画像生成AI(主にStable Diffusion)について

今話題の画像生成AIについて、私の知見と意見をまとめておきたいと思います。法律の専門家ではないので法律の各項目については私が調べた情報を記述しています。

「ぶっちゃけ、法的にはどうなの?」という質問に対する考え

といっても、それぞれの部分部分において異なるので、順番に話していきます。
1. 学習
研究目的での使用や引用、著作物の情報解析や情報処理のため必要な場合、著作者の許可を得ない使用や、著作権者の権利の制限が法律として定められています。
よく「著作権者の意向を無視して学習したものは権利的にアウト」としている人が多いですが、これは正解とは言えないと思っています。どちらかといえば倫理的な側面の問題です。ただし、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」には上述した情報解析や引用としての利用は認められないため、「特定の人物の絵柄を表現することを目的とした学習」等については法的にも良くないものであると考えています。
2. 生成
これも概ね問題ないと考えています。
3. 公開/商用利用
不特定多数の者にその著作物が伝達される場合には私的利用とはならず、尚且つ「Midjourneyのような元から商用利用可能」ではないNovelAIリークモデル等に類するものを商用利用した場合、法的に良くない*ものであると考えています。(*:法的根拠は不明。わかる人がいたら教えてください)
Discordの身内コミュニティのような特定少数への有料ではない掲示はギリギリセーフなのかなとは思っていますが根拠はありません。
4. 禁じられている用途での使用
これは有無を言わさずアウトでしょうね。多くのAIイラストレーションで禁止されている政治的主張への使用、センシティブ画像がガイドラインで禁じられているジャンルへでの公開等が該当します。もとよりAIというか人間の絵でもアウトではあるのでAIのせいかと言われたらそうとは言えないですが、よりそれをしやすくなったということに対しては人間に対処する義務があると思います。技術が悪いわけではありません。

倫理的な問題

法的にも倫理的にも人間に受け入れる基盤が整っていないという一言に尽きます。署名にフェイクが混ざっていたのを検証していないとか、まるで恒久停止を求めるかのようにAI反対派の人達が切り取って伝えているとかそういうことを除けば実際にイーロン・マスクらが「GPT-4より強力なAIを6ヵ月開発停止」させる署名を人間側が(法的に/倫理的に)受け入れられる時間を作るために提出したのは事実ですし、大荒れのYouTubeのコメント欄から見てもこれはかなりの問題です。
ただ、だからといってAI技術の全てを否定すべきとは考えません。元エンジニアとしても10年くらい絵を描いてきている立場からも言えますが、CLIP STUDIOに搭載されているいくつかの機能はAIイラストレーション技術に似ているところがあります。(自動彩色、自動影付け等)
これによって助かる人々がいるのは事実ですし、何よりAIイラストレーションそのものも「AIイラストをそのまま利用する」ということでなければ「Prompt S/Rによる表情、衣装、色のブレインストーミング」「構図や(時代を指定して)塗り方を参考にする」などの使用法があります。

更に、現在2023年4月においてはAIの学習を妨げる「Glaze」というソフトウェアが誕生し、DVDのリッピング防止システムのような役割を果たしてくれています。
「DVDのリッピングなんかすぐに破られるから意味がない」と考えるのは正しいですが、この技術が開発された意図はそこではないと考えています。
「学習防止」という明確な意思表示をイラストに付加させてあげることで、「倫理的な問題」から「法律的な問題」へと昇華させることができるのです。「学習防止」という意思表示がされたイラストを取り込んで学習した場合は違法になるという要件が成立すればの話にはなりますが、DVDには実際に「技術的保護手段の回避による複製は違法である」という要件が著作権で定められているため、AIイラストレーション用の項目を作成すればよいと考えます。

「構図トレパク問題」に対するめちゃくちゃ個人的な意見

最近見た問題としては「構図トレパク問題」というのがありますが、これはAI誕生以前から「トレパク問題」として存在していたものがツールを変えているだけで、新たに顕現したように「見える」問題だと考えています。実際AIイラストレーションを触っててAIに自由に構図を考えさせたほうが良い構図ができるので構図トレパクをしている人の気持は微塵もわかりませんが、どちらも同じ問題です。何故かというと「パクリ」になるかというのは「類似度」が問題になるからです。著作権は構図やポーズそのものには存在せず、人間の表現が主体となります。絵描きのトレースでもキャラが変わっていたりポーズが変わっていたり一部トレースである場合は見逃される場合も多く(※)、AIによる構図トレスでもあきらかに再現元が特定できる場合は問題になると考えます。
(※: そうではないことも多いし、変わっているからといって許される問題ではない)

最後に

トータルで言えば私はAI推進派ではありますから、少しAI側に寄っている意見であるというのは否定できません。ただし、前述した通り「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」の問題や、倫理的な問題については解決すべき課題として捉えているので、「何が何でもAIの技術をとにかく発展させるんじゃあ!AIイラストレーションは合法じゃあ!」と主張するものではありません。

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