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現代の美少女キャラに通ずる夢二式美人

竹久夢二の記念館に行ってきました。今から十数年前、僕が高校生だった頃にも1度訪れた事があります。当時のはっきりとした記憶は無いのですが、どういう風の吹き回しか、ふと思い立って気の赴くままに夢二館へ向かいました。子供の頃とは価値観もモノの見方も変わっているだろうから、2度目とはいえきっと新鮮な気持ちを味わえるだろうと思っていました。そんな当てもない予想でしたが見事的中し、小さい館内ですが1時間半ほどかけてじっくり楽しむ事ができました。

知らない方にも簡単に説明をしますと、竹久夢二は20世紀前半、つまり今から100年ほど前に多くの作品を残した詩人画家です。今でも国内外で人気を博しております。
僕が特に驚いたのは、幾人の女性と関係を持った彼が唯一籍を入れた「たまき」という女性が石川県出身であり、彼女が自立のため東京は早稲田鶴巻町に開店した絵葉書店で夢二と出会ったことである。何が驚きかというと、完全に私事なのですが、僕も早稲田の町に10年ほど住んでいたからです。さらに言うと、夢二が埋葬された雑司ヶ谷霊園も、僕が文字通り徒歩で足繁く通った池袋への通り道にある。偶然なのだろうけど、こういうところに不思議な縁を感じてしまう。高校生の頃に僕がこの施設に来た頃には、僕と早稲田の町や雑司ヶ谷には縁もゆかりもなかったのだから。

さて、竹久夢二といえば女性の絵です。師につかず、いずれの画派にも属さなかった彼の独特な美意識によるその作品たちは「夢二式美人画」と呼ばれるほどでした。
一体何が「夢二式」なのか。

館内は撮影禁止だったので、ホームページから画像を拝借しました。彼の描く女性は色白のうりざね顔で華奢な肢体でとても艶かしい。ただ、僕が最も特徴的だと感じるのは物憂げな表情です。ガラス細工のように繊細でキラキラと輝くものとは違った美しさがそこにはあります。外見だけでも今にも壊れてしまいそうなのに、愁いを帯びたその表情は内面の不安定さをも表現し、刹那的な美しさを際立てています。諸行無常や崩壊の美学と似たような価値観だと思います。
現代の漫画やアニメキャラにも、この「夢二式」な女性キャラが多く受け継がれていると思います。新世紀エヴァンゲリオンの綾波レイ、名探偵コナンの灰原哀、涼宮ハルヒの憂鬱の長門有希などなど。とりあえず名作からピックアップしましたが、他にも多数いるでしょう。上記のキャラはどれも主人公ではありませんが、主人公キャラよりも人気が高いことも有名ですね。光の当たらない脇役、暗く悲しいバックボーン、縁の下の力持ち的な役回りなど、視聴者に哀れみをも感じさせる立ち位置です。どうも、僕たちの中には「哀れみ≒愛しさ」という価値観があるように思います。そして、完璧でなく、不安定なものに美しさを感じる。日本人にとっては当たり前で何も思わないかもしれませんが、改めて文字に起こしてみるととても複雑な感覚で、それを隣にいる人と共有できるというのは素敵なことだなと思いませんか。僕は思います。
日本人は、他人との価値観の共有が比較的容易です。島国でかつほぼ同じ民族が同じ文化的背景を持って暮らしているからですね。ただ負の側面として、価値観に多様性がなく同調圧力が強くなりがちです。だからこそ、海外からの様々な価値観を輸入したり、逆に日本独自の価値観を発信したりして互いの文化的な価値を高められるわけです。良い時代になったなと思います。

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