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万国博モノレールをつくる

万国博モノレールとは


1970年に開催された日本万国博覧会(大阪万博,EXPO70)、その会場内の移動手段としてモノレールが建設された。1日の最多来場者数が約83万人、毎日平均して約35万人(ディズニーランドが約5万人)が押し寄せるという大盛況の183日間だけ営業していた非常に短命のモノレールでもある。

※本記事は1/150と1/350で製品化している万国博モノレールの製作記です。
製品そのものの詳細はHPへどうぞ。


モノレールはGKデザイングループの創始者である榮久庵憲司によってデザインされた。白と青の塗装でシンプルながらスラントノーズの今でも古さを感じさせない。先頭部と車両中央にEXPO70のロゴが配置されている。

車両イメージ

4両編成で6本が日立製作所により製造され、運行は東京急行電鉄(東急)が担当した。これは万博終了後に東急が活用する構想があったためであるが、実現はせず車両は現存していない。一部の運行機器が東急の車両に転用されたのみで、その他の座席や吊り革といった部品すら出てきていない。鉄道車両は1両全部とはいかないまでも何かしらの部品くらいは個人所有等で保存されている事が多い中で、来場者に未来の交通を感じさせた万国博モノレールは全くそういった事がないのが逆に創造意欲を掻き立てた。

調査と3Dモデリング


私は元々関西(京阪神)の出身で、当時は大阪万博というと公園のど真ん中に変わったオブジェ(太陽の塔)があるくらいのイメージでした。惹かれ始めたのは関西を離れて夜通し高速を走る帰省の度に吹田JCTで朝焼けに照らされる太陽の塔を見るようになってから。そこから大阪万博(EXPO70)について調べ始めるようになりこのモノレールを知る事になりました。

調べていくと先に述べたように今でもかっこよく見えるデザイン、路線から車両に至るまで痕跡(保存物)がないに等しい事とどんどん引き込まれていきました。

調査の過程では万博そのものの記録についても触れ、現代ではあり得ない来場者数等その特異な祭典についても興味を持つようになりました。今では帰省の度に万博記念公園に必ず立ち寄るようになるくらいで。個人的にはこの万博より熱狂した祭典はこの後にはないのではと感じます(2020年の東京オリンピックがそのチャンスだったかも)。

特に惹かれたのは国立国会図書館に収蔵されている日々の日報をまとめたもので、怒涛の来場者対応の様子が詳細に記録されています。モノレールも登場し、開催期間の前半には不具合で非常停止といった初期故障と思われる記述があるものの後半には登場機会は少なくなっていき安定した運行がなされていたのではないかと思われます。


作成した3Dモデル(製品版とは異なります)

製作に必要な図面等の資料は国立国会図書館で収集しました。当時の日立評論に模型製作に必要な資料はほぼほぼ揃っており、単純に形状をモデリングするのみであれば十分でした。しかしながら色合いや車内の様子等を知りたく各所で膨大な写真を集めました。万博記念公園のある吹田市の記録を見たりもしました。

特に苦労したのは車内(座席)の配色と足回りの形状でした。足回り(台車)は写真が2,3枚しか見つからず全体を把握する事が難しく、同じシステムで走っている大阪モノレールの車両を参考にしました。車内の配色は座席の色が2色のモケットからなっている事は分かったのですが、それが何色かはなかなか分からずでした。この答えは万博記念公園の記念館(EXPO'70パビリオン)の中に当時の写真が壁に貼ってあるエリアがあるのですが、そこの足元に貼ってある写真にモノレールの車内の写真がありました。写真は運行開始前の試運転時のような印象でした。フィルムで撮れる枚数に限りがあった運行当時に満員の車内を撮った人は相当少なかったのではないかと思います。

車内の様子(3Dモデル)

3Dプリント

集めた資料から3Dモデリングを終えると3Dプリントに入ります。3Dデータに色を設定しているのでフルカラー3Dプリントが可能で、これを使うと組み立てるだけで模型を完成させる事ができます。万国博モノレールは白と青の配色で塗り分けもそこまで難しくはありませんがEXPO70のロゴを入れる事や一部に細かい部分があるためフルカラー3Dプリントで製作しました。

フルカラー3Dプリントで気に掛かるのは窓の色です。実はフルカラー3Dプリントでは窓の透明部分と色付きの不透明の部分を一体で造形できるのですが、これは費用がかかってしまうため今回は窓を塗り潰す事にしました。運行当時の写真を見るとどれも車内は満員で窓は反対側が見通せない程真っ黒になっています。昨今の首都圏の通勤電車の様な感じでした。思い切って黒で塗りつぶしました。

模型は1/150と1/350で製作しており、これはNゲージの規格ですがモノレールはNゲージの市販されているレールを使う事は出来ないので軌道も3Dプリントで製作しました。表面がザラザラしているナイロン素材の3Dプリントを使用し、実物の質感に組み立てるだけで近づく様になっています。ザラザラの表面は車両を乗せた際に滑り止めにもなる恩恵もあります。成形色はグレーで最近のモノレールの軌道の色に近いですが、万国博モノレールの軌道は展示とのマッチを狙って全て白色に塗装されていました。

完成した万国博モノレール(1/150スケール)

製品は鉄道模型で一般的な1/150と小さい1/350をラインナップしています。1/350は太陽の塔が同スケールで市販されており、合わせられる様になっています。
※1/150版に印刷されているEXPO70ロゴは使用許諾を取得しています。

実車は現存しませんが模型でお手元にいかがでしょうか。







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