比較的シンプルな死の描写
あらゆるものごとは通り過ぎた。
そのあとに残ったものは、枯れた松の木のような心象風景だった。
やたらと風の強い場所に、私は立っている。
暗く、いや明るいのか、風が強い。あたりもよく見えないなかで、風だけはたしかに私の耳元をつんざくように吹き続けている。
そこには、大切な誰かがいて、溢れるような実りがあったはずだったのだが、今はもう思い出せない。
ここは色彩が欠かれている。しかしながら、すべての声は私に届いている。
悲しいのか、怒りなのか、たしかに私はいくらかの希望を持っていたのだけれど。それももうどうでもいいことなのだろうか。
私は途方にくれて、しゃがみこんでしまう。耳を澄ませようとしても、ここはどうも風が強すぎるのだ。
end.
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