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レーズンパン

小さい頃、私はレーズンパンが嫌いだった。

ぶどうは好きだった。
なぜぶどうを干してしまうのか。
あのジューシーで果汁たっぷりのぶどう
そのままで食べた方が絶対においしい。

思い込みが大きかったのだと思う。
私はこの食べ物が好きじゃない
そう思うと嫌々食べたくなくて、断固として私はレーズンパン嫌い、を通した。

でも母は食べないことを許してくれなかった。
こんなにおいしいものを食べないなんて
食べないなんておかしい

「おかしい」
その単語だけが耳に残った。
私はおかしい子なのかな。

無理にでも食べさせられた。
別の食べ物を代わりに出してくれることはなかったと思う。
私がレーズンパン嫌いだからといって、レーズンパンが食卓に出されないことはなかった。
母はレーズンパンが好きだった。

レーズンだけを残し、いや後回しにしてパンを渋々食べていると、食べなさい残してはダメと言われる。
毎回怒られるので、レーズンパンは怒られる記憶が染み付いている。
泣きながら食べたこともあった。

今朝私はレーズンパンを焼いた。
3歳の息子はレーズンが好きだからだ。

食卓にパンを並べると
「おいしそうだね!」
と息子は言う。
あの頃私が後回しにしていたレーズンを、息子はレーズンだけほじくって食べる。
焼いたパンにくっ付かず落ちたレーズンをすかさず口に入れる。

「ちゃんとパンと一緒に食べなさい」
私は言った。
レーズンパンはもう、嫌いではなくなったみたいだ。

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