見出し画像

hidekのエンジニアと長話 第11-1回【全文書き起こし】~ゲスト:PKSHA 共同創業者 山田尚史氏~

stand.fmで配信中の「hidekのエンジニアと長話」11人目のゲストは、PKSHA Technology 共同創業者の山田尚史さんです。

「hidekのエンジニアと長話」は、メルペイVPoEのhidek(木村秀夫)さんをメインパーソナリティにお招きし、ゲストエンジニアとともに作っていくスペシャルトーク番組です。

第11-1回の今回は、PKSHA Technology 共同創業者の山田尚史さんをお招きして、学生時代に弁理士資格を取得した話やOSSライセンスとクラウド業者の対立、特許権などについて語りました。

※本記事は、2021年11月19日にstand.fmで配信を開始した番組を書き起こしたものです。

ゲスト
山田尚史 氏 @naofumi0628
株式会社PKSHA Technology 共同創業者

メインパーソナリティ
hidek(木村秀夫)氏 @hidek
株式会社メルペイ VPoE(Vice President of Engineering)

パーソナリティアシスタント
gami(池上)氏 @jumpei_ikegami
株式会社プレイド エンジニア

gamiさんのnote

gamiさん(以下、敬称略):皆さんこんにちは。「hidekのエンジニアと長話」進行役のgamiと申します。今回もhidekさんと一緒にゲストの方のお話を聞いていければと思います。この番組への感想は、stand.fmのコメント機能、またはTwitterのハッシュタグ、#hidekのエンジニアと長話、この番組のタイトルと同じハッシュタグまでお願いします。というわけで、メインパーソナリティはこの方、hidekさんでーす。よろしくお願いしまーす。

hidekさん(以下、敬称略):よろしくお願いしまーす。こんばんはー。

gami:こんばんは。お願いします。

hidek:そうですね。「雑談コーナー」を最初にいつも設けてるんですけど。たまにはgamiさんのネタでも、と思って(笑)。gamiさん、note書いてますよね、結構。

gami:そうですね。実は、僕はですね、「個人でアウトプットを継続する」というのを結構やってて。もともとYouTubeとかもやってたんですけど、最近はnoteだけ残っていて。週1回くらい書いてますね。

hidek:結構、改めて見るとボリューム大きくて。内容がいわゆるDX向けとか「SaaS使っていこう」みたいな話が多いなー、という風に見えるんですけど。これ、完全に個人の話なんですか?

gami:そうですね。このnote自体は、個人で、ひとりで細々書いてるんですけど。割りと、でも、僕、普段の仕事……。そんなに普段の仕事の話、ここでしてないかもしれないですけど。「KARTE(カルテ)」っていうSaaSのテクニカルサポートとか、お客さんに対してどうやって、SaaSプロダクトの使い方を教えるか、とかですね、「どうやってうまく使ってもらうか」みたいなのをサポートするようなエンジニアの仕事をしてるんですけど。結局、ベースとして、「世の中は今こうなっていて、テクノロジーというのはこういう風に位置づけられていて」みたいな話とかのベースの理解がないと、お客さんの中でKARTEっていうプロダクトをどうやって使えばいいかとか、どう社内に位置づければいいか、みたいなのが説明しづらいな、っていうのもあるので。そういうベースの、ある種「デジタルリテラシー」みたいなのを伝える活動をしたいな、と思って、細々noteとかでもやってる、っていう感じですね。

hidek:へー。結構、個人と仕事と両立させたような?

