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なげやりだったのに受かった資格

実は私、昨年夏にとある資格を取ったのだ。


発端は一昨年の冬、大好きなバンドのライブ参戦を再開したことだった。

たまたまSNSで大好きなバンドが35周年記念ライブをすることを知った。

すでに脱退してしまったメンバーもお祝いにかけつける盛大なパーティーライブになるとのことで、どうしても行きたくて身近な人に声をかけるも見事に皆に断られ、一人で新幹線乗って行くのもなーと夫に愚痴っていたら夫が「リカ誘ったら?」と。

リカは結婚前の数年すごく仲良くしていたバンド関係の友人だったのだがお互い結婚して住む場所が結構遠くて共働きで核家族だったのですっかり疎遠になっていた。

最後に会ったのは確か借りてたベビーベッドを返しに行った時だから20年近く会っていなかったことになる。

それでも毎年年賀状で近況は伝えあっていたし、LINEも知っていて、数年に一回は数時間電話で長話をする程度の関係性は保っていた。

ダメ元でリカにLINEするとすぐに、本当にすぐに返信が来た。

「行くっ!」


駅で待ち合わせた20年ぶりに会うリカは全然変わってなくて笑ってしまった。

リカも同じことを思っていて、二人で笑った。

ちょっと豪華な駅弁を買って新幹線の指定席で二人してはるばる遠征した。

リカは翌日昼から仕事に行かなければいけないとのことで帰りは二人夜行バスで帰宅した。


そっか。子供大学生になったらまたこんな生活出来るのか。

お互い子供が大学生になったし仕事もしてるのである程度の余裕もあるし、また色んな所にライブ観に行こうってリカと大盛り上がりだった。

ただ、我が家はそれほど家計に余裕があるわけではない。

私の給料なんて雀の涙だし。

あれ?待てよ?子供大きくなって手がかからなくなって。

私、今のまま定時で帰れて誰でも出来る仕事にすがりついてる意味ある?


早速ネットで調べると、職種は違うけれど結構な額がもらえる年齢不問初心者歓迎の仕事が意外と多いと知った。

今より上乗せしたお給料がもらえたらはみ出た分をライブに費やせるな。


しかし、最大のネックは私が中卒なことだ。

結構な額がもらえる仕事には学歴不問の文字は見当たらない。

むしろそこには触れられていない募集の方が多いが当然中卒では受からないだろう。

日々嬉々として大学に通う娘を間近で見ていたこともあり、学生って楽しそうだなという憧れも手伝い、私は途方もないプランを思いついた。

よし、今から大卒取ろう。

通信制なら娘の半額程度で卒業出来るらしい。

そのくらいの出費なら年収が今より高い仕事につければあっという間に巻き返せる。


早速娘に教科書を借りて私は試験勉強を始めた。

実は高校を中退した翌年に母親に勧められ渋々受けたのだ。

当時は大検という名前だったが今は高卒認定というらしい。

これを取っても学歴が高卒にはならないけれど、学歴が中卒でも大学を受験する資格を与えられるという類のもの。

当時いくつか合格していくつか不合格だったので不合格だった教科のみを受ければ高卒認定合格ということになる。

よくよく調べると当時とはかなり内容が変わっていて、私が受かった科目の中にはそれだけでは1教科合格とみなされないものも含まれていた。

当時の合格証などもすでにどこに行ったか分からなくなっているため、文科省に問い合わせて自身の部分合格証を取り寄せた。

結局私には日本史・世界史・生物基礎の3科目が必要なようだ。

確か不合格は2科目だったはずなのだが、理科のシステムが変わり私の頃にあった「理科Ⅰだけ合格してればOK」が「選択式の2科目を合格しないとNG」になってしまっていた。

旧理科Ⅰは「科学と人間生活」と呼ばれるものに相当するらしく、それとは別に生物・化学・地学・物理の基礎からどれか1科目合格する必要があるとのこと。

他は全くもって分からないが生物基礎は多分一般常識で大丈夫だろう。

葉緑素とか光合成とかゾウリムシとか、そういう感じのだよね。

あまり時間もないので生物は勉強対象からはずす。

問題は日本史と世界史だ。

暗記、苦手なのだ。

数学とか英語とか国語などの多少キーワードなり文法なり公式を覚えていれば後は考えてなんとか回答をひねり出せる科目とは違い、日本史と世界史はガッツリ暗記だ。

覚えなければいくら考えたところで年号が出てくるわけでもなし、画像を見てこれが誰かなんて分かるわけもない。

そう、当時も勉強しなかったのでこれ落としたんだったな。

最初は真剣に勉強していたのだがすぐ飽きる。

なんだか全然知らない事ばかりでノートも真っ赤だし。

さっき見て答え覚えたばかりのところもう忘れてるし。

で、ちょっとだけ勉強してはネットに逃げる。

そんな逃げたネットの中で見付けたのがこのnoteという場所でもあったのだ。

勉強の合間にnoteをしたためるはずがいつの間にかnoteを書くことに膨大な時間を費やすようになり、当然勉強する時間は取れず。

しかもコロナが始まってしまい、収束の目途が立っていない。

大学に行って散財して果たして元が取れるのか?

そうこうしている間に年齢も上がって来てチャンスはなくなってしまうのではないか?

そもそもライブすらあれから全てが中止になっている。

今動くのは得策ではないかもしれない。

結局私は大学受験を諦めたのだが、運悪くすでに高卒認定の受験手続をしてしまっていた。

高卒認定自体を受けないという選択肢もあったが、せっかく多少なりともお金も払ったことだし、ダメ元で受けるだけ受けてみるか。

そして受けた日本史と世界史。

半分以上が知っている事柄だった。

つまり、自分はまだ生まれていなかったけれど親から聞いたことのある事件や出来事、そして自分がすでに生まれて歩んで来た歴史。

この2科目については受験年齢が高ければ高いほど勉強しなくても受かる確率が上がると言えるだろう。

当時私が見たネット記事では合格ラインは60点と書いてあった。

自己採点で生物基礎は80点越えだったが日本史と世界史は50点台だったので不合格を覚悟したが、そもそも大学受験はもう諦めていたので特に痛くもかゆくもない。

あぁ、やっぱりあの程度の勉強ではダメなんだなという認識が出来るに過ぎないという予想を覆し、3科目全てに合格した「高卒認定合格証書」なるものが我が家に届いた。

結局大学に行き学歴を上げることは今は諦めているのだが、この先また事態が変わった時、まずは高卒認定から受けなければいけないという手順が進んだことは私にとって価値のある出来事だった。

うん。昨年はそれくらいしか価値のある出来事って起こらなかったんだよな。

もう元気な老い先があとどのくらい残っているかも分からないのに、早く事態が収束してくれることを今はただただ願うばかりだ。


※この記事を書くにあたり、科目名があやふやだったので調べたサイトには高卒認定の科目合格目安は40点と書いてあった!

どうりで私、受かってたはずだ。



私の経験や考え方が少しでもお役に立てたなら嬉しいです(◍•ᴗ•◍)