見出し画像

コロナワクチン株のこれから。mRNAワクチン一強時代の曲がり角。集団免疫作戦の次に来るもの-Part.2

さてPart.1では背景について書きましたが、もう少し株投資に関連するところ=アメリカFDAのワクチン承認と関連株について書きたいと思います。

アメリカのFDAは去年、コロナ蔓延とともに独立性を失いつつありました。通常は何年もかけて審査する薬の承認に関し、Covidがあまりにも感染スピードが早かったため、「薬を投入せずに亡くなるリスク」が「副作用で亡くなるリスク」を圧倒的に上回ったからです。その結果、厳正な審査ステップを変え、一旦承認して使用を進めて検証していくというスタンスに変わりました。当時のトランプ大統領が自分の功績を選挙前にアピールするために、FDAの人事に圧力をかけたこともありました。
その後mRNAのコロナワクチンは、かつてないスピードでEUA(緊急使用承認)を得ました。周知の通りです。アメリカの行政機関であるNIHはモデルナと共同で治験を進め、官民一体のワクチン開発も後を押しました。
そんなこんなでFDAは、治療薬のレムデシビルなどを含めEUAを連発した経緯があり、今コロナが落ち着いたタイミングで審査を厳格に戻していると思われます。mRNAワクチンはEUAのままでまだ正式な認可を得ていません。(あと数週間で認可されるようですが)。よってmRNAワクチン以降のコロナワクチンは出て来ず、結果mRNAワクチンが支配的になっている訳です。

ここで押さえておくべきポイントは「EUAとは緊急承認であり、必要がなければ本来FDAは緊急で進める必要はない」ということです。他企業のワクチン株ホルダーは焦らされることになります。

もしこのままコロナが鎮火するのであれば、新しいコロナワクチン登場はチャンスがほぼありません。数ヶ月前まではそうでした。しかしmRNAワクチンがブースターを必要とすること、またブレークスルー感染が認められたことにより、感染を防ぐ戦いは「第2ステージ」に進んだと言えます。俄然、他のワクチン株が息を吹き返すというシナリオが”株式市場では”進んでいます。

先週NovavaxがFDAへのEUA申請を延期しました。CEOによると、製造を委託しているテキサスの富士フイルム系列の工場が品質検査をパスできていないとのこと。またワープスピード作戦に伴って派遣されている外部仲介者が、EUA申請を却下しているとの話も出ていました。同様の話は昨年イーライリリーが、コロナ治療カクテル抗体薬をEUA申請する際、EBS・エマージェントバイオソリューションズの工場の設備に対しても出ており、FDA審査のハードルとなっています。
なおNovavaxは活路をアメリカ以外に求め、インド、フィリピン、インドネシアとWHOにEUA申請すると方向転換しました。その際の製造パートナーはアメリカではなくインド血清研究所です。このようなケースが増えるとワクチン製造がアメリカ以外に流れていく可能性はあります。

ワクチン株の未来は、アメリカがコロナワクチンを急いで承認、投入するメリットがあるか?という状況と紐づいています。現時点ではFDAは、mRNAワクチンを急いで認可した手前、その使用と対応に集中しています。被害は収まりつつあり優先順位は全国民にワクチンを打たせることですから、新しいワクチンを承認するメリットは薄いです。せいぜい「今のワクチンが使えない人に打ってもらう」という動機付けしかありません。イコール反mRNAワクチン運動や副作用などの問題が大きく出ない限りは、審査を早く進めるキッカケがない。(ただし一部、ワクチン未接種集団との分断が問題になっているので、その緩和のためにワクチンを増やす可能性はワンチャンあります。)
それを陰謀論風に「FDAが審査を遅らせている」と見るか、冷静に「通常に戻った」と見るか、言い方の違いこそあれ結果は同じです。

つまり新しいワクチンはアメリカでしばらく承認されません。

従いまして株投資目線ですと、今後のワクチンメーカーの視線は下記の市場に注がれます。

1. アメリカ以外でmRNAワクチンが無い「未ワクチン市場」
2. mRNAワクチンの供給が遅れている「ワクチン遅延市場」
→例えば日本もmRNAワクチンが遅れているためWHOのCOVAX,アストラゼネカ製ワクチン使用に傾いている
3. 初回を他ワクチンで打ったがブースターとして新しいワクチンを模索している「ブースターショット市場」(国は1発目のワクチン選択をミスしてもガラガラポンできる)
4. EUなどmRNAワクチンの値上がりに困っている「不満市場」

これらの市場でどの企業がシェアを取れるかということです。携帯電話業界みたいな話で、アップルなどが独占している市場を、価格・納品の迅速さ・使い勝手などを駆使して他社が奪えるかという競争です。この市場は今見えているコロナワクチン市場より、ずっと大きなものになります。
アストラゼネカにジョンソンエンドジョンソン、中国ワクチン、ロシアワクチンといった既存勢。またNovavaxやCurevac、インドのCovaxin、Oravaxなど、新勢力が機会を窺っています。

アメリカFDAは新しいコロナワクチンを急いで認可せず、自国でブースターを行うことを優先しますので、他国とのギャップはすぐ埋まりません。今までアメリカにおんぶに抱っこだった諸国が、自分でワクチンを調達しないといけなくなります。アメリカより先にワクチンを承認して「猫の首に鈴を付ける」のはどこの国か。取って代わるのはどの企業のワクチンか。そこに注目してワクチン株は投資しましょう。

※記事中の下線部分には情報ソースをリンクしています。 投げ銭や感想、良いねなど、反応があると励みになります。