gami:はい。そうですね。

hidek:すごい。「継続は力なり」じゃないけど、めっちゃちゃんと書いてて。はい。僕、昔、実は「VP of Engineeringとは?」っていうのを会社に書かされて書いたんですけど、それでおわっててちょっと反省気味です(笑)。

gami:(笑)。

hidek:もうちょっとがんばって書こうかな、と一瞬だけ思いました。

gami:そうですね。「継続的にブログ記事書く」みたいなのも、強制力がないと書けないので、noteの有料マガジン化して無理矢理書くようにしてますね。

hidek:なるほどね。素晴らしい。

gami:いえいえ。ありがとうございます。掘っていただいて。

hidek:はい。応援してます。

ボードゲーム好きの山田さん

gami:ありがとうございます。そしたらですね、本日もゲストの方をお迎えして話を聞いていければいいのかな、と思います。本日のゲストは、PKSHA Technologyの共同創業者である山田尚史さんでーす。山田さん、よろしくお願いします。

山田さん(以下、敬称略):よろしくお願いいたします。山田です。

hidek:よろしくお願いしまーす。

gami:そしたら、山田さん、簡単に自己紹介など、最初にいただいてもいいでしょうか?

山田:はい。私はですね、もともと東京大学の松尾研究室で機械学習を学んでいた、というところがありまして。大学の卒業後、PKSHA Technologyという機械学習を活用した企業を創業いたしました。で、特にどこにも就職せずにいきなり起業した、っていうのはちょっと珍しいかもしれないんですけど。それで、ありがたいことに、やっぱり、機械学習技術の盛り上がりとともに、いろいろな会社さんから引き合いもいただきまして。創業から大体5年くらいでマザーズに上場しまして。で、去年までは、私自身CTOという立場で取締役を務めておったんですが、今は技術フェローという立場で、いわゆる技術顧問という立場に退きまして。6月からはマネックスグループの社外取締役として活動しております。どうぞよろしくお願いします。

hidek:よろしくお願いしまーす。はい。今回、前回のLayerXの榎本さん(mosさん)からのご紹介なんですけど。榎本さんからメッセージいただいているんで一応紹介させていただくと、「PKSHA Co-Founderで、ボードゲームではいかんなくその地頭を発揮される山田さん。あまり表に出てこない山田さんから、事業・組織・技術、どのトピックでもよいので、深掘って聞いてみたいと思っていました」というメッセージをいただきました。榎本さんとはどういう関係なんですか?

山田:榎本さんとは、友達の友達、の感じから関係が始まって。今ではボードゲーム仲間で。これ、全然狙ってないですけど、昨日、ちょうどmosaさん家でボードゲーム遊んできたんです(笑)。

hidek:あ、そうなんだ(笑)。

山田:ただ、コロナの間はできなかったので、2年ぶりくらいですかね。はい。やっぱり、久々にリアルで会って卓を囲むとおもしろいなー、とちょうど思っていたところなんですけど。「ボードゲーム友達」っていう関係ですね。

hidek:なるほど。僕は、前職がDeNAというところにいて。で、DeNAにも、結構「ボードゲーム大好き人間」っていうのがまあまあいましてですね。この番組でも出ていただいたzigorouさんって方がいるんですけど。彼が、ボードゲームを会社に持ってきて、それこそmosaさんの先輩にあたる人なんですけど。で、ボードゲームやりまくって、僕も付き合わせれて、って感じなんですけど。ちなみに、昨日、mosaさんとやったボードゲームって何だったんですか?

山田:『モダンアート』っていう、競りをやるゲームなんですね。ユーザー同士のインタラクションだけで、ものの、絵なんですけど、絵の価値が決まっていって、それを使って一番儲けた人が勝ち、っていう、結構おもしろいゲームが一番盛り上がりましたかね。あとは、『レジスタンス』っていうゲームがあるんですけど、「人が死なない『人狼』」みたいなもので。人狼ってすごくおもしろいんですけど。「村人の中に狼がいる、で、それを当てる」っていうゲーム。ただ、人狼って、人が死んでいってしまうんですね。噛まれたり、吊ったりして。

hidek:そうですね(笑)。

山田:そうすると、やっぱり残りの時間てつまらなかったりするので。ただ、レジスタンスっていうゲームは、ずっと同じ人が残り続けながら、「誰が狼なんだろう」みたいなのを推理し続ける、ってような立場で。昨日はmosaさんに負けてしまったんですけど、すごく盛り上がった会でした(笑)。

hidek:(笑)。なるほどですね。ありがとうございます。あと、もうひとつ、mosaさんからのメッセージで、「あまり表に出てこない」っていうので。僕も、今回、実は山田さんとリアルで会ったことないんですよね。

