SCPのあれこれ

この記事は某鯖企画用に書いたものです。

 なんでも好きなものについて書き散らしていいぞということで、今日は私が昔入り浸っていたある作品群についてちょっとお話したい。

 皆さんはネットの海でこんなやりとりを見たことはないだろうか。

 ダジャレに対してトマトが飛んでいったり。

 赤い鳥が出てくる場面で「あかしけ やなげ ひいろのとりよ……」なんて詠唱する輩がいたり。

 あるいは井戸(小屋)や猫が出てきた際に、「ねこですよろしくおねがいします」なんて言い出したり。

 これらは全て、「SCP」という架空の……物語というか、世界観というか、そういうアレに基づいて創作された作品のネタなのだ。

 SCPという名前自体は結構有名だと思う。特に近年はゲームが出たり、書籍が刊行されたり、ニコ生で取り上げられたり、かなり広まっている。でもイマイチなんなのかわからん!とかホラーっぽくてこわい!って人もいるはず。そのような人達があの世界に触れるきっかけになれればと思う。間違いや解釈違いなどなどがちょいちょい含まれるかもしれないがご容赦いただきたい。

 文量がとんでもないことになっているが、ほとんどがオススメ記事と補足説明で実際は3500とかそんなものなのでご安心を。

1.そもそもSCPって何


 第四の壁の向こう側にいる我々から見て、「SCP」という言葉が指すものは概ね2つある。

 一つは「SCP財団」。この世界の中の人達からは主に「財団(The Foundation)」と呼称される。
 SCPユニバースには、自然法則に従わない異常なモノだったり、生物だったり、場所だったり、現象だったり、言葉だったり、そういったものが存在する。こんなものが野放しになっていてはその世界に生きている人々はやってられないので、そいつらを「確保(Secure)」して、人目につかないように「収容(Contain)」して、悪い奴らに悪用されないように「保護(Protect)」しよう!ということで発足した組織である。
 ちなみに、この「発足した経緯」も作品によって異なっている(というかほとんどはそもそも語られていない)し、その経緯自体がSCPオブジェクト(後述)に指定されている場合もある。
 というかぶっちゃけこの「財団」自体の扱いも記事によっててんでバラバラなので、ざっくり「SCPオブジェクトを収容している、一般人が一般的な生活を送ることが出来るように世界の裏で奮闘する影の組織」とでも思っていてくれればいい。

 ついでに、サイトとしてのSCP財団の成り立ちをざっと説明しておく。今から14年ほど前、4chanの超常現象板にSCP-173と題された都市伝説風短編が投稿された。これをきっかけにその報告書風の文体を模倣した作品が次々投稿され、その過程でそれらのオブジェクト群を管理する「SCP財団」の設定がだんだんと創造、共有されていった。2008年にこれらの報告書をまとめたwikiが開設され、これが現在のSCP財団の祖となっている。多少趣は違うが、海外版洒落怖みたいなもんである。

 もう一つは「SCPオブジェクト」。普通はSCPといえばこっちを指す。これは先程の文中の"自然法則に従わない異常なモノだったり、生物だったり、場所だったり、現象だったり、言葉だったり、そういったもの"にあたる。
 これらの物品一つ一つに対し、SCP財団に勤める職員らは様々な実験をしたり、情報収集を行ったり、時にはしばしば犠牲を払ったりしながら、これらのオブジェクトはどうすれば(比較的)安全に収容しておくことが出来るかを記した「特別収容プロトコル(Special Containment Procedures)」を含めた報告書を書き上げるのだ。この報告書(以下、記事)こそが我々がSCP財団のメインページを開き、オブジェクト一覧から閲覧しているページである。
 オブジェクトの種類は実に多種多様で、不気味なホラーから感動的なSF、財団内で用いられている(架空の)技術についての導入に、徹頭徹尾わけのわからないシュールなものも存在する。しかしながらこれらの作品には投票制度が設けられており(wikidotのアカウントを持ちSCP財団に申請を受理された”職員”がプラス票またはマイナス票を投じることが出来る)、この評価が「-3」を下回った記事は改稿がなされなければ数日中に削除されるという自浄作用も働いているので、基本的にはクオリティの高い文章が揃っていると言ってよい。
 余談であるが、財団世界中の人間がオブジェクトのことを「SCP」と呼ぶことはない。大体は番号(SCP-xxxなど)または「オブジェクト」、あるいは「スキップ(本家でScip, Skipと表記されることがあるのに倣ったものか)」と呼ばれる。

