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綾北マーキュリーウインズついて⑴わたしがハマったマーチングの魅力

noteはせっかく自由に書ける場なので、私の好きなものについて、私のレベルで書いてみようと思います。

唐突ですが、マーチングの大会って見たことありますか?
私は社会人2年目の時、仕事で初めて見ました。「綾北マーキュリーウインズ」という中学生のマーチングバンドでした。
それがあんまり素晴らしくて涙が出て、それ以来ずっと心を掴まれたままです。本当に素晴らしく、尊い。

なのでその第一弾として、今回は自分の過去と合わせながらマーチング自体の魅力について書きます。

【魅力その1】”一人でも欠けたら、マーチングはできない”

私は新卒で入った会社で、小さな地域新聞の記者をしていました。担当は神奈川県綾瀬市。この街にある綾北中学校のマーチングバンド部が全国常連の強豪チームでした。

最初に出会ったのは新卒1年目の2007年。全国大会に出場する地元中学の部活動を紹介しようと練習にお邪魔して、部長の子にインタビューしました。

部長の男の子はイケメン優等生って感じで、マーチングが大好きで、出てくる言葉も「ザ・優等生」って感じでした。もっと生の声を期待してたけど、お手本みたいな回答でちょっと物足りないなと内心思ったのを覚えています。今思えば、心が綺麗な彼は本気でそう思っていたのでしょうけど…。

そもそもこの時の私はマーチング自体のことを全然わかっていませんでした。隊列組んで行進するものと思っていたけど、全然違いました。

皆さんにとってのマーチングのイメージってどんな感じでしょうか。
わたしは鼓笛隊のようなものをイメージしてたんですが、マーチングを知らない方は、ぜひこちらのyoutubeをご覧ください。なんとなくイメージがわかると思います。つい最近のマーキュリーウインズの大会の様子です。

マーチングは演出満載のショーです。演奏と演技で織りなす、ディズニーランドのパレードとかに近いショーです。体育大とかがやる「集団行動」と演奏が組み合わさってる感じ。曲と隊形もリンクしてます。

アメリカのフットボールとかでやっているマーチングはなんとなくイメージあるでしょうか。これとかすごい。

グラウンドにカラフルな帽子などをかぶって立ち、ヘリコプターとかで撮影する人文字を子どもの頃にした事を思い出しますが、こんな感じで、自分が地面にいては想像できないような芸術を、こんな正確に、変形しながら大人数で作り上げているの、すごいと思いませんか。しかも、音程やリズム感などがカチッとはまったハイレベルな演奏をしながら。

やがて練習を取材に行く中でよく耳にした言葉が「一人でも欠けたらマーチングはできない」ということ。物理的に一人一人の位置や役割があって、几帳面にフォーメーションが組まれ、全てが計算され尽くしているのです。

思い返せば、この年は悲願の初優勝を懸けていた時。彼らには相当な想いがあったのだと思います。しかし、当時の私はそこさえ汲み取れずに、結局この年は大会を見に行くこともなく過ごしてしまいました。
記者ってそうやって浅い感じでも記事がかけちゃうのが恐ろしい。この頃の私にビンタしてやりたい。悲願の優勝がどんな気持ちだったのか、さぞや感動したことでしょうに。。

【魅力その2】肌や胸に響くほどの、「音の風」

実際に彼らのショーを初めて私が見たのは翌2008年。この時は市営体育館で全国大会の壮行会をしたのですが、100人ほど部員がいて、距離もえらく近かったので、そりゃあもうすごい迫力でした。100人が全力で金管楽器を自分に向けて吹いているわけです。

「音の風」を感じたのはこの時が初めてです。頰や胸、全身にぶつかってくるような衝撃。温度の違う巨大な空気がぶつかって振動する、激しい風。「地元中学生の演奏」というイメージをぶった切る、本当にものすごいショーでした。

この時は「Ben-hur」という古代ローマが舞台の映画がテーマでした。
何もかもがすごかった。彼らが全力で奏でる音楽の音量もすごかったし、奇妙なくらいテンポや音程がぴたりと合った演奏も素晴らしかったし。全身で感じる躍動も、ストーリーも、ダンスも、パフォーマンスも、衣装もメイクも、大道具も小道具も本当に全部衝撃的でした。

私はその衝撃で、撮影しながらぼろぼろ涙が出てしまって、周囲に気づかれないようにカメラで顔を隠していなければなりませんでした。兎にも角にも感動していました。

予め部長の女の子に話を聞いて記事にしていたのだけど、申し訳ない気持ちになりました。もっといろんな想いがあったはずなのに、なんでもっと大事に書いてあげなかったんだろうと、心の底から反省しました。こんな素晴らしいものを作るには、相当な努力をここにいる全員がしていたのだと感じたのです。