山田:はじめまして。よろしくお願いします。

hidek:はい。よろしくお願いします、なんですけど。あまり表に出てこない。で、事前にいろいろ調べようと思ったんですけど、本当に調べるのが大変で(笑)。

山田:すみません(笑)。

hidek:いえいえ(笑)。でも、逆に、今日いろいろお話伺えたらな、と思うので楽しみにしてます。よろしくお願いします。

山田:よろしくお願いします。

学生時代に弁理士資格を取得

hidek:はい。で、そうですね、先ほどの自己紹介の中でキャリアのサマリーいただいたと思うんですけど。一番最初のキャリアの出発点、ちょっとここが曖昧で聞いてみたかったんですけど、弁理士の資格をお持ちになってて。

山田:そうです。はい。先ほど、ちょっと言い忘れてしまったんですけど。大学の学部生時代から持ってまして、資格は。なので、かれこれ10年くらいのキャリアですかね。ずっと副業として細々やってはいるんですが。

hidek:ここを、弁理士を目指そうとしたきっかけとかあるんですか?

山田:そうですね。ひとつはですね、すごく身も蓋もないことを言ってしまうと、結構、大学時代に講義を前倒しで取ってしまって「時間が空いたなー」というときに、「何か将来に備えて資格を取りたいな」っていう、ごく普通の発想をしまして。

hidek:おー、なるほど。

山田:で、うちの父親と姉が、ふたりとも法学関係の仕事をしてまして、そういうのもあって、自分が、理系で取れる資格の中では馴染みが深かった、っていうのが取得を志したきっかけですかね。

hidek:なるほどですねー。すごく思ったよりも堅実な理由でびっくりしました(笑)。

山田:すみません、なんか(笑)。

hidek:いえいえ(笑)。

山田:そのころ、そんなに、起業とか考える前だったので、「シナジーがあるから」っていうかっこいい理由でなくて大変恐縮なんですけれども。

OSSライセンスとクラウド業者の対立

hidek:いえいえ。でも、ITっていうところで言うと、最近ね、僕、よく出てくる話で気になってたのが、いわゆるOSSライセンスの問題。昔からそこはいろいろあるんですけど、その中でも、特にクラウド業者とのOSSコミュニティとの対立というか、っていうのが、結構、最近目につくな、と思って。わかりやすいところで言うと、AWSとMongoDBだったり、Elasticだったりだとか。いろいろあると思うんですけど。この辺って、急に出てきたなー、っていうのはあるんですけど。なんか、この辺って、なんですかね、急に対立が深まってるのって。

山田:そうですね。急に深まった理由のひとつは、やっぱり「技術発展が急だから」なんじゃないかな、という風には思っているんですけど。日本の法制度もそうですけど、時代の移り変わりによって、制度とかライセンスの形態が変わっていくこと自体っていうのは、当然、あるべき姿だと思うんですね。ライセンスはライセンスとして、今回、みんな適切に処理されていると思っているんですけど。どちらかというと「心情的な対立」っていうものは無視できないと思っていまして。

hidek:うんうん。

山田:どちらもどちらの言い分があって。OSS側からとしたらフリーライド。ソフトウェアのコピーとしてのフリーライドも当然そうですし。あとはやっぱり、単純にですね、API互換の内部実装を、たとえば、「独自にしました」って話だったとしても、エコシステム内の潜在顧客の横取りみたいなのが、横取りっていうと言葉が悪いですけど、スイッチがしやすい状況にあえてしている、みたいな、っていう意味では、「フリーライドなんじゃないか?」っていう指摘が、やっぱりあると思うんですよね。

