ドキドキ!プリキュアについて【5】

 第四話はプロットが2012年8月20日に、第一稿が9月19日にあがっています。一話から三話の作業を優先して、一カ月ぐらい寝かせてあったんですね。そのせいか、プロットからお話がちょっと変わって……いや、なんだこれ……印象がかなり違うぞ。
 元々は、ありすがプリキュアの力をうまく使いこなせずに悩むけど、ディフェンスに特化することで活路を見いだす、比較的ストレートなお話だったんですね。それが「幼少の頃から様々な習い事を嗜んでいて、ピアノやバレエは勿論、乗馬や柔道、合気道まで使いこなす」という基本設定の部分がデジソウルバーストして、ああなったのだと思います。
 逆に大人しくなっている部分もあるんですよ。初稿では、町の電話ボックスがシューターになっていて、地下の四葉財閥秘密格納庫に直結。そこからプリキュアがリムジンに乗り込んでジコチュー迎撃に出動するという「サンダーバードか!」みたいな描写がありましたが、それは流石にボツになりました(当たり前だ!)
 それにしても、今回改めて見返して見ると、御祖父様の出てくるタイミングとかどう考えてもおかしい……少年漫画だろ、どう見ても……。

 さて、この話を語る上で演出の事は避けて通れません。例えば、マナの変身が防犯カメラに映っているシーン。自分だったら、防犯カメラ然とした、ちょっと見切れた感じのシーンとして描いていると思います。変身バンクのような決まり切ったシーンを別アングルで描写すると、間が抜けた感じがして面白いからです。勿論、脚本上でカメラアングルまで指定するのは演出に対する冒涜ですから、そこまでは書き込んでいません。逆に、このシーンをどう処理するかで演出家の力量を探ってやろうという気持ちが働いていたのも事実です(いやらしい!)。
 ところが! 第四話の演出・田中裕太さんは変身シーンのDN(デュープネガ)そのものを流したのです。これには正直、やられたと思いました。こちらの意図を見透かされたような気持ちがしました。一回りして、こっちの方が面白い。
 彼は作品に対して非常に貪欲で、自分が面白いと思えばセリフのひとつやふたつはどんどん変えてくるタイプの演出家です(この話で言えば「クシャポイ」や「ノイズキャンセリング」はコンテ段階で加えられた台詞です)。シナリオを変えられると怒る脚本家も当然いますが、田中裕太さんの場合、こちらが敷いたレールを全てなぞった上で、更にアップダウンを加えてくるので文句のつけようがありません。今年はプリキュア本編から離れているようですが、これから先が楽しみな演出家の一人と言えるでしょう。
 
 細かいことをいくつか。今回二回登場するジコチュー、第一稿ではどちらも携帯プレイヤー型でした。一体目は水をかけて撃退しますが、二体目は防水加工を施して襲いかかってきています。違いが分かりにくいということで、後から出てくるほうはラジカセになりました。ラップ調の台詞を忠実に再現してくれた岩崎征実さんには感謝!
 それと、ラジカセジコチューの攻撃。テープでキュアハートたちを搦め捕ってグルグル回していますが、実はこんなギミックを想定していました。こんなオートリバースがあったの、今の子供たちは知らないだろうなあ……。

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