2.SCPの記事について

殆どの記事は以下のような書式を取っている。

・アイテム番号

 その名の通り、アイテムの識別に用いられる。本部以外の支部で創作された記事では、番号の末尾に更にその支部を表すアルファベットがつく(JP、KO、FRなど)。番号が複数のオブジェクトの包括的な指定である場合、その部品を指すときにはこの更に後ろに枝番がつく(ex:SCP-1234-JP-1)。
 なお、まれにここすらSCPオブジェクトの影響を受けていることがある。
 たまに勘違いされるが、オブジェクトのメタタイトルについて記事中、ひいては財団世界内で言及されることはまずない。メタタイトルとは、冒頭で触れた、すでに有名なミームとなっているSCP-040-JPでいうところの「ねこですよろしくおねがいします」にあたるものだ。

・オブジェクトクラス 

 この記事に記されているSCPオブジェクトの収容難易度に応じて、基本的には三段階に分けられる。
Safe:収容方法が確立していて、これを忠実に守っていればまず危険無くオブジェクトを保管できる。核爆弾だってこの分類に基づけばSafeだ、という説明がよくなされる。
Euclid:とりあえず収容方法は見つかっているが、いつそれがひっくり返ってもおかしくはない。ほとんどのオブジェクトはこれにあたる。
Keter:セフィロトの樹の一、Keterより。収容は出来ていないか難しく、危険度も非常に高い(しばしば放っておいたら世界滅亡レベル)ものが多い。前述のようにあくまでも基準は収容難易度であるため、単に「オブジェクトそれ自体は全く危険ではないが、全く予測不可能に瞬間移動する」からKeter、なんて場合もあるにはある(がレアケース)。
 また、何らかの理由でその異常性を喪失したオブジェクトは新たにNeutralizedというクラスを割り振られ、より簡易的な収容がなされる。これら以外にも複数種類、財団内で共通して用いられるオブジェクトクラスは存在するが、そのいずれも財団にとって大きな意味をもつものなので、ここでは伏せる。

・説明

 そのオブジェクトの解説であり、殆どの場合において記事のメイン。そのオブジェクトに関する実験記録や、それがどうやって財団に収容されるに至ったかの音声記録(の書き起こし)なども記されている。一部の記事では隠し文や隠しリンクなどが潜んでいる場合もあるので、読んでいて違和感を感じた際は記事下部のオプションからソースコードを確認するなどするとよい。有名所だとSCP-280-JP「縮小する時空間異常」とか。

 ただ、SCPワールド内には「異常といえば異常だけどそんな全力で収容するほどじゃないな……」という物品も多数存在し、それらはAnomalousアイテムと呼称されてもっと雑に保管されている。ページも別でまとめられていて、これはこれで結構面白い。以下はその一例。


説明: 「おつきさまをたべちゃった!」という題名の作者不明の絵本。読破した場合、口の中に"月の味"という概念が味覚として出現する。"月の味"については、認識に個人差や年齢差が見られる。
回収日: 2020/05/02
回収場所: 北海道新ひだか町立図書館
現状: サイト-8179のN/A保管庫に収容
追記: 閲覧者の証言から、未就学児の大半は"月の味"を「甘味」や「旨味」として捉えますが、主に高校生くらいになってくるとほぼ全員が「不味い」あるいは「無味」と回答するようになってくることが判明しています。-望月博士
そりゃあ、岩石の塊を食べても美味しくはありませんから、当然と言えば当然なことです。-月夜野研究員
大人になるってこういうことなのでしょうか…。-朧田管理官


