ドキドキ!プリキュアについて【9】


1クール後半は、怒涛の新設定ラッシュになりました。

①アイちゃん
②ラブハートアロー
③レジーナ

アイちゃんは、既にオープニングやアイキャッチには登場していましたが、本編で登場するのは第8話(CMは先行して7話から流れています)。バンダイ的にはラブリーコミューンの次にプッシュしていた商品ですから、本来であれば最初から登場していてもおかしくありません。しかし、どうしても物語の「謎」の部分が伴うキャラクターですから、まずはトランプ王国を含めた基本設定を紹介し、マナたちの人間関係を固めてからの登場となりました。
アイちゃんは、本編での呼び名が決まる前は「キューピッド」と呼ばれていました。ローマ神話の愛の神、ギリシア神話ではエロースと同一視されるものです。ドキドキ!プリキュアの世界観の中に神話のエッセンスが多く入っているのは、そのためです。

そして、アイちゃん登場からわずか3週後、11話では新アイテム・ラブハートアローが登場します。キューピッドが放つ恋の弓矢ですね。

弓矢は左手で持って右手で弦を引きますから、下手から右向きに射るほうが絵が映えます。演出的に言うと、これは逆転の図式に使われる構図です。判りやすい例(?)で言うと映画「聖闘士星矢」では、星矢がクライマックスシーンで射手座の黄金聖衣を纏い、矢を射る時は必ず下手からです。でも、ドキプリでは敢えて上手から放っています。

「キュアハートは憎しみを持たないプリキュアとして描いています。彼女は変身シーンでも笑うし、決め技を放つ時も笑顔なんですね」(古賀監督インタビュー。オフィシャルコンプリートブックより)

つまり、ジコチューとの戦いは、いわゆる「戦闘シーン」ではなく、愛を取り戻すための共同作業として描かれているからなんですね。「ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!」でも日本列島を反転させて上手から突撃させた古賀監督。流石、一味違います。

12話から登場するレジーナは、柴田Pの初期構想からあったものです。常に自分の欲望に忠実な女の子というメモが残っています。そこから「タレントのローラみたいにどんな相手にもタメ口で大胆不敵、カラッと明るく憎めない感じの敵の少女」というキャラクター付けが徐々に固まっていきます。
物語をかき回す台風の目として登場させたまでは良かったのですが、彼女の扱いは非常にデリケートでした。何せ彼女はトランプ王国を滅ぼしたキングジコチューの娘という設定。真琴からして見れば憎んでも飽き足らない相手です。そんな彼女を赦せるか? 友達になれるのか? みたいな非常に厄介なテーマなのです。しかも、自分は劇場版の準備で本編のシナリオを書くことが出来ず、本当に不安なタームだったのですが、8話から成田さん、13話から米村さんという心強いベテラン勢(ともにプリキュアメインライター経験者)が参入してくれたおかげで乗り切ることが出来ました。

話数別のお話については、また次の機会に……。

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