小説『キリエのうた』読了直後に書き殴った感想

北斗くんが出演すると知って興味を持ったこの作品。
小説を読んで感想を胸の内に留めておくことに耐えられなくてここに吐き出そうと決めた。

情報公開日にアップされた25秒足らずの映像に心打たれて一気に虜になった。
そして、出演キャストの写真として使われた北斗くんの透明感と儚さ。これだけで絶対に素敵な作品に違いないと確信できる。
あの日は一日中ふわふわした不思議な気持ちで過ごした。
北斗くんが岩井俊二監督という映画に特別詳しくない私でも知っているような監督の作品に選んでもらえたことも嬉しかったし、そこで北斗くんが向き合った作品がまたしても私の"好き"を引き出してくれたことも嬉しかった。

こうして、内容もほぼほぼ知らないまま『キリエのうた』の世界観にわくわくし、公開日を待つことになった。

公式SNSが少しずつ少しずつ写真やセリフを公開してくれて、またその写真やらセリフが好みど真ん中で。
ますます楽しみになっていたところで映画に先立って小説が発売された。

小説『キリエのうた』との葛藤

とりあえず小説を手に入れはしたものの、先に読むか映画を観てから読むか迷っていた。
本来であればこの作品は"映画"として発表されたのだから映画を楽しんでから小説で答え合わせするのがベストなはず。
(すずめの戸締まりは映画を観た後に小説を読んで、また映画を観た。)
だけどわざわざ公開前(しかも数ヶ月も前)に小説が発売されたということは先に読んでおくべきなのか??
余計な情報なしで映画を、演技を楽しみたいという気持ちも大きくて、最初は映画後の楽しみにしようと決めていたものの、読んだ方々の心の叫びが私の決心をグラグラにさせた。
つらい思いするの?北斗くん??
いや、映像から少しは感じていたけれども。

めちゃくちゃ気になる。

ネタバレに気をつけて叫ばれた感想たちが余計に読みたい欲に火を着けて、さらに追い討ちをかけるように公開された豪華な追加キャスト。
さらに予告動画も次々と公開されて、これはもうまっさらな状態で10月までいるのは無理だと悟った。
何よりもどこかで物語のカケラを不意に知ってしまうほうが嫌だと思った。

だったらもういっそ、読んでしまおう。

せっかく読むならじっくり浸れる日に読みたいと思い、丸一日フリーな7月下旬の日曜日、とうとう買ってから初めてページを捲った。

小説『キリエのうた』

読み始めたら止まらなくて気付けば物語は終盤。あっという間に読み終えた。

大震災が物語の根本にあることに驚いたが、それだけが全てではなかった。
家庭環境に悩む学生、都会に溢れる住所不特定な若者、都会に溢れる犯罪、など問題視されている現実がぎゅっと盛り込まれているかと思いきや、10代ならではのラブストーリーも、"音楽"だけを武器にどうにか生きていく若者の姿もしっかり描かれていた。
とにかく濃厚な285ページ。
本の厚さと物語の重さは必ずしも比例しないのだと実感した。

読み終えたときはとにかく鳥肌がすごくて、胸がぎゅっと締め付けられていて。
キリエもイッコも夏彦くんも思い通りにいかない中で必死に生きていた。理不尽のむごさ。
だけど読んでいる途中は確実に"つらい""苦しい"だけの気持ちだけではなくて、わくわくもドキドキも共感する場面もあってとにかくたくさんの感情が動いていた。


この物語の主人公がキリエであることは百も承知であるが、北斗くんのファンである私は夏彦くんに一番感情移入せざるを得なかった。
夏彦くんを思って一番胸が苦しくなったし、三人のなかで一番救ってあげたいって思ったのは夏彦くん。
読み終わった後強く心の中に残ったのは夏彦くんへの想い。

社会人の夏彦くん。
ちょっとした言い回しが好みだった。
真緒里のフィルターがかかってるのか憧れのお兄ちゃんポジションの好青年。
高校生の夏彦くん。
"秘密と欲"に逆らえない若さ、親の目を気にする思考、どちらもリアルで、だからこそ惹かれた。
大学生になれなかった大阪の夏彦くん。
苦しさと後悔に溢れてて。いちばん苦しくなった。

震災という予期せぬ出来事によって、彼が当たり前に来ると思っていた未来は呆気なく消え去った。愛しい人との明日が来ないとわかっていたならば、きっと向き合うことを先延ばしになんてしなかっただろう。
昔好きだったドラマの中に出てくる「明日やろうはバカヤロウ」なんて言葉が浮かんだ。

はあああ〜〜
苦しいよ夏彦くん。
抱きしめてあげたい。

できることならば、夏彦くんと勉強を頑張って頑張った結果見事に進学という切符を手にした真緒里の未来は明るいものであって欲しかったし、大切な人と3人で歩む未来を失ってしまった夏彦くんにはせめて忘れ形見の路花と一緒に時間を過ごして欲しかった。だけど、そんなにうまくいかないのが現実で。
そんな中でも必死に今を生きる姿がこの作品の描きたかったことなのかな、なんて思った。


読み終えた後余韻に浸りながら映画の予告を見返して、夏彦くんの「もしもしっ希っ!?」で切実に泣きそうになった。ああ、もう、予告も観られないかも。


追伸

7月に小説を読んだ後に感想を書き始めたのはいいが、書けば書くほど自分の綴る言葉が胸に抱いた感情とかけ離れていく感じがしてお蔵入りにしようと思っていました。
しかし、映画公開後に読み直してみたらこれはこれでありだなって思えたので、この作品にはじめて触れたときの粗い感想を残しておきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?