3.オススメのSCP記事

 簡単にではあるが大体の説明をしたので、いよいよ初心者にオススメのSCPを独断で選んでいこうと思う。日本支部と本部で10個ぐらいずつ、有名所からもマイナーなものからも。なお私はホラーが得意ではないので選出が偏るかもしれないが、何卒ご容赦いただきたい。
 また、以下に並ぶのはSCPの通常記事のみであるが、財団には他にもTalesと呼ばれる一般的な小説のような形式をとった物語や、ハブ(Hub)と呼ばれる複数の記事やTalesで世界観を共有している作品群の導入のためのページも存在する。興味があれば、そちらもぜひ。
 自分で記事を探す際は、「日本支部なら番号の小さいもの」、「本部記事なら番号の大きめのもの」が比較的読みやすい傾向がある……と思う。両方番号が小さい(≒黎明期の記事)方が単純なんじゃないの?と思うかもしれないが、番号の若い本部の記事は昔に翻訳されていることが多いためクオリティが一定ではなく、また最近の記事は「思いつくことはもう大体やり尽くされたから一周回って単純になった」ものがそこそこあるのだ。
 なお、支部に関わらずSCP-001群とキリ番(SCP-X000)ある程度世界観に慣れてから読むことをおすすめする

1.SCP-010-JP "Mirai PC"
ジャンル:SF
 なにやらとてつもない容量を有するっぽいフラッシュドライブのような何かで、財団はこれ自体が小型のコンピュータではないかと考えている。一般的なコンピュータにUSB接続するとCUI表示のプログラムが立ち上がるが……

2.SCP-147-JP "この檻の外へ"
ジャンル:アーバンファンタジー
 水槽に閉じ込められていたクラゲのようなモンスターと、彼女をそこから救い出したある少年の話。この少年は後に別の記事でも出てくる。気になった人は恩人三部作で検索。

3.SCP-161-JP "伊れない病"
ジャンル:メタホラー
 「伊る」という概念が認識できなくなってしまう精神疾患。え、「伊る」って何かって?

4.SCP-267-JP "光に埋もれ消えゆくものは"
ジャンル:(若干)ホラー
 我々が忘れてしまったものの末路。我々にはもう見えなくなってしまったものの末路。

5.SCP-270-JP"悪意なき人形焼"
ジャンル:癒やし系?
 喋れる意思を持った人形焼達。人間においしく食べられることを種(?)の目的としているらしく、同胞が食べられると悲しみつつも感謝を表してくれる。接しているうちに食物の摂食を拒むようになる精神影響が発生する。実験記録がちょっと面白い。結局の所本当に当人達には悪意がないのがタチが悪い。

6.SCP-413-JP "13階段"
ジャンル:ホラー
 見た目も設計上も12段なのに、数えながらのぼると13段になってしまう階段。なんでかというと、この階段を「13段」として数えるために、のぼった人間から「9」という概念が欠落してしまうから。おまけに階段を使うたびにこれが悪化するからさあ大変。ニュルニュル......

7.SCP-567-JP "w2qyv.worm"
ジャンル:-
 英数5文字からなる文字列。観測に応じて文字列が増殖し、まれにその中には利用できる情報が含まれている場合もある。もちろんSCPがそんなただの便利アイテムで済むわけはなかった。彼を救えるのは君だけだ。

8.SCP-605-JP "異誤(リバーシ)"
ジャンル:ボーボボ
”今の手は素晴らしかったですね。木星から土星に掛けた円環の角度の急激な上昇に伴い地球の引力に働きかけた。これは彗星を呼ぶつもりなのでしょうか。”

9.SCP-242-JPの無料体験コースをただいま実施中です。
ジャンル:フォーマットスクリュー
 この記事のように、明らかに財団標準の報告書の書き方にそぐわない構成になっている記事はフォーマットスクリューと呼ばれる。これはその中でも異常性がわかりやすいほうかな?