あの市民体育館の中で、彼女たちの懸命さや美しさが、すごく眩しかった。そして、大人顔負けの演出や演技が、めちゃくちゃ格好良かった。

【魅力その3】見えない努力が滲み出るショーに気づく

いよいよ覚醒した私は、翌2009シーズンではついに休日出動してまで大会取材に行くようになりました。休日出勤ではなく休日出動。もちろん仕事のない日に、自腹で東京や埼玉の会場に行きました。
大会の日の緊張感は半端なかった。でも、この緊張感があるから最高の演技と感動があるのだということを知りました。

何度か通ううちに保護者会の人たちや大会運営者にも認知されて、取材はかなり自由にできました。管楽器の子達が声で自分のパートを奏で、「バッテリー」という太鼓などのパートの子たちは自分のお腹を叩いて確認していました。舞台袖で最後にコーチがみんなにあたたかい声をかける姿が印象的でした。

本番だけでなく練習にもお邪魔して、熱血指導はもちろん、大道具や小道具をせっせと作っては調整するオヤジ会のお父さん達や衣装の工夫や修正をするお母さんたちの姿も目の当たりにして、本当にものすごい「本気」の塊が人を感動させるんだなと感じました。去年の私がこの様子を知らないにも関わらず、涙を誘われたのは、こういうのが滲み出て伝わっているのだと思い、本当にすごいことだと思ったのでした。

この年のテーマは「Time Limit!」。映画「007」の曲がテーマですが、演奏曲もこのショーのために編曲されていることを初めて知りました。演奏時間が決まっていて、キッカリに終わるのだからよく考えればそうしていることは想像できるのだけど、そんなことさえ知りませんでした。

また、シーズン中は、ジャパンカップ(オープン戦)→県大会→関東大会→全国大会、と駒を進めるのですが、大会のたびにショーが進化しているのも驚きました。同じことをずっと磨くのではなく、小道具や大道具も増えるし、隊列の形も変わるし、演出も全然変わります。
これについては「ガード」と呼ばれる、フラッグを使ったりダンスなどをするパートの子達が特に苦労をしていると思います。高く投げたライフルをキャッチするとか、パフォーマンスの難易度もどんどん上がっていく。(マーチングの大会は独特で、大会を見るポイントなんかも書きたいな)

綾北マーキュリーウインズのショーは物語のようなストーリーを想像させるところも惹きこまれるポイントのひとつです。
このシーズンはオヤジ会が作った「時限爆弾」の大道具を中心に、時間に追われるスリルとアクロバティックな演出。エンディングはさいたまスーパーアリーナの大観衆全員が息を飲む静けさに包まれました。緊張感で空気が張り詰めていたし、指揮の手が止まって会場からドバッと拍手と歓声が湧いている中、呆然としたことが忘れられません。あの時限爆弾、演目中ずっと普通にカウントダウンしてたから、計算され尽くしたタイミングで、時間に忠実に演技が進んでいたことを考えても鳥肌が立つ。すごい勝負のしかただし、めちゃくちゃ練習したんだろうな。

冒頭にも書いた通り「マーチングは一人でも欠けたらできない」のです。本当に総合芸術というか、バックの人たちを含めて、一人でも欠けたらできない。

いつも支えてくれる人がいることで、安心して全力を出し切れることってありますよね。綾北マーキュリーウインズのショーを見ていて、なんだかそれを感じるのです。「一緒に練習してきた仲間」とか、「おばあちゃんが作ってくれた衣装」とか、「本番もお父さんが見にきている」とか、そういう信頼や連帯みたいなのがあって、ああいう素晴らしいものが出来上がるということを感じます。中学生できっと彼らはそれを肌で感じていて、すごいなぁと思うとまたオバサンは涙が出ます。

この7分ほどの瞬間に生徒たちが中心となってチーム全員が一生懸命を積み重ねまくって織りなすこの芸術の一部に、自分が一生懸命何かに取り組んでいたことを重ねて、生演奏の躍動やビリビリ感も手伝って、ものすごく感動が湧きます。

百聞は一見にしかず、一度生で見てみて!

ここまで半分自分の話になってしまいましたが、そういうのを見て、自分の仕事にすごくやりがいを感じたのも嬉しかった。彼らのストーリーをもっと知ってほしい。感動の幅をもっと増やしてほしいと思ったのでした。紹介した子達に喜んでもらえることも嬉しかったです。

ただ本物を見るだけでも感動するのだけど、その裏側も知れば本当に感動すると思うので、書いてみました。なんだか全然書ききれないので第二弾を近いうちに書こうと思います。

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