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コロナワクチン株のこれから。mRNAワクチン一強時代の曲がり角。集団免疫作戦の次に来るもの-Part.1

今年に入りすっかりnoteをご無沙汰してしまいましたが、久しぶりに更新したいと思います。

昨年来ずっと追いかけているコロナワクチンの話題ですが、バイオンテックやモデルナ、ファイザーといった企業の株は空前の高値に湧いています。一方、インフルエンサーなどによっては高値警戒を呼びかけるなど、再び混沌としてくる可能性がありますので、現時点での状況をまとめておこうと思います。

先に結論を書きますと、コロナワクチン株市場は新ステージに入り、またしばらく遊べるようになりました。

最近コロナワクチン株に関心を持った方は、去年トランプ政権時にワープスピード作戦でワクチン開発を進めたことや、バイオンテック・ファイザー連合はその資金を受け取らなかったこと、モデルナの経営陣が株を売ってインサイダー疑惑が吹き荒れたこと、mRNAワクチンの認可をめぐってホワイトハウスとCDC,FDAが権力争いしたことなど、気にもしないかもしれません。しかし今後のコロナワクチン株を占う上で、そういった政治的な動きや企業体質などは今一度、振り返っておいた方が良いかもしれません。noteの過去の記事をご参照ください。

さてここで取り上げたいのは、今後コロナワクチン市場をどう捉えていったら良いかということです。現時点では、先進国のコロナワクチンはほぼmRNAワクチンが寡占しています。アストラゼネカやジョンソンエンドジョンソンも、それぞれ英国・米国でお墨付きを得てワクチンを販売していますが、副作用の懸念などで一進一退です。この辺りの状況はよく知られているので説明は省略します。

今後のコロナワクチンについては、ここ数週間で大きな動きがありました。それは
1. デルタ株の登場により若者やアジア地域と言った昨年被害の少なかった層がダメージを受けている。感染力は水ぼうそう並み。
2. mRNAワクチンで出来る抗体が接種後半年ほどで減少している。
3. ワクチンを打っていても「ブレークスルー」でコロナに感染する。
4. ロングコービッド (リンク先記事)という形で、コロナ感染後「重症ではないが長期に渡る後遺症が残る」リスクがある。
といったことです。

日本のメディアを見たり日本人の知り合いと話しているとなぜかあまり危機感がないようですが、事態は大きく変動しています。ポイントは「mRNAワクチンの登場で決着したと一瞬思われていたワクチン事情が、再び袋小路に入る気配がある」ということです。

インドを発祥としたデルタ株は、つい2ヶ月前はインドの地域的な事象と思われていました。しかし去年のコロナ出現時と同様にあっという間に世界の主流になりました。武漢型・英国型(アルファ)までは
・アジア・オセアニア地域
・暑い地域
・若者
は被害が軽かったのですが、デルタ株の登場によりその前提は崩れました。昨年被害が少なかったため経済再開を進めたり、政治がコロナ対策を滞らせていた国は、残念ながら今感染のピークを迎えています。むしろなまじっか去年罹患した人が少ないために、免疫保持者が少なく被害が深刻です。東南アジアでも日本人が亡くなるケースが増えてきました。
つまりコロナの変異というのは、今まで被害が少なかった層=まだ免疫が完了していない層を狙って広がるように進化していますので、今大丈夫なところも後で襲撃を受けるということです。国境閉鎖時のデルタでさえこのスピードですから、経済再開した時に感染拡大を防ぐのは不可能でしょう。

現時点では各国ワクチン接種を促してコロナの懸念を最小化することに注力していますが、mRNAワクチンについては抗体が長持ちしないことは最初からわかっていました。効き目が減っていく代わりに副作用が小さいという利点がある訳です。ブースターショットを打たないといけないというのはほぼ既定路線。逆にDNAワクチンなどは(メーカーは安全と言ってますが)、構造的に副作用が強くなるために認可されていません。よってmRNAワクチンが合わなかったり手に入らない場合は、比較的安全なウイルスベクターワクチンを使うか、タンパクワクチン技術を確立するか。いずれにしてもブースター必須です。コロナによる被害が酷くならない限りこの傾向はしばらく続くと考えられます。将来もし変異種が猛威をふるい、人々が大きなリスクを許容してでもワクチンを打ちたいということが起きれば、1回打って終わりという強いワクチンが登場するのかもしれません。

「ブレークスルー感染」はワクチン開発企業にとってある意味ゲームチェンジャーです。せっかくワクチン接種しても、重症化したりロングコービッドに悩まされるようなことがあれば、ワクチンを打つ人が減ってしまいます。mRNAワクチン一択の状況では、効かないかもという事実は受け入れ難いですし公衆の利益に反しますから、少なくともしばらく公に出てこないでしょう。しかし時間が経つにつれて新しいワクチンが登場すれば(選択肢が増えれば)、堰を切ったように報道されるようになると思われます。株の投資家としては勢力図が書き換わる可能性が残ります。

またロングコービッドについては統計に出ない重症患者と言えます。WSJによると主な症状は
「ロングコービッド患者の大半は、筋肉の痛み、睡眠障害、息切れなどとともに、最大の症状として倦怠(けんたい)感を挙げている。インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者が実施した大規模調査で分かった。より小規模な患者グループでは、息切れ、胸の痛みや圧迫感など、呼吸器系の症状が圧倒的に多かった。別の研究では、「脳の霧」と呼ばれる認知に支障が出る症状も患者に共通してみられた」
といったもの。主に脳と呼吸器へのダメージです。アルツハイマーとの関係も疑われています。これが一時的なものか一生続くのかはまだわかっていません。F1レーサーのハミルトンもロングコービッドが疑われています。今後「入院するか、死亡するか」だけでコロナの被害をカウントしていては、真のリスクを過小評価する可能性があります。

一方、日本人としてはmRNAワクチンの副作用が思ったより強いのではないかという疑念もあります。モデルナアームや高熱といった副作用は日本で多く聞きます。原因がどこにあるのか、去年コロナの被害が少なかったことと関係あるのかなど、今後の研究が待たれます。

これらの状況を総合すると、コロナとの戦いはmRNAワクチンの登場でケリがついたとは言いがたいでしょう。著名なインフルエンサーなどでも「もうすぐ集団免疫が実現しコロナは下火になる」という意見がありますが、変異は続きブースターショットの必要性が認められた今となっては、「ブースターにふさわしいワクチン」を巡って、また「手軽にコロナ予防、治癒できるワクチン」を巡って、ワクチン市場は戦国時代に突入したと考えられます。
今まで2回くらいで終わると思われていたコロナワクチンが、毎年世界中で打たれるであろう巨大市場になったと言うことです。主流になるのは改良型mRNAワクチンなのか、それとも他のものなのか。

ツイッターでも共有しましたが、Forbesに集団免疫作戦が成功しないだろうという記事が掲載されましたのでそちらもご参考ください。

もちろん希望的観測としては、ワクチン政策により免疫が広く行き渡った結果、コロナが下火になりインフルエンザ同様の被害に収束していくという可能性もあります。実生活ではそれが一番ですし、そのストーリーを元に関連株は下がっていくかもしれませんけれど人類的には歓迎すべきことでしょう。

次にFDAの認可をめぐるワクチンの今後と株式投資について書きたいと思います。



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