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雨模様3

ある晩、あたしはミヤオを抱いて、夜の散歩に出てみた。季節は初冬で、時たま頬を殴るように強い突風が吹き、あたしはミヤオをぎゅっと抱きしめるとニャオと小さく鳴いた。

私は新宿区の箪笥町という、ちょっと不便な所に住んでたのだけど、変な名前からこの町を選んだ。バイト先にも近いし、夜遅くまで開いているスーパーがあるのはとても便利だった。

店長からもらったネルシャツを羽織り、着の身着のまま夜の裏通りを徘徊した。私は「自由」を体感していた。何より私は自由を愛していた。そのせいで、損をしたり遠回りをしたりする事もままあったが、そんなことであたしは、何かに束縛されるような、人生の貴重な時間をすり減らせるあれこれは避けたかった。

あたしは天を仰ぎながらクルクルと回ってみた。「あはは」、思わず手を離した瞬間、ミヤオが腕から離れた。「大変!」、ミヤオは地面に降りるとそそくさと路地の更に奥深くへと行ってしまった。

「ミヤオ!」あたしはあるったけの言葉で呼んだが返事は無かった。

つづく