10.SCP-1730-JP "このへんないきものは、"
ジャンル:都市伝説
 反ミーム(後でほんのすこし触れる)性を備えた、へんないきもの。おそらくは日本中にいると推測されるが、ただいるだけ。別に人間に干渉してくるわけでもない。ほんとうにただのへんないきもの。

11.SCP-227 "完全なアンティキティラ島の機械"
ジャンル:-
 大昔に作られたとみられるぜんまい仕掛けの装置。どうやら天体についての様々な予測を行うことができるらしい。

12.SCP-599 "地図にない町"
ジャンル:アーバンファンタジー
 地図になく、住人は行方不明者で構成されている町。あの手この手で住まわせようとしてくる。

13.SCP-1281   "さきがけ"
ジャンル:SF
 太陽系の外縁で発見された、壊れかけの生体機械。よい報せを届けてくれた、先人たちの贈り物。

14.SCP-1390 "死語"
ジャンル:都市伝説
 かつてある一部地域でのみ用いられていた文法構造。これを知るとどんどんこの文法について研究したくなってしまう。そうしているうちに今度は人の喋っている言葉の文法間違いが気になり始め、最終的にはSCP-1390以外の言語は全部間違いだとするようになる。おまけにこれをどんどん人に広めようとする上……

15.SCP-1422 "イエローストーンの怪"
ジャンル:SF
 ある日まで、財団職員「だけが」「全員」イエローストーン国立公園の存在を全く認識していなかった、という現象。なんででしょうね?

16.SCP-1485 "通常次元"
ジャンル:ホラー
この世界。

17.SCP-2172 "この信号は青にはなりません"
ジャンル:シュール
ある司祭がその身を捧げて悪魔と契約した結果がこれだよ!

18.SCP-3275 "すいません、ピザ間違ってます。"
ジャンル:-
 ある体調が悪いピザ屋の配達員と、そいつの配達するピザ。体は大事にしようね。

19.SCP-4773-2 "「     とクマのぬいぐるみ」"
ジャンル:フォーマットスクリュー/反ミーム
 財団世界には、「反ミーム」─ いわゆる「ミーム」が自らを拡散させるように動くのに対して、逆に自らの存在を抹消するように動く情報体が存在する。その入門的な記事。拙訳です(小声)

20.SCP-5153 "「隕石が来たぞーッ!」"
ジャンル:SF
原題は"The Meteor Who Cried Wolf"。タイトルの翻訳センスがいい。

4.補足 ─ 財団世界における様々な団体


 財団世界の解釈は各々によって非常にバラッバラであり、またそれが許されるのがSCP界隈である。この「各々が念頭に置いている設定」をヘッドカノンと呼ぶ。

 とはいえ、本当にみんながみんな、何の縛りもなく好きに財団世界をしっちゃかめっちゃかにしているかというと、そういうわけでもない。やはり、なんとなくではあるがみんなが前提としている設定(カノン)というものは存在し、そしてそれに当てはまる内容は特に説明もなく記事中に登場する。その中でも、ここでは財団世界の中に存在する様々な団体についてちょっと解説しようと思う。

・SCP財団の内部構造

 ここでは、SCP財団自体の中はどのような仕組みになっているのかということを記す。

1.O5評議会(O5 Council)
 
