星カフェはいい店だろ

自分でいうのもなんだけど、星カフェSPICAは本当にいい店だと思っている。

天文系のコンセプトを持つお店は数あれど、その追随を許していないと自負している。
プラネタリウム解説も、天体観望会、酒の取り揃えも、どこよりもまじめに取り組んできた。特に星空案内においては、「真似できるもんならやってみろ」とすら思っている。

その甲斐あってか、今年11周年を迎えようとしている。
当初1年保たないと言われた店だ。
スタッフやお客さん、僕の身の回りの全ての人に感謝したい。

11年もやれば流石に”コツ”が見えてくる。
メニューやグッズ、接客、星空案内、プラネタリウム解説、経営。
僕は苦しみながらも経験を積み、問題を改善し、自分が「楽しい」と思える仕事を作り上げた。

でも最近思うんだ。
ここは僕の城だけれども、スタッフの城であり、星が好きな人の城であり、そしてこれから星を好きになる人の城であるべきではないか。

星を楽しむということに、ようやく新しい風が吹き、ブームではなく、うまい言い方が見つからないがなんらかの形で、いま世界に、僕の生きるこの世界に根付こうとしている。
星カフェSPICAが切り開いたとは言わないけれど、その一端を担ったと言ってもいいでしょ。言わせてよ。
11年前、星カフェSPICAはその新しい世界の入り口だった。そしてこれからも入り口でありたい。

僕は歳を取った。
得たものも多いが、自分の感性が相対的に硬直していくのを感じる。経験を積めば積むほど、それは自信になるけれど、僕の感性は柔軟性を失っていく。

僕は星を楽しむということを、あまねく人々に知ってもらいたいと思っている。特に、若い世代には。
星カフェSPICAは僕が26歳の時にオープンした。
天体観測はおじさんの趣味だった。異論は認めるが、僕にはそう見えていた。
機材は高額だし、知識のハードルも高い。「観測地へ行かねばならない」という先入観も根強い。

その全てをひっくり返すお店にしていく。
もっとカジュアルに、生活に、来週の予定に、「天体観測」と入れられるような。そういう場所にしようとした。

そこそこできてるんじゃない?

反骨的な精神があったのは否定しない。僕はそもそもそういう人間である。誰にも負けたくないし、自分の星空案内をぶつけてやる、と思ってきた。

ただ、僕の負けず嫌いや反骨精神と、星カフェSPICAがいい店であることは別だ。
このまま、僕の感性でやり続けたら、この店は僕と同じように歳を取る。

そしたら、せっかく築いた広い入口が、また狭くなってしまう。既に得たもののある中年が、今この門を支えることができるだろうか。

今後も面白いものを作る自信はある。でもそれは、僕という人間が創るもので、星カフェSPICAに必要なものとは限らない。

その葛藤を、解消する術はそう多くはないよね。

という話。すぐにどうこうではないけどね。

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