ドキドキ!プリキュアについて【2】

前回からの続きです。

ドキドキ!プリキュアの第一話初稿を書きあげたのが2012年8月6日。それから六回ほど書き直し、決定稿になったのが同年9月13日です。通常、アニメの脚本は三、四稿でフィニッシュですから、これはかなり丁寧な作業だったといえます。どうしてここまで時間をかけたかというと、監督もプロデューサーも皆、「このドキドキ!プリキュアという作品の出来不出来は、すべてこの相田マナにかかっているぞ」と感じていたからだと思います。

マナは、本当に難しいキャラクターです。

みんなから頼りにされる人気者というのは、匙加減を少しでも間違えると、心の機微が判らない独善的な人間として映ってしまいがちだからです。第五話のように、敢えてそういう行動をさせることもありますが、こちらが意図せずそう見えてしまうのは拙い。だから、マナの台詞ひとつひとつを徹底的に吟味して、心を砕いたつもりです。

たとえば、車酔いで具合が悪くなっている八嶋さんを見かけるシーンも、初稿ではあっさり保健委員に引き渡していましたが、決定稿では心配して隣に寄り添うようにしましたし、迷子の美智子ちゃんと話す時も「腰を降ろして子供に視線を合わせて」というト書きを付け加えていますし、喧嘩の仲裁に入るときも頭ごなしに叱るのをやめて「そんな些細なことでいがみ合うなんて小せぇ小せぇ!」と笑い飛ばすようにしたり(実際の台詞は違いますヨ!)。ホントに細かいところを言えば「お財布、落ちてたぞ!」の「ぞ!」ひとつに対しても、これで正しいのかどうか、徹底的に検討を重ねたのです。

時間をたっぷりかけた分、一話のシナリオの完成度は高いと自負しています。特に、おまじないとラブリーコミューンの変身ギミックを伏線として掛け合わせたくだりは自分でも気に入っています。

ですが……ダメですね。指摘されてから気付くのです。

「999メートルもあるタワーを、どうやって駆け登るんですか!」

書いてる時は全然気づいていないのです。どう考えても無理があるってことに(笑)。美智子ちゃんを助けたいって気持ちがあれば、それぐらい楽勝だろって思っちゃってる。

「ち、違うんですよ! ラビーズが光った時に、既にマナの中にプリキュアの超人的なパワーが目覚めていたんです! 良く知らないけど、きっとそう!」なんて下手な言い訳を松下Pにしたのは良い思い出です。

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