hidek:そうですよね。うん。

山田:はい。で、一方で、一定のユーザーの活動を阻害する形でライセンスを恣意的に決めていく、っていう行為自体も批判を受けている部分ではあるのかな、と。たとえば、Mongo側ですね、と思っていて。ここは、どちらもどちらの言い分があって、難しいところだな、というのが第一感ですけれども。

hidek:そうですよね。それぞれのコミュニティのフィロソフィーだとか、立ち位置だとか、っていうのもあるし。当然、ビジネスモデルみたいなものも関係してくるので、なかなか難しいな、と思うんですけど。これ、ややこしいのが、さらにLinuxのパッケージコミュニティみたいなのがあって。たとえば、「レッドハットがMongoDB、もう入れません」だとか。結構、「割り食ってるのが、結局、ユーザーなんじゃないの?」みたいなところがあって。結構、なんともしがたいな、と個人的には思ってるんですよね。

山田:そうですねー。

hidek:かつ、ライセンスのAGPLからSSPLみたいなものが出てきたりとか、どんどん複雑化してったりだとか。結構、使う側としては、気をつけなきゃいけないことがどんどん増えていって大変だな、とか思ったりするんですよね。

山田:そうですね。制度としてもそうで。ちょっと、エンジニアの立場からすると、そうは言っても、「AWSサービスを使う」っていうのは大きなメリットがあると思っていまして。やっぱり、多くの企業が、シングルサインオン(SSO)ですとかAssumeRoleで権限管理をしていると思いますし。Terraformで一括構築みたいなのもしているところも多いと思うので。あとは、CloudTrail入れていれば勝手に監査、勝手にじゃないですけど、証跡は全部残りますし、「Security Hubにインシデントって全部統合されているので、そこ見てます」みたいな企業からすると、外のサービスを一個持ってきて、そこに固有の認証情報、それぞれのIDとパスワードがあって、クラスを作るの、画面上でポチポチ作りました、みたいなものって、すごく引き継ぎしにくいと思うんですよね。

hidek:うんうん。

山田:みたいな運用負荷を考えると、「どっちが正しい」っていう議論の前に、AWS内で立ち上げられること自体のメリットがすごく大きくなってしまうんじゃないかな、とは思うので。

hidek:なるほど。

山田:商業的には、AWSサービスって、無視できない部分かな、という風には感じてますね。

hidek:うん。

山田:一方で、Azure、Microsoftについてなんですけど。これ、完全に私個人の見解なんですが。GitHubの買収があったと思っていて。あれなんかは、ちょっと違った形で、OSSコミュニティへの貢献を示そうとしているんじゃないかな、と思っていますね。で、やっぱり、Microsoft自体も、サティア・ナデラさんが社長になってからは、すごく柔らかくなったな、っていう感覚が私はしてまして。

hidek:はい(笑)。

山田:エンジニアの中だと、ちょっとやっぱり、「Microsoft苦手」というか、「やり口気に食わん!」みたいな人が、ちょっと昔のMicrosoftの印象だと、そういう人が多いのかな、と思っているんですけど。

hidek:(笑)。

山田:やっぱり、サティアさんになってからは、すごく「コミュニティへの歩み寄り」じゃないですけど、「開かれたユーザーとのコミュニケーション」みたいなものを重視しているような感覚があって。私は今のMSのフィロソフィーなんかは、すごく共感できるところが多いな、という風に思っているんですけれど。あれも、ひとつのOSSへの姿勢の向き方なのかな、という風に考えていました。

hidek:そうですよね。たぶん、Microsoftって、ずっとProprietaryのエコシステムで。

山田:そうですね。

hidek:変な話、「囲い込み」っていうイメージは、実際にそうだったと思うし。で、そこから、よりオープンなコミュニティへの参加呼びかけ、みたいなことをしていく上での、僕、GibHubの買収って、ほぼブランディング何だろうな、とは思っているんですけど(笑)。

