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手さえあればできること


命が生まれてくる現場は

穏やかな時もあるけれど

心臓が止まりそうなくらい
緊迫した状況もあります。




先日、朝仕事に行くと

前日に退院した
切迫早産だった妊婦さんが

破水してとんぼ返りでまた入院し

朝方お産になっていました。




お産を担当した夜勤明けのスタッフは
ぐったりしていて

大変なお産だったことが
すぐにわかりました。



赤ちゃんは回旋異常といって

頭がまちがった向きで骨盤に入ってきてしまい
なかなかお産が進まず

さらに臍の緒が
首と足に巻いていたこともあり 

心音がおちて

すぐに出さなきゃいけない緊急事態となり
鉗子分娩で生まれてきました。 



鉗子分娩とは 

大きなスプーンのような
金属製の道具(=鉗子と呼ぶ)で

赤ちゃんの頭を挟んで引っ張って出す
分娩のことです。




子宮の中でストレスが
かかっていた時間が長かったし

鉗子で引っ張り出されたので

赤ちゃんは
生まれてすぐはぐったりしていて

蘇生をしなければいけない状態だったそうです。



さらに回旋異常だったため

普通は頭の横にかける鉗子の位置が
目の上になってしまい

鉗子の痕が目の上にガッツリついていました。




苦しい思いをして生まれてきた赤ちゃんは

呼吸状態が安定していなかったので
保育器に入っていて

ママに抱っこしてもらうこともできなくて
心が痛みました。



その日は私はお産担当だったので

その赤ちゃんのお世話は
別のスタッフがしていました。



気になってお産の合間にみにいくと

鉗子痕がついていて痛々しく

首は右に捩れていて
左を向けず頭の形は超いびつです。



それでも生きる力があって
ミルクはしっかり飲むことができました。
本当に生命力というのはすごい。



次の日の夜勤では
担当を申し出て

お世話をしながら
クラニオをしました。



夜は長いし
落ち着いていたので

ゆっくり時間をとることができました。


朝には右しか向けなかった顔は
左も向くことができるようになり

頭の形も少し改善しました。

他のスタッフも「頭の形少し良くなったね」
と気づいてくれました。



大変なお産は

助産師にとっても
とても怖くて
とてもつらく

もっとできることはなかったかと
後々まで気持ちを引きずることが
多いものです。 




今までは辛そうな赤ちゃんやママがいても
なす術がなかったのが

クラニオができるようになって 

手を差し伸べることが
できるようになりました。


それが本当に嬉しいし
私にとっては救いになっています。



人生のスタートや
ママのスタートは

みんな幸せであってほしいなと
心から思います。

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