人工呼吸
救急救命の基本のABCというものがある。
今ではABCではなくCABなんだそうだが。
そのABCとは
◉A Airway 気道確保
◉B Breathing 人工呼吸
◉C Circulation 心臓マッサージ
これらの三つをまずこの順番でしましょうと言うことだ。
私が学生のころ、ボランティアの一環で救急救命の講習を受けたことがある。ABCの基本を習いそのダミーの人形を使って練習をした。
人工呼吸が結構難しかったのを覚えている。上手く空気が入ればランプがつくのだがついたりつかなかったりしていた。心臓マッサージは思いっきり胸骨を押していると結構簡単にランプがついてくれた、が、指導者にうん、強すぎるかな?それじゃ骨折れちゃうよって軽いダメ出しが入った。今では折れるくらいでマッサージするような指導もあるみたいだけど。
まだ20世紀の頃とあるクリニックで技師として勤務していた時なのだが、ここではスタッフが月替わりで緊急呼び出し用の携帯電話を持っていた。ある月私の番になってその携帯電話をわたされたのだが、まずかかって来ないよ、とのある種フラグめいた言葉とともにそれを預かった。
それから数日後にその携帯電話がなった!なにごと?とすぐに出るとクリニックの院長からで今から透析したいからすぐ来れる?とのことだった。こちらに拒否する権限なぞないから、はい!すぐ行きます!と直ぐにクリニックに行くと、透析室には院長とクリニックの透析患者さんがベッドに横になっていた。
院長から、呼吸の状態から多分肺に水が溜まってるからすぐに透析しようとの事で、私も直ぐに機械を立ち上げを始めたのだが、患者さんの容態が悪化している様子で院長が救急に送ろうと言って別室にある電話をかけに退室してしまった。
残されたのは私と患者さん、その配偶者の方三人になってしまった。
患者さんの様子観察をしていたのだが明らかに状態が悪化してきており、脈はあるものの自発呼吸が止まってしまった。私としてはその場は離れられないから大声で先生!と叫ぶが戻ってくる気配はない。この時即座に意を決して習ったマウストゥマウスを行った。練習通りの体制で息を入れている時は胸郭の動きを見ながら、頭の中はほぼ混乱状態でひたすら行っていたように思う。すぐに院長は戻ってきて間をおかずに救急隊員も来てくれて彼らの持っていたアンビューバッグで呼吸補助をおこなっていた。それを見て、あ、あそこにあったよな、使えばよかった、なんてことを思いながら彼らを見送った。その日は院長からねぎらいの言葉を貰いながら家に帰った。多分2時か3時だったように思う。次の日は普通に出勤したのだが師長から昨夜大変だったんだってね、緊急呼び出しなんて今までなかったのにね、などと言う労いなのか、ついてないみたいな口振りでお疲れ様、と言われた。
その患者さんは助からなかったそうだ。
のちに院長から患者さんの家族から一生懸命してくれてありがとうと、言ってたよと言っていただいた。
この時思ったのはある種パニックになっても練習したことはできるものだ、と、練習してないとその存在さえ頭からぬけおちるものだなぁ、と言うことだ。
その後も勤務先は変わって病院勤務になったが心停止、呼吸停止の現場には遭遇はしている。
周りに医師や同僚がいるから普通に動いていたが、この時みたいに目の前が狭くなることはないし一人でそんな現場に遭遇したことはない。
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