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「喰い者」企画書


キャッチコピー
食堂を営む母子の前に現れた吸血鬼が、街の闇を暴き、運命を動かす

あらすじ
 舞台はある港町。皆から愛される食堂の主人が亡くなった。悲しみに暮れる妻と息子の前に一人の男が現れ、食堂で働かせて欲しいと言い出す。
 この男、平凡な人間を装っているが、本当は遠い昔に滅んだとされる吸血鬼であった。
 吸血鬼が食堂で働きだしたことで少しずつ親子の関係に変化が生まれ、遂には母子が抱える大きな秘密が暴かれる。
 吸血鬼の目的は破壊か救済か。『家族と食事』をキーワードに、人の倫理の根幹を揺るがす愛と憎しみのホラーサスペンス。

第1話のあらすじ
 舞台はイタリアの港町。
 その日教会では葬儀が行われている。街の食堂『ティ・リングラツィオ』の主人マッテオが亡くなったからだ。
 マッテオ及び『ティ・リングラツィオ』は街の皆に愛されており、多くの人が葬儀に参列していた。

 葬儀が終わった晩、マッテオの妻グレタは厨房に立ち、料理を作り始める。
 息子カルロが悲しみ暮れているところにグレタは『ファミリーシチュー』を差し出す。『ファミリーシチュー』はマッテオが始めた料理で、店の看板メニューだった。
グレタ「これからはあなたがこれを作るのよ」
 その言葉に、カルロは泣きながら『ファミリーシチュー』を食べ、その様子を見たグレタも泣きながら『ファミリーシチュー』を食べる。

 そんな二人の前に突如、男が現れる。
 男は悠然と、それでいて少し威圧的な態度でカルロに近づき、「とてもいい匂いがしたので」と言ってシチューを食べようとするが、カルロは拒否する。
 男はカルロの顔をじっと見つめ、突然涙を流す。
 男の行動に戸惑うカルロとグレタを尻目に、男は慌てて店を出ていく。

 翌日、またも男は食堂に現れ、丁寧に自己紹介をする。
 男はエドワルドと名乗り、この店で働かせて欲しいと嘆願する。
 カルロはエドワルドを不審に思い反対するが、グレタはマッテオ亡き今、人手が欲しいと考え、受け入れる。

 エドワルドが痩せ型で高身長の美男子、おまけに接客は物腰柔らかく饒舌なため、街の女性達の間でたちまち噂となり、それまで男性客の多かった店に女性達がおしかけてくるようになる。
 その様子を面白くないと思った客が、エドワルドを転ばせようと足を引っ掛けるが、華麗に回避、その様に女性人気が更に高まる。
 しかしカルロは、エドワルドが一瞬宙に浮いたように見え、ますます不信感を募らせる。

 数日後の夜、閉店後の店に街のギャング、ルカが現れる。
 カルロはこの裏の仕事は辞めたいと反発する。
 しかしルカは、元々はマッテオが始めたことだし、辞めるなら今までしてきた秘密を暴露すると言って去っていく。
 エドワルドは二人のやりとりを隠れて聞いている。

 翌日の深夜、カルロがルカの元に行くと、ルカがエドワルドに血を吸われて死んでいる。
 カルロはエドワルドが吸血鬼だと察して逃げようとするが、エドワルドはカルロを引き留め、提案を持ちかける。
エドワルド「君を救おうか? 血をくれるなら」

第2話以降のストーリー
 翌日、カルロは食堂の休憩時間にエドワルドと昨晩のことについて話す。
 エドワルドは、カルロは現状を抜け出したいと考えているのではないかと告げる。
 カルロはエドワルドの考察に対して答えず、吸血鬼とはなんなのかに関して質問をする。エドワルドは勿体ぶった言い方で『十字架、ニンニク、鏡は迷信。嗅覚には敏感で、人間の血を吸い、長生きで老化も遅いことは事実。現状、他にどれくらい吸血鬼がいるのかは知らない』と答える。
 エドワルドに吸血鬼の話を聞いても、疑問が疑問を産むかたちになり、カルロのモヤモヤは改善されない。昨晩のことは二人だけの秘密にすると約束し、厨房に戻る。

 厨房に戻るとカルロの幼馴染、ビアンカがやってくる。
 ビアンカはエドワルドが働き出してからちょくちょく顔を出すようになり、カルロはビアンカがエドワルドに好意を抱いていると思っている。
 ビアンカに呼び出された時もカルロはその件だと思っていたが、ビアンカはカルロとエドワルドの関係を疑っていた。カルロはビアンカの勘違いを一笑するが、ふいにビアンカがカルロに対して好意を抱いていることに気づく。