殆どの記事においてSCP財団のトップとなっている、13人から構成される評議会。構成員はそれぞれO5-1からO5-13と呼称され、その素性は謎に包まれている。一部記事ではある一介の研究員がO5評議会の一員となるまでの様子を垣間見ることが出来たりもする。もちろん、この記事の内容をあなたのヘッドカノンにくわえるか否かはあなた次第である。
 基本的には本部にのみ存在し、日本支部を舞台にした記事ではこの役割を「日本支部理事」と呼ばれる人物が担っていることが多い。もっぱらこの日本支部理事として名前が出るのは「」であるが、他にも数名の名前が確認できる記事も存在する。
 また、記事によっては更にこの上の権限を有する人物として、「管理者(The Administrator)」と称される人物の存在が示唆されることもあるが、こちらについての情報はO5についてのそれ以上に不明瞭である。

2.倫理委員会(Ethics Committee)
 
財団では人体実験に値するような研究も多数行われているし、人間と交流することができるような知性を備えたオブジェクトも多く収容されている。こうしたことが行われる中でも、超えてはいけない一線を守り通すために存在する、財団の最後の良心こそが倫理委員会である。こちらは具体的に何名で構成されているかというような情報は(カノンレベルでは)存在しない。
 厳密にはこれはいくつも存在する財団内部部門(例えば物流部門、保安部門、科学部門、医療部門など)の一つであるようだ。

2.サイト管理官
 
SCP財団は世界各地にサイトを有しており、そしてそれらはそれぞれ一人の管理官によって治められている。そのサイトにおける全権限を有しているものだと思われるが、基本的には名前が出てくる程度がせいぜいで、記事に直接絡んでくることはほとんどない。このリンクはそんな中でも(平行世界の)サイト管理官が原因で大変なことになった珍しい例だが、非常に長大かつ難解なのでアニヲタwiki等を活用しながら読むことを推奨する。

3.その他職員(研究員, エージェント)
 
日夜サイトでオブジェクトの研究を行っている科学者達や、オブジェクトが新たに確認された時に現地に急行するフィールドエージェントや機動部隊員達。一般世界で優れた研究をしたり、SCPの収容違反に巻き込まれるも生存するなどした人物がそのまま財団に雇われるなんてことも多いようだ。
 これらの人物らの中でも、特にいくつかの頻出の機動部隊(Mobile Task Force)について更に追記する。

3-1.機動部隊
 3-1-1.機動部隊 アルファ-1("赤い右手")
  レッド・ライト・ハンド、あるいはその頭文字からRRHとも。O5評議会直属の機動部隊であり、SCP財団の根幹に関わるような作品に登場することが多い。

 3-1-2.機動部隊 ガンマ-5("燻製ニシンの虚偽")
  財団が公の場での活動を余儀なくされた後、カバーストーリーを流布したり記憶処理を行ったり情報操作をしたりして、その痕跡を消し去るための部隊。

 3-1-3.機動部隊 イプシロン-6("村のアホ")
  農村や郊外など、人口の少ない地域での情報収集等の活動に駆り出される部隊。日本語名はあんまりにもあんまりである(元のVillage Idiotsというスラングを直訳してしまったのだろう)。

 3-1-4.機動部隊 エータ-10("シー・ノー・イーヴル")
  見たらアウト系のオブジェクトを専門とする部隊。盲の人を採用してるなんて設定もあったようななかったような。

 3-1-5.機動部隊 ミュー-4("デバッガー")
  電子機器、特にコンピュータやネットワーク関係の異常存在を専門とする部隊。異常存在の関与が疑われているサイトの調査等も行っているようだ。

 3-1-6.機動部隊 ニュー-7("下される鉄槌")
  機動部隊と銘打ってはいるものの、実質的には財団の有する軍である。バチバチの殴り合いが必要な場面でよく登場する。

4.Dクラス職員 
 しばしばDクラスのDはDisposable(使い捨て)のD、なんて呼称される、財団世界において最も命の軽い人々。危険なオブジェクトの収容や実験、あるいは空間系オブジェクトの探索など、ありとあらゆる場所で使い潰されている。
 死刑囚や無期懲役囚に、「一ヶ月協力したら解放してやる」という契約を書かせて財団の元で働かせているというカノンがよく採用されている。なお実際に一ヶ月生き延びたら記憶処理をしてもう一度である。無限ループって怖くね?
 こんな感じでロクでもない扱いを受けているDクラス職員であるが、彼らに物語の主眼が置かれている記事も少数存在する。
 たとえば、Dクラスだけが知っている彼らの最終兵器とか、そもそも倫理委員会はこの状況をなんでスルーしてんの?という話とか。