山田:(笑)。

hidek:はい。それにしてはうまく機能しているし、あれでGitHubが悪くなった、ってことは全然ないですし。むしろ、潤沢な資金が入って、すごく便利になっているな、とは思うので。それ自体は、OSSコミュニティにとってもいい出来事だったんじゃないかな、と思う一方で、やっぱりこのOSSライセンスとクラウド業者の対立、ここは、ユーザーが割りを食ってしまっているのが、あー、という(笑)。

山田:そうなってしまいますよね。うん。

hidek:両者、ブランディングとしてもやっぱり失敗してるし(笑)。

山田:そうですね。

hidek:なんか「下手だなー」と思いつつ見てるんですけど。

山田:最終的には、そこも踏まえた上で、個々のエンジニアですとか、個人やチームの価値観ていうものから、あとは当然、機能的なメリット・デメリット。当然、バージョンとか機能っていうのは、これから分化していくわけなので。そこを踏まえて、自分たちにとって最適な選択をするしかない、っていうことには尽きるかな、と思っていて。それは、短期的に自社プロダクトの商業的な判断をするだけではなくて、価値観も含めた「こうした行為に是非をつける」っていうアクションをとることで、エンジニアコミュニティ、「自分が属するコミュニティがこうなっていってほしい」っていう、「票を投じる」っていう行為として、そういう選択をしていく、っていう時代になっていくかな、っていう風には思いますね。

エンジニアも特許権について理解を強めた方がいい

hidek:うんうん。なるほどですね。ありがとうございます。そのライセンスの問題と結構近しい話で、今度は特許権。OSSライセンスというよりは、もうちょっと高度な話なんですけど。やっぱり、ここでも会社対会社で、特許を利用した「ビジネスマウントの取り合い」って言ったら、ちょっと怒られちゃうかもしれないんだけど。一般的には「パテント・トロール」みたいな話だと思うんですけど。結構、日本でも、昔はそんなになかったんでしょうけど、最近、日本でも、IT業界の中でも増えてきているな、と思っていて。あの辺の良し悪しっていうのも、個人的にはあるなー、と思っていて。この辺って、どう向き合っていく、解決していく、ものなんですかね?

山田:そうですね。まずは、特許についての理解を、いちユーザーというのもあれですけど、エンジニア、個々が深めていく、っていうのは不可欠かな、と思っていまして。特許っていうと、やっぱり「独占排他権」っていう気持ちが一番強いと思うんですけど、「なぜ特許権って存在するんだっけ?」っていうところが、やっぱり大事だと思うんですね。

hidek:うんうん。

山田:で、ここは特許法の第1条にも書いてあるんですけど、特許権って、発明をしたから、偉いから権利をもらえているわけではないんですよね。「発明を公開すること」に対するご褒美として独占権っていうのをもらっている、っていうのが基本なんですよ。

hidek:あー。

山田:じゃあ、「なんで公開することにインセンティブをつけているの?」っていうと、それは、国が技術として発展するためなんですね。

hidek:なるほどね。

山田:で、やっぱり、もし「ご褒美がない世界」っていうのを考えてみると、技術って秘匿した方が得になっていて。「それぞれ、みんな秘伝のスープを持った状態でのしのしやっている」みたいな状態になってしまうと思うんですけど。そうなると、やっぱり、国としては困ってしまって。同じ技術への二重投資が起こる、みたいなこともありますし、どっかでできていることなのに、また、別のところが投資していったら、やっぱり、国としての競争力っていうのが下がっていく、っていうのがあったり。

hidek:うん。

山田:あとは、やっぱり、すでにある技術からさらに応用技術に至るまでの時間、っていうのは、当然、長くなってしまっていくので、国としては技術を公開してほしいんですよ。