 一方、ギャング達の間でルカが行方不明になっているという情報が流れる。まだ時間も経っておらず、たいしたことではないと判断するギャング達だが、ギャングの幹部アルセニオは事態の不穏さを感じ取り、部下に捜索を命じる。

今後の作品の展開案

●エドワルドの過去
 エドワルドは食堂に来る前、ある屋敷に住み込みで家庭教師をしていた。その屋敷の子息と関係を深め、子息もエドワルドを吸血鬼として受け入れていた。エドワルドの元々あった上品さとふてぶてしさはこの頃確立されていった。
 しかし子息が成長し、屋敷の主人となって家族を形成すると、子息はエドワルドに自分の子供に触れてほしくないと拒絶し、エドワルドを屋敷から追い出す。
 傷心のエドワルドは旅をする中で、かつての子息にそっくりであるカルロに見惚れる。

●ファミリーシチューの秘密
 ファミリーシチューは人肉を煮込んだ料理。旅行者やギャング達の死体を利用して作っている。
 昔、マッテオが父親からの虐待に耐えきれず父親を惨殺、証拠隠滅のために作り出したことがきっかけで生まれた料理。
 グレタはこの料理が家族の絆を深めるものと信じ、作るのをやめようとしない。

●カルロの現状と悩み
 カルロは家族を大切にする優しい息子という印象を持たれているが、グレタの教育、刷り込みによってカルロは洗脳されている部分も多い。
 グレタのことを大切に思っているが、一方でグレタの束縛を窮屈に思い、自由になりたいと葛藤している。
 カルロ自身はマザコンではないと思っているが、ビアンカなど周りの人からはマザコンだと思われている。

●マッテオの死
 カルロはグレタの束縛から逃げようと街を出て行こうとする。しかしその計画がグレタにバレてしまい、手助けをしたマッテオは裏切り者として殺され、ファミリーシチューの材料にされてしまう。
 カルロとグレタが葬儀の夜に食べていたのは、マッテオを具材としたファミリーシチューだった。

●テーマと展望
 この物語のテーマは『依存と解放』。
 エドワルドもグレタも愛ゆえに、相手を拘束してしまった過去があり、愛ゆえにエドワルドはカルロを解放しようとするが、グレタはそれが認められない。
 カルロもグレタから長年受けてきた愛の教育がゆえ、自分の意志を開放するのに大変な労力を要する。
 三人の出す答えが正解、不正解ではなく、真摯な答えを出そうともがく過程を描く。

●ビアンカの失敗
 ビアンカはカルロとエドワルドの関係を怪しみ、二人を観察、尾行したりする。その結果、エドワルドが吸血鬼だと気づく。
 しかしグレタにその秘密をファミリーシチューの秘密だと勘違いされ、口封じのために殺されてしまう。
 この事件がカルロとグレタの関係を最悪にし、別離の道へと加速させる。

●アルセニオの秘事
 アルセニオはマッテオの幼馴染で、マッテオが父親を殺した時に証拠隠滅を手伝った。またグレタからファミリーシチューを作るために継続的に遺体提供を求められた時にも、ギャング内部の反発などの調整をした。
 全てはグレタへの密かな愛ゆえの行動であった。
 マッテオが死んだ今、アルセニオはグレタへの愛に歯止めが効かなくなるが、グレタはカルロしか見ておらず、次第にカルロへ憎悪を向け始める。

●吸血鬼の世界
 エドワルドは長年屋敷にいたため、吸血鬼の生態は知っているが、他にどれくらい吸血鬼が生息しているかなど、吸血鬼の現状をあまり知らない。
 エドワルドはそこまで吸血活動に熱心ではないが、吸血鬼の中には人間を憎む者や人間を家畜のように思う者もおり、危険な思想を持つ者も少なくない。
 街にも吸血活動をさかんに行うタイプの吸血鬼が現れ、エドワルドと対立する。

●ハンターの来訪
 吸血鬼の生き残りの噂を聞いて街に吸血鬼ハンターの女性二人が現れる。
 しかし二人は吸血鬼の実物を見たことがなく、書物で勉強したに過ぎない若手ハンターで、エドワルドに逆に利用されてしまう。


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