・財団以外の団体 ─ 要注意団体

 財団世界において、「この世界にはどうやら常識が通用しないもんが存在するらしい」ということを知っているのは財団だけではない。どころか、一部ではそのような物体を自らの手で作り出してしまうような連中もいる。そのような団体らを、財団では「要注意団体(Group of Interest, GoI)」と総称する。そんなGoIの中でも頻出する一部の団体を紹介する。

本部の要注意団体

1.世界オカルト連合(The Global Occult Coalition, GOC)
 
財団は異常存在を確保し、収容し、保護するのが目的の組織であるが、彼らの目的は異常存在を破壊し、破壊し、破壊しつくすことである。財団とは異常存在に対するスタンスが180度違うためしばしばいざこざが起きるが、最も根幹にある理念は「世界を守る」であるので、財団と協力してオブジェクトに立ち向かうことも多々ある。彼らは108のオカルト団体の連合体であり、それぞれの代表者らからなる「108評議会」が財団で言うところのO5評議会に相当する。

2.カオス・インサージェンシー(Chaos Insurgency, CI)
 
財団の一部が離反し、オブジェクトを自らのために使うようになったテロリスト集団。噛ませ役みたいな扱いになることも。

3.壊れた神の教会(The Church of the Broken God)
 
機械じかけの「神」を信奉する、超常的な宗教団体。古くは地中海のキティラ島を本拠地としていたらしいことが判明している。主流派の「壊れたる教会」、アナログ派の「歯車仕掛正教」、デジタル派の「マクスウェリズム教会」の三派に分かれていて、特に後者2つは仲が悪いようだ。
 財団とは敵対関係にあるが、後述のサーキック・カルトとはおそらく有史以前からの犬猿の仲であるため、これに立ち向かうためであれば財団とも手を組むこともある

4.サーキック・カルト(Sarkic Cults)
 
単にサーキックとも。腫瘍、腐肉、疫病などを崇拝対象とする教団である。「崇高なるカルキスト・イオン」と呼ばれる人物が元となったようだ。
 大昔に、太古の昔に封印されし神の力を喚び起こして世界征服を目論んでいたが、前述の「壊れた神の教会」の信奉する対象である「機械の神」との戦いに破れ、こちらの神は再度封印された。この戦いにより、機械の神は「壊れて」しまったのだと言われている。
 近年、かつての大戦の生き残りや、その教義に感化された人々が集まって、また隆盛しようとしている。SCP世界の中でも純粋悪として描かれがちである(が、そもそもの団体の興りたての頃はまた違った性質だったようだ)。
 幹部クラスの人間は「カルキスト」という尊称が名前の頭につく。軒並み一人でKeter級の超やべーやつらであると見て間違いない。

5.第五教会(The Fifth Church)
 「5」という数字に異常な執着をもつ、超常的なカルト宗教。教徒は「第五主義者(Fifthist)」と呼ばれ、「第五主義」という超現実的な概念からなる異常な考え方に支配されているものであると思われる。この宗教の「宗派」はあらゆる時間軸で常に五つに分かれている。「5」、「ピンク色の光」、「星々」、「煙」とか言い出すとこいつらが関わっている可能性がある。

日本支部の要注意団体

1.日本生類創研(日生研,ニッソ)
 
