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祝!人工知能学会2021に7チームがアクセプト!(同志社田口研究室)

[Update履歴 2021.4 ページ作成]

2021年度人工知能学会全国大会第35回に、我々田口研究室から7つのチームの論文がアクセプトされました!研究室としては、実に3年連続での人工知能学会投稿となりましたが、7チームものアクセプトは初となります。

<我々の研究発表の一覧はこちら>

https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2021/advanced?query=%E5%90%8C%E5%BF%97%E7%A4%BE%E5%A4%A7%E5%AD%A6&searchType=subject


以下に各論文のアブストラクトと投稿論文を記します。

「ファクトチェックアラートの有効性の検証:AI時代における誤情報拡散防止の取り組み」(A班)

本研究の目的はファクトチェックアラートの有効性について検証したものである。近年、AIによるニュースの自動生成技術の向上や、さまざまなメディアを利活用できる環境などにより、より多くの情報を得られるようになった。それに伴い、誤情報の拡散についての問題が深刻化しているため、現在までファクトチェックを促す役割としてのアラート機能についてさまざまな実験・研究が行われてきた。しかし、特に非常時や災害時においては、共有される情報が人々の不安を高める場合や情報の重要性が高い場合が多い。また、そのような社会不安のある状況下においては、他者の役に立ちたいという善意の気持ちも誘発される。そのため、今回は、誤情報を含む様々な情報の拡散要因が多い状況下において、先行研究で検証されてきたファクトチェックアラートの機能が効果的であるのかについてサーベイ実験を用いて検証を行った。本研究の結果は今後の、人工知能(AI)が発達しさまざまな情報が利活用される時代における誤情報拡散防止のための研究や取り組みに示唆を与える。


「フィルターバブルを回避するナッジの考案」(B班)

本研究の目的は、検索エンジンによるアルゴリズムによってユーザーが好みの情報に囲い込まれるという弊害があるフィルターバブルに対して、多様な情報に触れることができる環境の形成手段について調査することである。先行研究では、フィルターバブルのもたらす効率性や合理性について肯定的な主張が成されている一方、イデオロギーの極性化や、それに伴う社会の分断の可能性といったフィルターバブルの危険性についても言及されている。
 本稿では、多様な情報に触れるナッジを検討し、導入した場合と導入しなかった場合で対照実験を行った。本研究から得られる知見によって、フェイクニュースやヘイトといった社会の分断にも繋がりかねない問題の解決の一助となることを示唆する。


「AI人事採用における納得阻害要因の解明に向けたサーベイ実験」(C班)

近年、採用面接において、より公平で平等な評価が求められるようになり、採用過程でのAIを用いた公平で平等な評価が注目を集めている。しかしながら、採用過程におけるAIの導入には、人間がAIに評価されることに抵抗感を持っており、評価を受ける側は結果に納得が出来ないなど、AIを用いた採用自体に課題が残る。これらの課題を踏まえ、本稿では、AI採用評価に対して、そもそもどのような要素が評価される側の納得感を妨げているのか、また、どの程度納得感に影響を与えているのかということに焦点を当て、人間がAIに評価される際の納得感について調査するためにサーベイ実験を実施した。この研究は、評価を受ける側が納得のできるような公平なAI人事採用の仕組みを設計するうえで、一定の示唆を与える。


「AIヘルスケアサービスを用いた早期検診を促すナッジの検討」(D班)

本研究は,AIヘルスケアサービスにより行動変容を促進する施策としてナッジの有効性を検討することを目的としている.我が国で大きな問題となっている高齢化の進行と,それに伴う医療費の増大を解決に導くために重要となるのが「予防医療」である.そして,予防医療の中でも昨今注目されているのが「AIヘルスケアサービス」であり,今後さらなる進展が予想されている.一方で,人のAIに対する信頼性は低いという問題もあり,AIヘルスケアサービスを人々に浸透させるための工夫が必要になると考えられる。そこで我々の研究では,予防医療のための行動変容を促進させる施策としてナッジの有効性を検討するサーベイ実験を用いて分析した。本研究は、今後加速する高齢化社会においてAIヘルスケアサービス活用の可能性について示唆を与える。


「AIを用いた健康経営を促す施策の検討:従業員のワーク・エンゲイジメントの向上を目指して」(E班)

