南十字星Imai探索物語 ★戦利品★

2016/11/1

戦利品

机についたまま事務員Imaiは、にやにやしていた。
「戦利品があったな、今日のデータには」

濃紺の壁を背景にしたカフェ風の事務所。誰もが静かに仕事をしているが、顔を見ると、みんなImaiのように、込み上げるものを押し殺している。

「傘がない、お金がない、何もない」、「迷惑するでしょう」、「あんたら、完全に上な」、「引き続き全室にキャッツインが入ります」等々。なんだかよくわからないから、余計に可笑しい。

ここは、人々の考えが集約される場所。集約というと聞こえがいいが、単に絞りとっているだけだ。その絞り取られる吸引感覚がたまらないらしく、病みつきになる人もいるらしい。Imaiたちはやらないので、わからない。淡々と、そして、にやにやしながら、仕事をこなすだけだ。

あるとき、地球からお客さんがやってきた。ちょっと驚いた。最近、松村潔という存在が宇宙への道案内を始め、仲間のアクルックスには団体ツアーも組まれているらしい。同じ南十字星なのに、ここにはほとんど誰も訪れない。最近になってやっと名前がついたが、エチオピアの草の名前とか、ホントに草。

草生えても生えなくても、ここに来るにはちょっとした難関がある。吸引され細くなった所を通り抜けないといけないのだ。そもそも情報しか通り抜けないように設定してあるから、人が来るのは大変なはずなのだ。
まあ、それでも来ちゃった人がいて、驚いたけど、嬉しかったよね。

さてさて、また仕事に戻るとするか。今日の戦利品は何かな?


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