タクシーキャンセル、至急で救急車、近所に恥ずいのでサイレンなしで、ってトッピングもつけた。

いつもマズイ方向にしか行かないハズなのに、救急車はすぐにきてくれた。
激痛と動転でバカが加速してるので、今日のオレはついてるなって思った。

救急車の中で隊員さんが電話で受け入れ先を探してくれ、向かった先は電話で予約した病院とは別だった。

病院に着いたらすぐになんかしてくれんのかなって期待したけど、世の中ってのは甘くないよね。とりあえず、痛いのをなんとかしていただきたい、できれば今すぐにって言ってんのに、まず検査ね、立ってらんないだろうから車いす使ってね、押してあげるって、レントゲン室に連れてかれて、はい、そこに立ってって言われた。

しんどくて身動きできないほど痛いから、車いすに乗っているのではなかったっけか?と回らない頭で考えながら、しかたなく、なんとかレントゲンにしがみついた。
そしたら、ハイ大きく息を吸って~って。ま、ふつ~言うか、そうか。
だったら次は、ハイ息を止めて~って言うんだろうなぁ、ホラ、やっぱ言った~、ぴんぽん~とぼんやり思った。
息を大きくも吸えないし止めることもできないただの、でくのぼう、ならばオレはレントゲンのカバーになろう、そう、それが今のオレにふさわしい。レントゲンに張り付いてるカバーなら痛いって感覚はないからな、ってワケわかんないことを考えながらじっとしてたら、息問題は追及されずハイ終わりってなった。

はあ、やれやれ、これで痛み止めがもらえるかもって思ったら、次はCTねって、もうね、****(自粛)、ヨヨヨって崩れ落ちた(と思う)。
でもなぁオレはさっきレントゲンのカバーになったからなぁ、CTはでかいからとても貼り付けないのではあるまいか、とかまたワケのわからんことをのろのろ考えながら、なんとかCTに登った。
CTのゴウンゴウンって轟音を聞きながら、死ぬほど痛いって言うのは痛いから死ぬのか、死ぬから痛いのかって考えてたあたりから記憶がない。

いって〜って正気に戻り録画再開したら、そこは診察室、ベッドに寝てた。あ〜、コレでどうにかしてくれる、もう決着つけてくれる、あなたならできるって信じてますって思ってたら、お医者さんが看護師さんに心電図をとってって指示した。 

若い看護師さんで、あのヒヤッとするペタペタくっつくやつを胸のあたりに貼っ付けようとするのだけれど、何故かボロボロ落っこちて手が震えてる。

お医者さんが、「ソレ、コツがあるって言ったよね、ゼリーつけて、早くね。それと、すぐに救急車呼んで、今すぐ。」
看護師さんが小さい声で「えっ」って言った。
「早く呼ばないと、その人、死んじゃうよ」って妙に静かに言った。
看護師さんの手がさらに震えたけど、なんとかペタペタするのを貼っ付け、あわてた感じで119番した。

そうかオレは死ぬのかとか、走馬灯って見たことないけどやっぱ馬が走ってんのかなとか、その人って言うなよな、患者さんって言ってくれよとか、来た時と同じ救急隊員だったらなんか恥ずかしいなとか、隊員さんに「まいど~」って挨拶したらウケるかなとか、それよりこの激痛をなんとかしてくんないかなとか、ぐるぐる、ぼんやり考えつづけた。

その日2回目の救急車で行った病院は、家内が予約してくれた病院だった。遅くなったけど予約を守れてよかった、オレは約束を守るタイプだからな、とちょっと誇らしかった。

遠くで誰かが、三歩進んで二歩下がる〜って歌った(ような気がした)。

続く(のかも)

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