hidek:はい。

山田:ただ、そこに何もご褒美がないと、「どうぞ使ってください」っていうだけだと、当然、誰もやってくれないので、「じゃあ、新しい発明をした人には、20年間、独占的に使わせてあげますよ」ということでセットで存在するのが特許権っていうものなので。

hidek:なるほど。

山田:まずは、その性格を認識した上で。やっぱり、発明をしたときに、特許取った方がいいのか、あるいは秘匿した方がいいのか、っていうのは、個別事情で変わってきてしまうんですよね。

hidek:うん。

山田:当然、国としては公開した方がいい、っていうのは間違いないんですけれど、「商業的なアクションとしてそれが一番正しいか」っていうと、ケースバイケースになってしまう、っていうところですね。

hidek:うん。なるほどですね。理念としては、それがすごくスッと入りますし、正しいだろうし、おそらくそうあってほしいと思うものの、いわゆるパテント・トロールみたいな問題が起こったときに、どうしても、訴えられないように守らないといけない、もしくは、訴えられたときに訴え返せるように特許を取り返さなきゃいけない、っていうのが、結構、今、そういうような流れになっているかな、と思っていて。

山田:はい。

hidek:まさに、それがIT業界でも、最近、起こっているのかな。ゲームだと、結構多かったりすると思うんですけど。ゲーム業界だけではなくて、いわゆるIT業界でも起こっていて。その辺って、今後、僕らとして、どう守っていけばいいのかな、とか(笑)。

山田:はいはい。そうですね(笑)。

hidek:その辺、すごく難しくて。

山田:でも、このトピックだけで数時間話せてしまうので、かなり深い話題ではあるんですけど。やっぱり、「何もしない」っていうのはよくないですね。そうですね。「相手取るには高くつく相手だな」っていう風に周りに思われる、っていうのが、一番基本的な特許の防衛策だとは思っていて。

hidek:うんうん。

山田:あとは、そもそも特許要素を持っていたとしても、敵対だけが道ではないので。

hidek:なるほどね。

山田:まず、使用料を払って使わせてもらう、っていうところもありますし、クロスライセンスという形で互いに専門的な技術の……、互いの特許権を付与し合う、みたいな。たぶん、そういった選択肢も、自分に特許権がないと取れていけない、という部分がありますので。ちょっとさっき言った「秘匿と公開」のバランスにもよるんですけども、いわゆる「オープン・クローズ戦略」って呼ばれるような、技術の権利の管理、っていうのは、ちょっと本当に奥深いところ。会社のフェーズとか大きさとかにも関わってきますし。

hidek:うん。さっき「特許権の理念」みたいなところを聞いたときに、改めて、OSSコミュニティって、結構、健全に回ってるのかなー、っていう気はして。やっぱり、当然、車輪の再発明っていうのは、エンジニア、やりたくないので。一方で、技術がどんどん進化していってほしい、っていったときに、コミュニティでライセンスっていう、お互いが握った約束のもとで、徐々に、ちゃんと参入もオープンに、っていう仕組みっていうのはすごくよくできてるな、と改めて思いました。

山田:おっしゃるとおりだと思いますね。特許とは、ほぼ真逆と言っていいのかわからないんですが、かなり逆に近い理念で、それはそれで非常に発展しているところなので。そうですね。オープンソースの考え方は、我々にとっては当たり前になってしまったんですが、本来、すごく新しいはずですよね(笑)。

hidek:うん。

山田:善意なんですかね。

hidek:そこが、ちょっと、クラウド業者との対立みたいなところが、悲しいなー、と思ったりだとか。

山田:そうですね。うん。

hidek:難しいですけどね。ビジネスとの兼ね合いもあると思うんで。

山田:そうですね。うん。

hidek:まだ、弁理士のお仕事ってやってるんですか?

山田:本当に、起業前に取引があった会社さんのフォローくらいなんですけども。個人としては。ほとんどやってないです(笑)。

hidek:なるほど。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?