2020年度春公演 オンラインでの実施に際しまして

この度はSTEPS Musical Company2020年度春公演「VERNON」をご覧いただき誠にありがとうございます。
本公演は半年以上前から参加者一同一丸となって準備を進めてまいりました。昨年度末から猛威を奮い始めた新型コロナウイルスの影響を受け、「なんとしても対面で演劇を作りたい」という想いを抱きながら、3/12〜3/14にアルテリオ小劇場での実施を目指しての船出となりました。

しかしながら、今年の1月7日に緊急事態宣言が再発令されたことにより、弊団体の所属する慶應義塾大学では再び対面での課外活動が全面的に禁止される事態に発展いたしました。緊急事態宣言が発令されてもなお「どうにかして対面で公演を実施できないか」と模索し続けましたが、宣言の再延長も相まって、大学側の方針は結局最後まで変わることなく予定していた公演期間を終える運びとなりました。

この作品は、当初からオンラインを想定して作られた作品ではなくあくまでも「舞台上での上演」を想定して作られ構想が練られてきた作品です。それゆえ、刻一刻と悪化する状況、対面での実施が遠ざかっていく現状を受けて悔しさや歯痒さを感じながら公演作りを続けてまいりました。

この企画は全てZoom上で稽古を行い、スタッフはZoom上で会議しながら作業を行った結果完成した作品です。役者は、対面で集まることを一切せずに稽古をしてセリフを覚えました。スタッフは遠隔で曲を作曲し、録音し、音源を編集し、役者がダンスしたものを繋ぎ合わせました。2時間近い作品の音声を全て録音し、編集し、音圧を整え、サムネイルを描き動画にしました。各々の家で1から布を切ってミシンでつないで衣装を作り、役者の下まで郵送しました。

「これはそもそも演劇と呼べるのか?」
「そこまでして創りあげるべき価値があったのか?」

そのような疑問を持たれて当然だと思いますし、率直に申し上げてその答えは私たちにもまだ分かりません。
対面が少しでも許されたら活動が出来たであろう舞台美術や照明、小道具などの活動が結局のところできていない以上、この公演は公演と呼ぶに値しないのかもしれません。演劇は生で表現するからこそ価値があるコンテンツであることを私たちはこれまでの活動を通じて身をもって体験してきました。だからこそ、YouTube上で動画を創り上げてそれを公演だと豪語しても意味はないのかもしれません。

ありとあらゆる出来事は他のものに必ず影響を与えます。そして、物事の「結果」と「結果がもたらす影響」は切り離して考えるべきだと考えています。私たちが最後まで諦めずにオンラインという形であっても「形に残す価値がある」と考えたのは、「結果が仮に望んだものと違っても、その結果がもたらす影響は必ずしも悪くない」と考えたからです。この2ヶ月、役者・稽古場指導陣はもちろんのこと、動ける状況にあったスタッフセクションの人たちは皆持てる力の全てを出してこの難局を乗り越えようとしてくれました。そこに至るまでの過程、この作品を創り上げるまでのプロセスが今後のSTEPSにとって良い影響を与えるのか否かはまだ分かりません。「結果」は目に見える形ですぐ現れますが、「影響」は時間が経って初めて目に見えるものだからです。この春公演での取り組みが今後のSTEPSにとって良い「影響」をもたらすことを願って止みません。

そして、もう一つ。この公演は形は普段と違えどお客様にご覧いただくことで初めて完成します。私たちはこの作品を通してお客様皆様に少しでも良い「影響」を与えられればと信じて作品作りに邁進してまいりました。この作品が皆様の心の琴線に少しでも触れられれば、本望です。

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