異常な動植物を作り出すマッドサイエンティストの集団。具体的に何を理念にしているのかは不明だが、活動資金を得るためにスポンサーの要望に沿った生物を作っていることも多いらしい。マッドサイエンティストの例に漏れず倫理観は概ね終了しており、また財団のことをゴミ箱か何かだと思っているフシがある(処理に失敗した実験体を適当に野放しにしても収容してくれるため)。
 「教授」と呼ばれる存在がいる(もしくはいた)ようだが、現在はニッソの本部とは離れた場所にいるようだ
 ※非常に分かりにくいことに「博士」と呼称される要注意団体(人物)も存在するのだが、それとこれとは別人である。

エコロジー・キャンペーン用試作
ポリクイくん ポリッコ 名前はプレゼンの時に考えよう。とりあえず「ポリクイガ(仮)」で。
これが売れれば更に我々の研究を先に進めることが出来るだろう!
現状サンプルを増やすため繁殖能力を強化
絶対に逃すな!
     ↑ごめん^^;

SCP-030-JPが確保された、放棄された研究施設のメモ

2.東弊重工
 
異常な科学技術、特に機械工学に精通している団体。あくまでもビジネスとして運営されており、製品は販売されることを前提として作られていることが多い。危険性もニッソのそれに比べれば相当抑えめである。たまにクライアントの無茶な要望にキレ散らかしている。ニッソとはお互いの存在を認識しており、時には協力してものづくりを行うこともある。

設計コンセプト 破棄。試作機は破壊。
 
クライアントの要望に[塗り潰されている]追加
 
 
あといくら便利機能を追加してやったら満足するんだ

SCP-448-JPに関連されると推測される文書

3.蒐集院
 
SCP財団が日本に進出する以前に、日本国内における異常存在の収容を行っていた組織。財団日本支部の前身と言ってしまってもいい。財団がこの組織を吸収するにあたってほとんどの異常物品や人員などは引き継がれたが、一部過激派は物品を持ち逃げして組織の復活を目論んでいるようだ。

4.酩酊街
 
忘れられたものがたどり着くと言われる、常に夜間でアルコールの匂いが漂い、雪が降っている街。異空間上に存在すると推測され、財団世界からは通常の手段では辿り着くことが出来ない。
 ここの関連するオブジェクトは基本的には無害で、ノスタルジーな気持ちにさせてくるものがほとんど。害意も基本的にないというかこちらの存在が認識されているのかも怪しい。また、「酩酊街より 愛を込めて」という文で結ばれた、おそらくは酩酊街に住んでいる人物からの手紙が送られてくる描写が付随していることが多い。
 ここに住んでいると推測される実体はこの街をよいものだと思っているようだが、そうは思わない実体も一定数いるようだ。

お元気ですか? わたしは元気です。
こっちは夜と雪しかないので、そちらがうらやましいです。
わたしはもう行かなくてはいけません。
なので、この子をあなたに任せます。
寂しがり屋で迷惑をかけちゃうと思いますが、
可愛がってあげてください。

            酩酊街より 愛を込めて

SCP-823-JPの奉書紙に浮かび上がってきた文章

5.如月工務店
 
超常的な建造物を作り出す団体。工務店の名の通り、これもまたクライアントからの依頼を中心に動いているようだ。しばしば建築の材料として人を用いる。用途は要石的な存在から金属にメタモルフォーゼさせて単純な建築素材にしたり様々である。
 どうやら彼らは酩酊街と関係があり、また彼らと袂を分かった存在であるようだ

この度皆様のご依頼でありました「永遠に残る███村」のご希望に沿う為、弊社一同心を込めて全力で向かわせていただきました。
本日深夜、記念すべきミレニアムの瞬間に、私達は皆様に「永遠の███村」をご披露致しましょう。
微力ではありますが、笑顔溢れる皆様の助力となれました事、大変嬉しく また誇りに思います。
この笑顔の村が終わりなく続く事を祈り、締めの言葉とさせていただきます。

皆様の今後より一層のご発展を、心より祈念申し上げます。

謹白

SCP-619-JP内部で撮影された映像から確認できる文書より抜粋


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