「現役」

第74回 (2022年9月28日)
第73回 益子奈々さんからバトンを引き継いだきかです。
 
 今回のテーマは現役とのことで、まず手始めに「現役」の定義を知りたくなりました。なぜ、定義が知りたいのか?私は、大学院で言語学を研究していました。例えば日本語と韓国語を比較すると、同じ現象でも文化や社会の差が、いろいろな形で言葉に表れるという研究をしておりました。不思議ですね。では「現役」は、どうなのでしょうか?

 ここで、まず現役の定義についてご紹介しようと思います。次に、私が思う「現役」についてお話できればと思います。
 
1.現役とは(デジタル大辞泉による)
① 旧日本陸海軍の常備兵役の一。所属部隊に入り、軍務に従っていること。また、その将校や兵士。
② 現在ある地位・職などに就いて活動していること。また、その人。
③ 在学中に上の学校などを受験する者。また、その試験に合格した者。特に、大学受験についていう。浪人に対する語。

 日本語では、軍で使われたのが語源のようですね。「現役」の定義を読んでいるうちに、普段使っている「現役」は②の意味に近い気がしました。皆さんはいかがでしょうか。 他の言語も気になって調べてみました。

 1)韓国語:현역(hyonyeok) <-「現役」のハングル表記
 2)中国語:现役(xian4yi4)
 3)英語:active(現役の)

 韓国語と中国語は、日本語での漢字表現と同じ「現役」でした。いずれの国でも、軍の用語がそのまま転用されているようです。英語は activeが現役に当てはまりのよい言葉のようです。語源はact(行動)から来ているので日中韓とは違います。面白いですね。ということは、日中韓では、軍隊が登場した近代以前では「現役」という言葉が存在しなかったかもしれないですね。江戸の人に「現役」と言っても通じなかったかもしれないです。さてよく考えると、私も「現役」という言葉を使ったことがありません。もちろん言葉は聞いたことはありますが、自分で使ったことはなかったです。それは、私自身が現役かどうかを気にしてないからだと思います。私の「現役」キャリア形成について少しご紹介しましょう。

 私の社会人生活は18歳の時からです。高校卒業してからは自分で自分を養わないといけませんでしたので、学校に通いながら外資系高級レストランで働きました。外資系に採用されたのは外国語ができたからです。学業と生活のために始めた仕事でしたが、きっかけを生みます。その外資系レストランは日本の高級料亭のような場所で、政治家や企業の社長がビジネスの会食に使うような場所でした。私が1年ぐらい働いたとき、利用くださっていた貿易会社の社長からスカウトされ、通訳のできる秘書として貿易会社に移りました。会社と取引先の関係がWIN-WINになるように様々な国の人と交渉や対話をする機会が増えて国ごとの人の特徴が見えてくる中で、外国に興味を持つようになり、その中で遂に日本に留学するに至りました。

 日本に来たのですが、実は日本語はほとんどできなかったので、最初は本当に大変で、八百屋で果物を買うのもバスの乗り方にも苦労しました。日本に来て半年過ぎたごろから少し慣れてきて、生活費を稼ぎつつ日本語を早く習得するため、高級料亭ではなく中華飯店で働きはじめました。当時の気持ちはとにかく日本語を早く覚え、より良い環境で働きたい、明日は今日よりもいい日にしようとの一心で学業と仕事を両立するため日々積み重ねていました。そうすると毎年のようになにかしらの人の縁に恵まれ、時に良い環境で働くことになります。そうすると学業に割く時間も増やすことができ、学年TOPの評価を得ることもできました。おそらくそのためか、当時通っていた大学から、日本企業で外国語を教える仕事を紹介されます。教える準備をするために自分の使っている言葉に語学として向き合ってみるとそこに面白さを感じ、また教える中でその面白さを伝えることも楽しく感じたことがきっかけとなり、大学院に進学し、大学で語学を教えることになりました。振り返ってみると私には「言語」をきっかけとした縁がある気がします。

 現在、私は大学で講師をしながらキャリコンサルタントとして活動しています。今度は「言語」の力を借りて、日本企業や日本で生活している外国人が直面しているキャリアの問題について、何かお手伝いをしたいとの思いからです。プロティアン研究会の人達とも出会うことができました。私自身も変わりながら次につなげることができるといいなと思います。楽しみです。

 40代になり、今までの道のりを振り返ってみると、言葉も通じない、考え方も違う私を受け入れてくれたすべての人々に改めて感謝の気持ちが湧いてきます。どんな環境の中でも懸命に取り組み、その中で楽しさを見つけ、出会った人との縁を大切にしたことで、新しい道が開けたと思います。
皆さんも、今を大切に! 常にactiveな気持ちでいきましょう!
 
次回は長野晋さんにバトンをお渡しします。

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