本稿の目的は、AIを用いた健康経営の促進について、従業員のワーク・エンゲイジメントを向上させるための要因や施策を明らかにすることである。その健康経営の一つとしてメンタルヘルスケアが挙げられ、従業員のみならず企業にも多大なメリットをもたらすが、実際にはストレスを抱えた従業員が依然として存在しており、我が国はストレス社会の極地に達していると言える。また、コロナウイルス感染拡大に伴い、その問題は更に深刻化してきている。昨今、メンタルヘルス改善の研究は数多くなされており、その中で、ワーク・エンゲイジメントの向上が従業員のストレスを軽減させると報告されている。しかし、労働人口の減少による人手不足のため人員を割くことができず健康経営を取り入れることが難しいというのが大きな課題の1つとされる。そこで我々は、メンタルヘルスケアの一次予防に目を向け、従業員のワーク・エンゲイジメントの向上にAIを用いても人間と同様の効果をもたらすかについて、サーベイ実験を行ったが、有意性は見られなかった。また、補助分析として行った個人特性や仕事内容と自己成長の影響も踏まえて、健康経営の促進について検討している。


「大学生のサービスギャップ解消へのアプローチ:AIを用いたメンタルヘルスケア」(F班)

本稿では, AI を用いたメンタルヘルスケアのあり方について明らかにすることを目的とする.メンタルヘルスに関する問題を抱えながら専門家に援助を求めない現象はサービスギャップと呼ばれており,その要因はスティグマや自尊心などが挙げられる.また近年では AI を用いたメンタルヘルスケアアプリも開発されはじめ,注目されている.そこで我々は特にアプリを通じたメッセージを用いて,サービスギャップ問題の解決図ることが出来ないか検証を行った.本研究では大学生にサーベイを実施し,アプリを通した文面での会話における対 AI時,対人間時の感情の差について検証した.その結果,スティグマと自尊心は利用意思への関連性は見られなかったが,カウンセリングの利用経験がある人は対AI時の利用意志が高いことが明らかになった.この実験は,サービスギャップの解消に役立ち,大学生に対してのメンタルヘルスケアにおいて有効な示唆を与える.


「価値共有が及ぼす生産性向上への影響:AIと人との共同の観点から」(G班)

本稿では,価値共有を行うことにより組織内での信頼が向上し,生産性向上に影響するかどうか検証することを目的とする.[ZAK, Paul J. 17]は,企業組織において,信頼関係など意図的に社会的な絆を構築することによってパフォーマンスが向上することを示した.[磯川 等. 20]によると,価値共有を行う場合人とは目標を,AIとは手段の共有を行う方が信頼に対して効果的であることが明らかになった.
場面想定法を用いて,情報提供者と価値分配条件の違いを考慮して 310名の参加者を対象に調査を行った.その結果,人の場合では,共有の有無による違いがみられたが,AIでは違いがみられなかった.また,価値共有条件と情報提供者に交互作用がみられ,AIでは目標の共有を行うこと,人とは手段の共有を行うことで,生産性の向上に対してより効果的であることが分かった.この点はさらなる検証が求められるが,本研究の結果は企業組織において AI と人間との協働を考えるうえで一定の示唆があるといえる.


学会タイムテーブル

【6/8】15:20-15:40 F会場 AI応用:経営情報 「AIを用いた健康経営を促す施策の検討:従業員のワーク・エンゲイジメントの向上を目指して」(E班)
【6/9】16:00-16:20 F会場 AI応用:経営と経済「価値共有が及ぼす生産性向上への影響:AIと人との共同の観点から」(G班)
【6/10】15:20-15:40 H会場 AIと社会:ナッジ「フィルターバブルを回避するナッジの考案」(B班)、15:40-16:00 H会場 AIと社会:ナッジ「ファクトチェックアラートの有効性の検証:AI時代における誤情報拡散防止の取り組み」(A班)、16:00-16:20 H会場 AIと社会:ナッジ「AIヘルスケアサービスを用いた早期検診を促すナッジの検討」(D班)、16:20-16:40 H会場 AIと社会:ナッジ「大学生のサービスギャップ解消へのアプローチ:AIを用いたメンタルヘルスケア」(F班)
【6/11】12:00-12:20 H会場 AIと社会:技術の活用「AI人事採用における納得阻害要因の解明に向けたサーベイ実験」(C班)


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