検査してみたら精子がなかったので多分あれを切る話 『なにモロ出し編』
・検査結果報告
前回受けた諸々の検査結果を聞きにわざわざ午後休をとり病院までやってきた。
「えーーーっと今回の検査結果ですねぇはいはい…あーーーこれぇ…ねぇ…」
俺以外誰もいない待合室で三十分近く待たされた挙句、椅子に座って第一声投げかけられた言葉がこれである。なんだよ怖がらせるな。
ーーーー本作は『検査してみたら精子がなかったので多分あれを切る話』
玉隠し編・種流し編・ハメ殺し編から続く解答編です。
先に出題編三作の購読を強く推奨します。ーーーーーー
「と・り・あ・え・ず血液検査の方は異常なかったですはい」
血液検査は…”は”嫌な予感がする。何か別の部分で異常があったんじゃぁないか、そんな言い方をするなんて。
「ええと…睾丸の方も特に異常はないですね。なんならめっちゃくちゃ立派です。通常の成人男性の三倍はでかいですよ」
またキンタマを褒められた、喜んでいいのやらなんとやらだ。ここ数か月で何回褒められたことか。いや待て三倍ってなんだ三倍って、ありえないだろう。本当にこの医者大丈夫か?とも思いつつ話は続く。
「本当にねぇ…豊中さん(仮名)立派なキンタマでもうねぇ…んもう精液どっぱどっぱ作ってますよ。どっぱどっぱ…どっぱどっぱ…」
なんだかこの人気持ち悪い。後でアンケートに主治医が気持ち悪いって書いておこう。
「でもね…」
でた、やはり何かあるのだ。
ここにきてようやく俺の顔に緊張の文字が浮かび上がる。
・本当の症状
「結論から言うと……あなたの金玉は三つあります」
予想外の言葉に動揺が隠せなかった。
「え?キンタマが三つですか?」
「ええ、だからさっき三倍って言ったんですよ。一般的な成人男性の三倍のキンタマ」
「え?三倍だったらキンタマ六つじゃないんですか?」
「うるせぇなぁ!こまけぇことごちゃごちゃと!キンタマのちいせぇやつがよぉ!!」
「え?ちいさいんですか?」
「やかましい!!!」
理不尽に怒られてしまった。三十過ぎて病院で怒られるなんて、柄にもなく傷つく。少しの静寂の後コホンと咳ばらいをし医者は続ける。
「まあ正式な病名で言うなら金玉三つ症ですね」
「金玉三つ症」
「ああ違う違う『another one bites the dust』の発音で」
「金玉三つ症」
「ほんとにいってやんのばーか」
ぶちのめすぞてめぇ。
「まあまあこちらをどうそ」
医者は黒目だけで笑ながら仰々しい冊子を取り出す。
ここに自分の状態について詳しいことが書いてあるらしいが、まあこれは家で読んでおいてくださいとのこと。
「いやぁしかし実に珍しい。僕の経験上ね、キンタマが三つある人はあなたと長州力さんだけですよ」
またキンタマを褒められた。
・手術の話
さて、この金玉三つ症は何が問題なのか。
医者の話によると、なんでも本来キンタマは球袋内部でペテンと呼ばれるたんぱく質の塊に支えられて大体真ん中で浮くように固定されるのだが、このペテンがゼンブウソダモン酸と反応し三つ目のキンタマに変質、そしてこの三つ目のキンタマが俺の精子が外に出る道を塞いでしまっているとのこと。
なので今後の方針としては、その道を塞いでいる球をなんとかしてどかせる。実に簡単な話だった。
「ではさっそく袋を切り開いて三つ目の球を取り出しましょうか」
いつの間にやら医者はゴム手袋を装着し、メスを手にしている。
「ちょちょちょっとまってください!!!いきなり切るんですか?もっとこうあるでしょう!?薬で散らせるとか超音波で崩すとか!」
「うるせぇなぁ!!ごちゃごちゃごちゃごちゃ!!キンタマのちいせぇ野郎が!」
「え?ちいさいんですか?」
「やかましい!!」
また怒られてしまった。
次回『鼻明かし編』に続く
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